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PPSのすすめ
電力会社の電気を買ってはいけない
- 初版年月日
- 2012年5月
- 書店発売日
- 2012年5月3日
- 登録日
- 2012年4月26日
- 最終更新日
- 2012年4月26日
紹介
電力自由化の目玉として誕生したPPS(新電力)制度を導入すると、どうなるのか?
電気の供給先や料金、電気の由来、停電への対応、脱原発との関係など、わかりやすく解説します。
目次
はじめに
第1章 電力会社の電気を買ってはいけない
1 PPSが電力自由化の風穴を開ける
2 経済産業省は脱電力会社へ突き進む
3 競輪場では電気料金が安くなった
4 意外にも自治体はPPSを知らない
5 静岡の県と市では中部電力離れが進んでいる
6 ひそかに自治体にPPSが広がっている
第2章 電力自由化からPPSが生まれる
1 日本の電気料金はこんなに高い
2 これがPPSの仕組みだ
3 マンションでもPPSを導入できる
4 自治体のPPSはどうなっているか
5 電気事業者の種類はどれくらいあるか
6 六本木ヒルズはPPSではない
第4章 これがPPS環境と問題点だ
1 PPSは、なぜ50キロワット以上なのか
2 送電・配電設備の利用料が高い
3 インバランス料金という罰金があるのをご存じだろうか
4 これでは電気を買いたくても買えない
5 卸電力取引所とスマートグリッドが投資効果を生み出す
6 二酸化炭素の排出量で比較するのは時代遅れだ
第4章 PPSは脱原発への第一歩だ
1 電力会社は絶大な力をもっている
2 電気料金が電力会社の力の源泉だ
3 電力会社が発送電分離に抵抗するのだ
4 原発をなくすためには発送電の分離が一番だ
5 危ないPPSといらないPPS
6 資源エネルギー庁を自然エネルギー庁にしよう
あとがき
前書きなど
はじめに
電気の販売者である供給元は、東京では東京電力で、大阪では関西電力というように、10社ある電力会社に限られていた。それが、2000年から特定規模電気事業者(PPS)という、電力会社ではない電気の小売業者が誕生した。
制度の発足時の利用者は、2000キロワット以上の特別高圧という、電気の大量需要者に限られていた。その後に制限が緩和され、現在では50キロワット以上の高圧電力までが対象となっている。小規模工場、コンビニ、そして一般家庭は利用できないが、その範囲はかなり広い。
PPSの普及は、全体の電気の需要量では3~4%ほどだが、東京電力や関西電力の営業範囲では、その普及割合は高くなっている。福島第一原発の事故と、それにつづく電気料金の値上げがあって、電力会社への不信感が高まり、電気の新しい購入先に関心が向かう。
PPSという名称ではわかりにくいので、略称は「新電力」となるようだ。今後ますますこの制度は普及する見込みだが、名称もわかりにくいが、制度そのものもわかりにくい。
執筆にあたっては、電力会社関係者でも、電気の専門家でも、法規を熟知した官僚でもない、市民の目線の説明を心がけた。
電力会社の力の源泉は、販売エリアに競争相手がいない地域独占、発電と送配電の一体所有、そして電気料金を決める総括原価方式の3つだという。電力自由化は、これらを撤廃させることだが、それにはPPSの普及が大きな意味を持つのだ。
電力自由化の目玉として誕生したこの制度は、まだ道半ばの段階だ。50キロワット以上という制限を取り外し、一般家庭も利用できるようにしたい。電力会社は抵抗するだろうが、それが実現すると、PPS制度は身近なものとなり、活用の道が広がってくるのだ。
電気の供給先をどうするのか。
料金はどうなっているのか。
その電気の由来は何なのか。
停電事故の対応はどうなるのか。
脱原発とどう結びつくのか。
電力が完全自由化する前に、これらのことを知っていただきたいのですが、PPSが名実ともに新電力になることに、本書の普及が少しでも役に立つのなら望外の幸せです。
本書の執筆には、反原発自治体議員・市民連盟のみなさんの活動が後押しとなりました。PPSに関する調査と研究、そして議会における発言・提言が、各自治体におけるPPS導入という結果を導き出しています。
もうひとつの後押しは、前著『福島原発の町と村』の読者の方々です。同書はPPSについても記述していますが、もっと詳しく説明をしてほしいとの声が、少なからずあったからです。お役に立てることを願っています。
最後に、出版の機会を与えていただいた、七つ森書館のみなさんに感謝します。
2012年4月 布施哲也
上記内容は本書刊行時のものです。