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a:9:{s:12:"shoshi_title";s:28:"室町時代の少女革命 ";s:11:"shoshi_isbn";s:17:"978-4-305-70745-1";s:16:"shoshi_publisher";N;s:11:"description";s:282:"男性だけが成仏できるとされた時代、女性はどのように生きたのか。人物絵の隣に台詞が書かれた「室町時代のマンガ」とも言えるユニークな『新蔵人』絵巻を、マンガ的吹き出しつき現代語訳、写真で紹介。";s:6:"author";s:33:"阿部 泰郎(監修)…他3名";s:10:"publishers";s:12:"笠間書院";s:9:"publisher";N;s:9:"productor";s:12:"笠間書院";s:12:"release_date";i:1413471600;}

室町時代の少女革命 『新蔵人(しんくろうど)』絵巻の世界

文芸 ラノベ

阿部 泰郎(監修), 江口 啓子(編), 鹿谷 祐子(編), 玉田 沙織(編)
発行:笠間書院

B5変型判   184頁  上製
定価 2,200円+税

ISBN 978-4-305-70745-1   C0093
在庫あり(出版社情報)

奥付の初版発行年月 2014年10月
書店発売日 2014年10月17日
登録日 2014年9月29日

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紹介

少女は男となることを望んだ……!
男装して宮中にあがり、帝の愛をめぐって姉と争う少女の物語絵巻。

男性だけが成仏できるとされた時代、女性はどのように生きたのか―。
人物絵の隣に台詞が書かれた「室町時代のマンガ」とも言える、ユニークな佳品。マンガ的吹き出しつき現代語訳に加え、絵巻全体を写真で紹介。本作品が持つ意義も多方面から、あますところなく伝えます。

『新蔵人』絵巻は中世に多く作られた短編の物語絵巻の一つ。 絵は墨線のみによって描かれ、絵巻の縦寸法は約11センチの小型です。 絵の中には言葉が書き込まれていて、通常、それは場面説明や登場人物たちの台詞を表しているものですが、『新蔵人』では画面説明が一切ありません。すべて登場人物たちの名前と会話だけで成り立っているのが特徴です。 絵の前には、詞書という文字テクストだけで成り立っている部分が存在し、交互に展開することで物語は進んでいきます。 少女が男装するといった物語の筋をとってみても、まさに室町時代の「マンガ」! 『とりかへばや』などの系譜に連なりつつ、独自の結末を迎える『新蔵人』の世界をご堪能ください。
本書では、上巻をサントリー美術館本、下巻を大阪市立美術館本を底本にしています。

目次

はじめに◉豊穣な絵巻の世界を冒険する![江口啓子]
人物相関図

1 現代語訳

現代語訳をお読みになる前に

…上巻…
第1段 諸大夫一家の家族会議
第2段 大君の出家
第3段 中君の出仕
第4段 内侍の懐妊
第5段 三君の男装出仕
第6段 兄蔵人の結婚
第7段 新蔵人の野心
第8段 帝と秘密の関係
第9段 内侍の憂鬱
第10段 帝と三人の女たち
 …下巻…
第11段 新蔵人一家の幸い
第12段 出家の決心
第13段 出家の支度
第14段 最後のあいさつ
第15段 その後の人々
第16段 梅ヶ畑の新蔵人
第17段 家族往生の予言

2 本文・注釈

凡例
上巻
下巻

コラム①『新蔵人』絵巻における官位について
コラム②ずっと一緒に〜中世における死生観〜
コラム③女と稚児
コラム④真言の尼寺「善妙寺」
コラム⑤男でなければ成仏できない!?〜「変成男子」と女人成仏〜
コラム⑥光明真言と変成男子

3 解説

はじめに
一 『新蔵人』絵巻の特徴
 1 形態
 2 内容(男装の姫君/女人成仏と家族往生/女訓との関わり)
二 伝本について
 1 書誌情報
 2 サントリー本と市美本の関係
三 絵巻の筆者

4 読みのポイント

1 『新蔵人』絵巻冒頭部の仕掛け―文化継承装置としての引歌―[玉田沙織]
 はじめに
 一 波乱の予告
 二 引用という装置
 三 諸々のことは実による
 おわりに

2 『新蔵人』絵巻の結末は「めでたし」か[江口啓子]
 はじめに
 一 家族往生の企み
 二 女人成仏と変成男子
 三 善妙寺と光明真言
 四 男装と変成男子
 五 変成男子と変成女子
 おわりに―新蔵人の結末は「めでたし」か

3 異性装の物語としての『新蔵人』絵巻[鹿谷祐子]
 はじめに
 一 六位蔵人と兄弟同職
 二 『とりかへばや』『有明の別れ』との比較①―物語の構想
 三 『とりかへばや』『有明の別れ』との比較②―「男装の姫君」の人物像
 おわりに

4 『新蔵人』絵巻と絵を描く女房[阿部泰郎]
 一 『とはずがたり』の絵を見る女房と描く女房
 二 物語絵と響きあう『とはずがたり』
 三 『新蔵人』絵巻から『とはずがたり』を読む

