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琉球文学総論
完結
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2015年1月
- 書店発売日
- 2015年2月23日
- 登録日
- 2014年11月6日
- 最終更新日
- 2015年2月20日
書評掲載情報
2015-03-08 | 朝日新聞 |
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紹介
琉球と日本、その位置と意義に果敢に取り組んだ軌跡
戦後の琉球文学・文化研究を牽引した、
琉球大学名誉教授・池宮正治の厖大かつ
多岐に渡る仕事を、内容別に収録するシリーズ。
日本文学における琉球文学の位置づけ、
「オモロ」「琉歌」研究の方法、著者の研究の中心であり、
今日のオモロ研究の水準を示した『おもろさうし』論など、
従来の説を深化させるとともに、
新たな課題を投げかける、19本の論考を収録。
【推薦】
古橋信孝(武蔵大学名誉教授)
狩俣恵一(沖縄国際大学副学長)
豊見山和行(琉球大学教授)
【全三巻の著作集に示される池宮の学問の広さと研究論文の質量は、「沖縄学」研究の先達、伊波普猷や東恩納寛惇、仲原善忠の研究に連なるものである。池宮の研究は、これらの「沖縄学」研究の先達の研究の一部を、あるいは多くを深化させている。(中略)すなわち、現在到達した琉球文学研究、琉球文化研究の水準が示されているといえる。......本書「『池宮正治著作選集』を編集するにあたって」(島村幸一)より】
【著者の文章を読むたびに、常に「お前はどうなのだ」とその鋭いまなざしに射すくめられる思いがする。著者の視線の向こうには、確たる輪郭をそなえた琉球・沖縄の像がくっきりと結ばれていることを感じさせる。それはいつも背筋を伸ばし凛とした風格を漂わせる著者の風貌ともかさなり、ゆらぎがない。後続の我々はその像をいかに引き継ぎ、あらたな像を描き出すことができるか、本書はそうした不断の問いかけの得難い道しるべとしてあり続けるに違いない。......本書3巻「解説」(小峯和明)より】
目次
口絵
目次
Ⅰ 琉球文学総論
第一章 琉球文学総論
第二章 琉球文学の位置づけ
第三章 琉球文学研究の課題
Ⅱ 『おもろさうし』論
第一章 『おもろさうし』概説
第二章 『おもろさうし』の世紀--歌謡が語る琉球の中世
第三章 王と王権の周辺--『おもろさうし』にみる--
第四章 地方おもろの地域区分
第五章 『おもろさうし』にあらわれた異国と異域
第六章 『おもろさうし』における航海と船の民俗
第七章 神女と白馬と馬の口取り
第八章 『おもろさうし』における踊りを意味する語「より」について
第九章 おもろのふし名ノート
第一〇章 「王府おもろ」五曲六節の詞章について
第一一章 おもろ理解と「御唄」「神唄」「神歌」の関係
第一二章 座間味景典の家譜--『おもろさうし』・『混効験集』の編者--
第一三章 『おもろさうし』を読み直す
Ⅲ 琉歌論
第一章 琉歌の世界
第二章 恋の琉歌
第三章 『疱瘡歌』解説
初出一覧
『池宮正治著作選集』を編集するにあたって 島村幸一
解説 島村幸一
索引
前書きなど
推薦文公開
◆池宮正治著作選集1
今後の『おもろさうし』の研究はここから始まる
琉球は日本語文化圏にある。しかし大和朝廷以来の歴史において、薩摩による琉球支配を除けば、日本に組み込まれたのは近代からだった。琉球は古代、中世と独自の文化を形成していったのである。
