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ナナセンチ
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2012年6月
- 書店発売日
- 2012年6月7日
- 登録日
- 2012年5月9日
- 最終更新日
- 2021年2月2日
紹介
ある日突然「ぼく」の前に現れた体長7cmの黒クマ。ビールとチケットが好きで、小さいわりには態度が大きく「ぼく」にあれこれ指示をする。現実と非現実の境界を7cmの黒クマと行き来する12編からなる短編集。挿絵を入れず、タイポグラフィー(文字の配置などによるデザイン)によって物語を表現。文字の世界が広がる、いわば「文字の絵本」。
目次
チョコレート
玉ねぎ
フラワー
タクシー
風船
パンダ
チケット
ぬ職人
乾杯
ある日の訪問
大きなパンみたいな犬
明日
前書きなど
古代インドでは、いまとはかなり違った宇宙観を持っていたようです。とぐろを巻いた巨大な蛇の上に巨大な亀が乗り、その上に三頭の象が乗って半球体の地球を支えているというのです。科学者の方々は、蛇や亀が登場する宇宙観が前提では、スペースシャトルを飛ばすことも宇宙ステーションを建設することもできないでしょうけれど、少なくともわたしは、蛇たちが地球を支えていたとしても生活にも仕事にもなんの支障もありません。むしろ、動物たちがわたしたちの一日を支えていると考えると、のどかで楽しい気持ちになります。物事を正確に知るのは大事なことです。でも、一日のうち5分か10分ぐらい、科学や常識を信じるのをやめたり、根拠のないものを強く信じたりするのも悪くないのではないかと思っています。
たんぱく質、でんぷん、カルシウム、ビタミン、人間が生命を維持するために必要なものがある一方で、特に必要ではないのに、というより、摂りすぎれば健康を害するかもしれないのに欲しくなるものがあります。たとえば、お酒やお菓子など。根拠のないものを信じるのもこれに似ているような気がします。そして、こういうものが案外、目の前に壁が立ち塞がったときに、壁を乗り越える梯子や壁をぶち壊すハンマーとして役立ってくれます。壁の前でぬくぬくと何泊もしたくなるような現実逃避の温室になってしまう場合もありますが、休息が必要なときにはこれはこれで役立ちます。
この本では、ナナセンチというクマが「ぼく」の前に現れますが、人によっては、ウサギや小鳥やトカゲ、あるいは、生き物ではなく、飛行機や帽子やペンといったものが、ある日とつぜん目の前に現れるかもしれません。また、大切にしているぬいぐるみや、おまもりや、いまはここにいない親しい人に話しかけるとき、ナナセンチと「ぼく」のような関係がすでに生まれているかもしれません。わたしも「皆さんにとってのナナセンチ」にとても興味があります。機会がありましたらぜひ教えてください。
版元から一言
引き出しやポケットの中から現れる体長7センチの黒クマ・ナナセンチを主人公とした12編からなる短編集です。ナナセンチはちょっと意地悪でちょっと小難しいクマなので、あまりお子様向きではありません。大人向き、しかも、ニヤリと笑うのが好きな大人の方と相性が良い本かもしれません。また、タイポグラフィや装丁にもこだわっているので、本のデザインを楽しみたい方にもおすすめです。プレゼントにもぜひどうぞ。
《造本イメージ》背を上製本のように糸でかがって(しかも黒糸で)、普通はそこへ糊をつけたりして表紙がついて背表紙もつきますが、本書は、そのまま表紙のみで背表紙がありません。その状態でカバーがかかっています。一見わかりませんが、カバーをはずしてみると、あらびっくり!な造本になっています。
上記内容は本書刊行時のものです。