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源氏物語の色
いろなきものの世界へ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年2月
- 書店発売日
- 2014年2月18日
- 登録日
- 2014年1月20日
- 最終更新日
- 2014年2月18日
紹介
古典文学と色彩の関係を追い続けてきた著者の『源氏物語』色彩論集成。
絢爛とした美の世界とともに変容する、豊穣な色相の変遷を追う。
物語の深化の果てに辿り着いた究極の色とは?
それは色のない世界、すなわち、無彩色の思想ではないか。
【 古典文学と色彩の関係を追いつづけてきて、漸くうっすらと見えてきたものがある。自分なりの結論を検証してみようと思う。
散文では『源氏物語』の豊饒な色の絢爛とした美の世界とともに、変容する色相の変遷がある。そして物語の深化の果てに辿りついた究極の色とは? それは色のない世界、すなわち、無彩色の思想といえる。
平安時代に極まった『源氏物語』のネガティブなこの思想が時代を経て、享受され、昇華した律文がある。鎌倉から南北朝時代の『玉葉和歌集』『風雅和歌集』の色たち、いわゆる京極派の歌たちである。この京極派歌人たちは『源氏物語』を読んで読んで読み込んだ末、身につまされる受難の実体験から、自身の生か死か、極まった厳しい現実と『源氏物語』が重なり、やがて『宇治十帖』の宗教的命題へと両者は深化し、交錯してゆく。その情景なり哲学が一層凝縮されて、歌に表現されたもの、それはつまるところ、透明な色といっていいだろう。時代を隔てて、両作品は散文と律文ながら奇しくも色のない世界に到達する。】
目次
はしがき
Ⅰ 源氏物語の指向するもの―豊饒ないろから無彩色の世界へ
序にかえて―上代の人たちの色意識
王朝物語の色彩表現―『源氏物語』を中心に
一 襲の発明
二 多彩な衣装の配色と文芸
三 「紫の上」の色―自然の色どり、人工の色、人のあり方を結実
『源氏物語』における色のモチーフ―〝末摘花〟の場合
一 平安の色
二 末摘花
三 『源氏物語』における色の象徴
四 “末摘花”という人物
五 “末摘花”像の先蹤
六 “末摘花”造型の意図
七 『源氏物語』における色のモチーフ
八 色そのものを名とする登場人物
『源氏物語』にみる女性の服色
一 歌合にみられる服色
二 左方が上位
三 左方が赤系統・右方が青系統
四 服装がその人の全体を表現
五 光源氏をめぐる最も主要な女性方の評価
むらさき
『源氏物語』の色
一 平安時代の色
二 『源氏物語』の色
三 光源氏の究極の白―黒の服色
このごろ摘み出だしたる花してはかなく染め出で給へる、いと、あらまほしき色したり。
『源氏物語』と色―その一端
一 紫式部の自画像
二 「人から」と服色
三 一場面と色―「絵合」
四 光源氏の無常観と服色
光源氏の一面―その服色の象徴するもの
一 晴の服色を描かない源氏
二 枕草子の華美な色彩表現
三 地味で暗調の光源氏
四 主人公光源氏、固有の服色
五 超人的な美
六 色を捨てた黒―白
七 現世を超えた無彩色の世界
「山吹」について―宇治の中君の場合
一 「山吹」は春季か
二 不吉な色をとりつくろい、平常の色合に
宇治の大君
一 色なきものの世界
二 薫からみた宇治の大君
三 薫―宗教と一体渾然となった深層の美
四 美は倫理よりも高い
『源氏物語』の美―死にかかわる描写をとおして
一 文芸世界での死者―源氏物語以前
二 文芸世界での死者―源氏物語以後
三 諸作品の容貌 白―赤、黒―青色
『源氏物語』―「すさまじ」の対象をとおして
一 紫式部は「すさまじ」に何を見出したのか
二 和歌、散文における「すさまじ」の用例から
三 「すさまじ」の意味の変遷
四 源氏物語の特異な或る境地
『源氏物語』の指向するもの―色なきものの身にしみて
一 正月の衣裳はそれぞれの人たちの個性を表わす
二 冬の夜の澄める月、雪の光(り)―色なきものゝ身にしみて
三 冬の月光と、白雪の光りあう夜景に美を
四 『紫式部日記』は色を超えた白―無彩色の世界
五 紫式部、理解されぬ孤独の魂―精神は中世に向かっていた
六 無彩色の白一色を、無上の美として見出す
Ⅱ 色なきものを指向する世界―散文から律文へ[京極派和歌たち]
「にほふ」―京極派和歌の美的世界
「すゞし」“色彩の固有感情”とのかかわり―京極派の和歌をとおして
「すさまじ」―『玉葉』・『風雅』の一世界
薄明の桜―『玉葉集』・『風雅集』にみる
ともし火―『玉葉』・『風雅』の歌人の心
初出一覧
あとがき
上記内容は本書刊行時のものです。