本巻の中心に据えられている『おもろさうし』はその独自に展開した日本語の文学の、日本とは異なるさまをみせてくれている。それは日本語の文学の別の可能性を思わせるにじゅうぶんだ。
池宮正治氏の「おもろ」論の全貌がここに納められているが、氏の探求は、従来しばしば琉球文学が古代日本の文学に比定されてきたようなものとは異なっている。氏の資料を科学的にみることが必然的に導いたことだ。いうならば氏は歴史化する目をもっていた。
そこにみえてくる『おもろさうし』の歌は古代のものというより、民間に伝承されてきた古謡とは異なるきわめて特殊な宮廷の歌謡である。しかも「おもろ」は古くは「御唄」と記されており、「神歌」と記されるのは一七〇〇年以降という。われわれが一般的な概念としている「うた」という言い方はむしろ特殊なものかもしれないわけだ。
今後の『おもろさうし』の研究はここから始まる以外考えられない。それは「おもろ」論だけでなく、琉球の文学全体にも展開していくだろうし、また日本語の文学へ新たな視角を与えてくれるに違いない。
古橋信孝(武蔵大学名誉教授)
◆池宮正治著作選集2
新見に満ちた本格的な琉球芸能論
琉球・沖縄の芸能は、①王府の「御冠船踊り」の芸能、②村々の民俗芸能、③琉球王国消滅(一八七九年)後、那覇を中心に営業した沖縄芝居の芸能に分けられる。そして、それらの舞台芸能は、琉球音階による三線と八八八六音の琉歌を基盤にした舞踊・組踊等であり、冊封使を歓待する「御冠船踊り」を中心に継承・展開してきた。
おかげで沖縄は、古典芸能・民俗芸能・商業芸能と多様な芸能を継承してきたが、従来の琉球芸能の研究は、民俗学や文学論的な研究が多く、伝聞口承資料をそのまま記述する非科学的な芸能論が横行してきたように思える。
本書では、「琉球芸能を御冠船芸能という以上は、王府資料を駆使することが捷径であるはずだ。」と著者の立場を明快に示し、「近世琉球には専用の劇場はなく、専門の俳優や芸能者もいなかった。組踊は当初から王府管掌の芸能として出発し、王府より任命された踊奉行という官僚が、作演出あるいは全体の制作をも兼務したのである。」という観点から、文献資料を駆使した新見に満ちた本格的な琉球芸能論を展開している。
著者は、プロの芸能家不在の近世琉球社会を踏まえ、式楽としての「御冠船踊り」を中心に、中国・薩摩・徳川幕府との芸能交流を重層的に論述し、加えて「三線音楽論」「民俗芸能論」「近代演劇論」など多様な角度から琉球・沖縄の芸能を論じており、研究者のみならず、実演家や一般の読者にもお薦めしたい好著である。
狩俣恵一(沖縄国際大学副学長)
◆池宮正治著作選集3
琉球文化史の豊穣な世界
戦前の伊波普猷による沖縄学の創設以来、琉球文学と琉球史は密接な関係にある。戦後、一九七二年の「日本復帰」前後に琉球史研究は大きな盛り上がりを見せ、今日に至っている。その牽引役は当時の沖縄歴史研究会に集う若手研究者たちであり、琉球文学の分野から文化史の刷新に大きく寄与してきたのが池宮正治氏である。
池宮正治氏の研究は、『おもろさうし』や琉歌など琉球文学の基軸となる分野に止まらず、関連する芸能史や服飾史など広い意味での琉球文化史へ越境し、独自の文化史像を樹立した。例えば、『おもろさうし』や石碑文などの緻密な読解・解釈から導きだされた池宮氏の琉球王権論は、歴史学の側にも多大な影響を与えた。また、豊富な注釈を施した琉球古語辞典『混効験集』に関する研究は、難解な琉球語を理解する上で必須の研究書となっている。語彙や用語の正確な読解を土台として築きあげられた池宮氏の諸論考は、豊穣な琉球文化史像を私たちに提供してくれる。多彩な論考を収録した本著作選集は、琉球文化史を学ぶものにとっても座右の研究書となることは間違いない。
豊見山和行(琉球大学教授)
上記内容は本書刊行時のものです。