5 美術史からみた『新蔵人』絵巻―メリッサ・マコーミック氏インタビュー―
 一 白描小絵と女性の視点
 二 女性筆者
 三 尼寺と描かれた女性性の空間
 四 変成女子になりたる心地

あとがき◉越境に誘われる―『新蔵人』絵巻を読む[阿部泰郎]

前書きなど

はじめに◉豊穣な絵巻の世界を冒険する!
[江口啓子]


 この本を手に取ったみなさんは、今までに「これはおもしろい!」と思える古典作品に出会ったことがありますか? もしかすると、この『新蔵人』絵巻が最初の「おもしろい」作品になるかもしれません。

 『新蔵人』絵巻が作られた室町時代、中流貴族に生まれた娘が選ぶことができた未来は、尼になるか女房となって他家で働くかという、ごく限られたものでした。しかし、この物語の主人公の少女は男となって走り歩くことを望み、家族もまたそれを許します。男装をし、自らの性から解放された少女は社会的規範から外れ、自由に、思いのままに生きていきます。男装の少女の物語は今でもマンガやドラマなどでおなじみのものになっています。そういった類の物語のお約束通り、この少女の存在は恋のトラブルを巻き起こし、さらにそれが姉妹の確執にもつながっていきます。おそらく本作品は、学校教育の中で培われたみなさんの古文に対するイメージを覆すものになるでしょう。

 『新蔵人』絵巻は絵を伴って作られた物語作品です。しかもその絵の中には登場人物の台詞が書き込まれています。ちょうど挿絵入りの小説の挿絵の部分がマンガになっているようなものです。ですからみなさんも室町時代のライトノベル、少女マンガを読むつもりで、気軽に楽しんでもらいたいと思います。本書は読者のみなさんに少しでも古文に親しんでもらえるよう構成を工夫しました。四部構成のうち、パートⅠは現代語訳です。ここでは文法など難しいことは一切考えずに、まずは物語そのものを味わってください。

 パートⅡ以降はより深くこの作品を理解できるようになっています。パートⅡでは原文を活字に起こし、注をつけ、現代語訳だけではわからない『新蔵人』絵巻の世界を明らかにしています。パートⅢの解説は『新蔵人』絵巻の書誌情報をはじめ、この物語の特徴をまとめています。そしてパートⅣではさらに『新蔵人』絵巻を深く読み込んでいきます。当時の女性の生き方、仏教思想との関わり、先行作品との比較―さまざまな視点からこの物語を解釈していきます。巻末ではハーバード大学のメリッサ・マコーミック教授にインタビューをしています。マコーミック氏は日本中世美術の専門家で、『新蔵人』絵巻の絵そのものの魅力を教えてくれます。

 一つの物語を「読む」ということは、ただ物語の内容を読んで知るだけに留まるものではありません。その物語がどういう物語として「読む」ことができるのかを、解釈していくことを含めて「読む」と言います。そして物語の豊かさは、どれだけ多様な読み方ができるかによります。本を読むとは受動的ではなくむしろ能動的な行為であり、知的で創造的な冒険に他なりません。本書を一冊読み終えるころには、『新蔵人』絵巻の持つ豊穣な世界を冒険しつくしていることでしょう。

 『新蔵人』絵巻の開かれた世界へ、さあいらっしゃい!

著者プロフィール

阿部 泰郎(アベ ヤスロウ)

名古屋大学大学院文学研究科付属人類文化遺産テクスト学研究センター教授。
著書に『湯屋の皇后』(名古屋大学出版会、1998年)、『聖者の推参』(名古屋大学出版会、2001年)、『中世日本の宗教テクスト体系』(名古屋大学出版会、2013年)など。

江口 啓子(エグチ ケイコ)

名古屋大学大学院博士課程後期在籍、名古屋市立中央高等学校教諭。
『名古屋大学比較人文学研究年報別冊『新蔵人物語』絵巻の研究』(共著、名古屋大学文学研究科・比較人文学研究室、2006年)。

鹿谷 祐子(シカタニ ユウコ)

名古屋大学大学院博士課程後期在籍、愛知教育大学非常勤講師。
論文に「お伽草子『ちごいま』の柏木物語受容」(『名古屋大学国語国文学』106号、名古屋大学国語国文学会、2013年)、「『我が身にたどる姫君』一品宮と不婚内親王立后」(『古代文学研究第二次』古代文学研究会、2013年)。

玉田 沙織(タマダ サオリ)

論文に “Formation of a Commentary in Nineteenth Century Japan : Motoori Scholar Nakayama Umashi’s Approach to Gosen Wakashū” HERSETEC 4 : 1 (Graduate School of Letters, Nagoya University, 2011)、「「風吹けば」詠の語り-『大和物語』第百四十九段論-」(『名古屋大学国語国文学』104号、名古屋大学国語国文学会、2011年)。

上記内容は本書刊行時のものです。