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「小説家」登場
尾崎紅葉の明治二〇年代
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2011年2月
- 書店発売日
- 2011年3月7日
- 登録日
- 2011年2月3日
- 最終更新日
- 2023年6月15日
紹介
明治二〇年代、「小説家」不在の時代に
「小説家」を目指した、尾崎紅葉の覚悟とはーーー
紅葉作品は"近代小説か否か"という従来の視点から抜け出し、
同時代に存在した数多の小説群の中で相対的に捉える試み。
紅葉自身が意識していた、素材や場面を用いて小説〈世界〉を構築する
〈趣向〉という創作の観点から解析することで、紅葉作品の意義を検証。
同時に作品から見えてくる「小説家」尾崎紅葉の輪郭を描き出す。
【本書の試みは、紅葉の小説を、「新世界」と「趣向」という紅葉自身が意識していた創作の観点から読み解いていくことにある。そしてそのために、同時代の小説群との関係性において、紅葉の小説の意義を検証してみることにしたい。従来の文学史のなかで取り上げられてきた逍遙や二葉亭、鷗外といった一部知識人による小説よりも、もっと数多くあったはずの同時代の小説こそ、紅葉の射程には収められていたはずである。政治小説、翻訳小説、さらには改良小説と銘打たれ啓蒙的小説や、もちろん紅葉と同じ硯友社の書き手たちの小説、各種新聞紙の小説や、明治二〇年代にあらわれた文学雑誌の小説等々。当然、全てを網羅するということは不可能に等しいが、ある段階から、共通の素材や場面が、さまざまな作者の小説に繰り返し現れてくることが認識されるようになり、それは紅葉の小説も例外ではなかった。従って、それら同時代の小説群との相対的関係性を捉えることにより、当時における紅葉の「企て」の新しさや意味を明らかにすることができるだろう。......(「序章 紅葉から「読む」ために」より)】
目次
序章 紅葉から「読む」ために
第Ⅰ部 「小説家」への過程
第一章 改良世界の諷刺画(カリカチュア)--『風流 京人形』論
1 小説改良への違和と女子改良
2 読書熱と空中楼閣
3 政治小説の脚色(しくみ)と趣向
第二章 人情世界に再編される脚色(しくみ)と趣向--『二人比丘尼 色懺悔』論
1 奇遇という謎--発端「奇遇の巻」
2 趣向の対照--「戦場の巻」・「怨言(うらみ)の巻」
3 両義的な死--「自害の巻」
4 脚色(しくみ)の変容--結末
5 感応への期待
第Ⅱ部 「小説家」という方法
第一章 貞婦の〈心理(こころ)〉――『夏瘦』論
1 女学生と華族の不品行
2 貞女の物語
3 嫉妬の〈心理学〉
4 新聞と小説のリアリティ
第二章 「小説家」のパフォーマンス--『伽羅枕』論(1)
1 紅葉山人の元禄狂
2 考証する〈著者〉
3 眼差された〝江戸〟
第三章 〈心理学〉的一代記--『伽羅枕』論(2)
1 成長の条件--養育と境遇
2 〈心理学〉的成長①--「私情」
3 〈心理学〉的成長②--「同情」から「中情」へ
第四章 「小説家」の贖罪--『むき玉子』論
1 裸蝴蝶が残した課題
2 美徳と美術の衝突
3 淑徳の回復と小説の自立
4 『二人女』の悲喜劇
第Ⅲ部 「新世界」を仮構する
第一章 拝金宗の「世界」--『三人妻』論
1 〈拝金世界〉の到来と紳商
2 〈人を主〉として〈事を主〉とせず
3 趣向化される批判
第二章 清玄の行方--『心の闇』論
1 明治の新興都市と〈今の世に恋する人〉
2 清玄という記憶・佐の市という身体
3 「心の闇」の行方
第三章 マイ・ハーフの思想--『多情多恨』論
1 「冷熱」の挫折
2 欧文式構文の獲得
3 《妻ハ朋友デアル》の論理
終章 「小説家」を引き受ける
初出一覧
あとがき
上記内容は本書刊行時のものです。