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〈和解〉のリアルポリティクス 武井彩佳(著/文) - みすず書房
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〈和解〉のリアルポリティクス (ワカイノリアルポリテイクス) ドイツ人とユダヤ人 (ドイツジントユダヤジン)

社会科学
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発行:みすず書房
四六判
288ページ
定価 3,400円+税
ISBN
978-4-622-07921-7   COPY
ISBN 13
9784622079217   COPY
ISBN 10h
4-622-07921-6   COPY
ISBN 10
4622079216   COPY
出版者記号
622   COPY
Cコード
C1036  
1:教養 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2016年11月24日
最終更新日
2017年1月31日
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書評掲載情報

2017-02-19 読売新聞  朝刊
評者: 三浦瑠麗(国際政治学者、東京大学講師)
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紹介

ヒトラー政権下600万ものユダヤ人を虐殺したドイツは、連合国の占領を経て1949年ドイツ連邦共和国として再生した。その前年、ホロコースト生存者らユダヤ人の国イスラエルが建国された。和解などありえないと思われた両国の関係はしかし、長く困難な過程を経て、現在は良好である。
そのためドイツの過去の克服は世界中で参照され、首都中心街へのホロコースト記念碑建立等が姿勢の真摯さを印象づけた。
しかし、和解を可能にしたのは道徳的に無欠の謝罪や反省ではない。むしろ国益と償いの理性的競合であり、それが犠牲者への補償やナチ犯罪者訴追の徹底へつながり、ヘイト行為への態度を固め、歴史修正主義を乗り越えさせた。このようなドイツ=ユダヤ関係の核心を、本書はリアルポリティクス(現実政治)と位置づけている。
そして現在、当事国による過去との格闘からは、ホロコーストの記憶のグローバル化とも言える現象が生じている。毎年のように新しいホロコースト映画や小説が作られ、記念館や収容所跡に観光客が押し寄せる。ホロコーストに何の関係もない米国の高校生までが600万個のクリップを集めることで犠牲の巨大さを実感しようとする。
こうしたことは一体何を意味しているのか? 後世の歴史認識に輪郭を与えるのは現在の我々である。本書は、和解の実相に批判的かつ実証的に迫りつつ、記憶の継承から派生する新たな問題も示している。

目次

はじめに

【第1部】 ドイツとイスラエルの〈和解〉
第1章 対イスラエル補償
集団的補償とは/ホロコーストとイスラエル建国/ドイツ政府の対応/補償をめぐる国際政治/国家賠償としての補償/補償とパレスチナ問題

第2章 国家的軍事支援
武器を求めて/モサドとドイツ連邦情報局(BND/加害者と犠牲者の現実主義/ドイツの潜水艦とイスラエルの核

【第2部】 ユダヤ人マイノリティ社会の復活
第3章  アファーマティブ・アクションの政治
ユダヤ人の法的地位/帰国への動機づけ/ドイツ人とユダヤ人の境界――「ドイツ民族所属性/ユダヤ人を呼び込む――旧ソ連からの移住/共同体存続の財政基盤/「非特権的第三者」――ムスリム労働移民

第4章 刑事処罰とつくり出される社会規範
法的・政治的前提/イスラエル―「ユダヤ民族に対する犯罪」/ドイツによる訴追/ヘイトクライム、ヘイトスピーチ/ホロコースト否定の禁止/修正主義と「公的な歴史」/教育現場で/ヨーロッパの方向性/デムヤニュク裁判以降――新たな解釈と新たな裁判

【第3部】 記憶
第5章 犠牲者の記憶
メモリアル・ブックの編纂/イスラエルへ移植される記憶/ヤド・ヴァシェムの設立/ホロコーストの「教訓」/体感される記憶/想起のパフォーマンス

第6章 加害者の想起
犠牲者は自ら追悼した/見えなくなる過去/犠牲のナラティブ/「不在」の発見/国家化される想起/世界的記憶レジームの構築

第7章 記憶のその先へ
ホロコースト証言(テスティモニー)/ポストメモリー/過去を詐称する人/真正さとフィクション/未来の記憶

おわりに


索引

著者プロフィール

武井彩佳  (タケイアヤカ)  (著/文

早稲田大学第一文学部史学科卒業。同大学より文学博士取得。専門はドイツ現代史、ユダヤ史、ホロコースト研究。学習院女子大学国際文化交流学部准教授。著書に『戦後ドイツのユダヤ人』(白水社2005)、『ユダヤ人財産はだれのものか――ホロコーストからパレスチナ問題へ』(白水社2008)、『〈和解〉のリアルポリティクス――ドイツ人とユダヤ人』(みすず書房2017)、訳書にダン・ストーン著『ホロコースト・スタディーズ――最新研究への手引き』(白水社2012)、監訳書にウェンディ・ロワー著『ヒトラーの娘たち――ホロコーストに加担したドイツ女性』(明石書店2016)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。