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萬葉集訓読の資料と方法
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2016年12月
- 書店発売日
- 2016年12月12日
- 登録日
- 2016年11月25日
- 最終更新日
- 2016年12月12日
書評掲載情報
2017-08-31 |
萬葉
224 評者: 奥村和美 |
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紹介
精確な読みで原典の姿に迫る。
仮名作品とは異なり、漢字文献である『萬葉集』を読む際には「訓読」の工程を抜きにすることはできない。
資料として、10世紀後半成立の『赤人集』をとりあげ、従来いわれていた萬葉集との享受関係だけでなく、本文校訂や訓読面でも活用できることを実証。
『古今和歌六帖』も視野に入れ、平安朝仮名文献活用の端緒を開く。
「訓む」ために本文を校訂し、本文の校訂が「訓み」を変える。2つの連動を実践し、萬葉集の真の姿に切り込む!
【本書では『萬葉集』の訓読を研究対象とする。その訓読の精度をあげるためには、厳密な本文校訂が缺かせない。同時に、どのように訓読するかを念頭におかないで本文校訂をなすことはできないだろう。そして本文校訂と訓読の成果を少しでも堅牢なものにするためには、伝本や校勘資料の検証が不可缺である。
本書の内容は、右の研究手法のすべてにおよんでいる。そのうえで、書名に「訓読」を選択した理由はなにかと問われれば、「本文研究・本文校訂の目的は、その作品を精確に読むためにあるから」ということになろう。 平安時代の仮名作品とは異なり、『萬葉集』を読む際には「訓読」という工程が缺かせない。『萬葉集』には「読む」ことと連動して「訓む」ための研究が必要ということであり、本書はその研究領域に少しでも寄与すべくまとめたものである。本書が小さな橋頭堡となることができれば、これに過ぎたる喜びはない。】...「序論 本書の目的と構成」より
目次
凡例
序論 本書の目的と構成
はじめに/古典本文研究のなかの萬葉集/仮名文献活用の意図と意義/萬葉集研究からみた赤人集の位置/本書の構成/おわりに
第一部 萬葉集抄本としてみた赤人集
第一章 萬葉集伝来史上における赤人集の位置
はじめに/排列と脱落歌をめぐって/次点本訓との関連性/萬葉歌の異同から/萬葉伝来史における赤人集の位置づけ/おわりに
第二章 西本願寺本赤人集の成立―萬葉集巻十抄本からの展開を中心に―
はじめに/赤人集三系統の共通本文/西本願寺本の形態/西本願寺本の漢字使用率/おわりに
第三章 赤人集三系統の先後関係―萬葉集巻十抄本の変遷史―
はじめに/書陵部本増補歌群の性格/西本願寺本の脱落歌/長歌の改変/「詞書」の残存状況/おわりに
補説 赤人集と古今和歌六帖―十世紀後半の萬葉歌の利用をめぐって―
はじめに/作者名に関する検証/本文異同に関する検証/おわりに/
附録 萬葉集巻十および赤人集三系統対校表
第二部 萬葉集の訓読と本文校訂
第一章 赤人集による萬葉集本文校訂の可能性
はじめに/萬葉集本文校訂における赤人集の有用性/本文校訂の可能性/一八九〇番歌の「犬」と「友」/おわりに
第二章 萬葉集の本文校訂と古今和歌六帖の本文異同―佐竹昭広説の追認と再考―
はじめに/誤写説の妥当性/佐竹説の再検証/写本系六帖による誤写説の再建/おわりに
第三章 「御名部皇女奉和御歌」本文異同存疑―諸伝本の字形の傾向から―
はじめに/先行研究瞥見/次点本の書写年代から/写本における字形の傾向①―廣瀬本・紀州本の場合/写本における字形の傾向②―元暦校本・類聚古集の場合/おわりに
第四章 類聚古集と廣瀨本の関係―共通する缺陥本文をめぐって―
はじめに/類聚古集と廣瀨本の接点/共通する脱字の例/改字、衍字の例/類聚古集と廣瀨本の接点をめぐる問題点/おわりに
第五章 「雪驪朝楽毛」の本文校訂と訓読―次点本の本文が対立する場合の一方法―
はじめに/結句「朝楽毛」の検証/第四句の字義と附訓の検証/改字説の検討と伝本の関連性/「雪驢」による訓読と解釈/おわりに
第三部 萬葉集訓読の方法
第一章 「戯嗤僧歌」の訓読と解釈―「馬繋」と「半甘」を中心に―
はじめに/表記法と訓読の原則/ハニカムの語釈/格助詞ニの省略と「馬繋」の語義/おわりに
第二章 「献新田部皇子歌」訓読試論―「茂座」借訓説をめぐって―
はじめに/先行研究瞥見/借訓説の再検証/正訓字の可能性/シクの傾向/おわりに
第三章 「籠毛與 美籠母乳」の訓読再考―注釈史の対立を読み直す―
はじめに/次点本古訓の様相/韻律論の注釈史/韻律論の再検討/カタマの語義と「籠」との対応/コとカタマの優劣/おわりに
第四章 萬葉集の「風流士」―字訓史との関係から―
はじめに/ミヤビ=風流説への懐疑/遊仙窟古訓の再検討/上代におけるミヤビの語義/変字法の再検討/おわりに
第五章 「みやび」と「風流」の間隙―萬葉集と伊勢物語の非連続性―
はじめに/「字訓史」による通説の再検討/古今集真名序の「雅情」/平安時代前中期の「風流」と「いちはやきみやび」/能宣集のミヤブとアテブ/「いちはやきみやび」再考/おわりに
結論 本書のまとめと展望
はじめに/平安朝文献の活用で拓けるもの/貫之と萬葉集の研究史概観/新撰和歌の萬葉歌―引用と改作の問題/おわりに
初出一覧 あとがき
索引(人名・書名・歌番号)
上記内容は本書刊行時のものです。