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評伝 キャパ
その生涯と『崩れ落ちる兵士』の真実
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年3月
- 書店発売日
- 2017年3月31日
- 登録日
- 2017年3月16日
- 最終更新日
- 2017年3月16日
書評掲載情報
2017-07-23 |
産經新聞
朝刊 評者: 川成洋(法政大学名誉教授) |
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紹介
ロバート・キャパの本格的評伝。亡命ユダヤ人青年が写真と出会い、写真によってナチスと闘い、「崩れ落ちる兵士」によって戦場に生き、斃れる宿命を負う。その生涯の光と影を、キャパを愛した女性たち、日本人との交流など人間的な魅力溢れる挿話と共に描く。
目次
プロローグ
第1章 ブダペストを発つ
第2章 ベルリン・ヒトラーの台頭
第3章 亡命のパリ
第4章 スペイン市民戦争
第5章 『崩れ落ちる兵士』を撮る
第6章 セロ・ムリアーノの村
第7章 ゲルダの死
第8章 道を探す――中国へ 国際義勇軍の兵士たち リオ・セグレの戦い
第9章 ヨーロッパ・第二次世界大戦
第10章 《Dディ》そしてパリ解放
第11章 イングリッド・バーグマンとの恋
第12章 戦争のないキャパ
第13章 日本
第14章 最期の旅路
エピローグ 『崩れ落ちる兵士』の真実――その生死が意味するもの
《解説篇》
Ⅰ 新たな二人の発見者
Ⅱ 『崩れ落ちる兵士』撮影地点の考察
Ⅲ 「フェデリコ・ボレル・ガルシア」のこと
Ⅳ 「メキシカン・スーツケース」
Ⅴ ロバート・キャパ賞
あとがき
主要人物
ロバート・キャパ年譜
ゲルダ・タロー年譜
ロバート・キャパ研究資料
参考文献・註記
索引
前書きなど
あとがき
(…前略…)
写真家を志す誰もがキャパの伝説にあこがれたし、日本では、昭和三十一(一九五六)年に刊行されたキャパの著書『ちょっとピンぼけ』を読み、やっと見えた日本の復興する姿の中でキャパの男の生きざまを憧れとし理想のように思った青年たちも数多くいた。けれども、日本人によるキャパの受け入れ方と海外におけるキャパの捉え方には若干の違いがあった。日本人はキャパを物語的、情緒的に捉えていたが、欧米では男の生き方としての合理性に併せて、戦場での真実性を歴史学的に厳しく検証することが行われていた。現在もその姿勢は「ロバート・キャパ研究」として続けられている。
このように、日本と海外の検証された内容は、先の情緒性と歴史学的な段差があることから一概には比較できないが、それよりも双方の考えが言葉の壁によって重要な論点が往来していない事実は大きい。キャパの議論でテーマとなる『崩れ落ちる兵士』についての新たな検証の書籍が日本で刊行されても、それが少なくとも英語に翻訳されて広く討論されるということはない。研究制度のない日本では、その正否に関係なく見世物を観るやじ馬となってメディアともどもはやし立て検証が終わる。
(…中略…)
一方、海外では今まで『崩れ落ちる兵士』と特定されていた兵士は違う人物であったこと、また二〇〇七年にニューヨークで開催された大規模な『ロバート・キャパ*これが戦争だ!』展において公開された新たな資料から、多くの研究者によって、今まで考えられてきた撮影場所とは違う「エスペホの村」が特定されるなど新たな調査結果の報告が相次いで行われた。
本書は、こうした研究成果を取り入れた正しい総合的なロバート・キャパの評伝が必要との思いから書き起こした。手法としては、これまでの解釈を紹介し、問題点を指摘して正しいと思われる事実をできる限りの客観的証拠をもとに記した。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。