白馬大雪渓ルートの事例から登山道の安全を考える
信州大学山岳科学総合研究所
シリーズ・叢書「山・ひと・くらし 山岳科学ブックレット」の本一覧
発行:信州大学山岳科学総合研究所  発売:オフィスエム この版元の本一覧
A5判 96ページ 並製
定価:933円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-904570-06-7 C0065
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年07月 書店発売日:2009年07月31日
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紹介

行政・研究者・業者など山岳関係者が提言する、安全な登山道のありかた。
登山者、山岳関係者必読の書。

目次

はじめに/白馬大雪渓ルートの自然のあらまし 苅谷愛彦・小森次郎

第一部●白馬大雪渓ルートの事例から

白馬村・登山観光の現在
白馬村における登山観光の現状及び課題
白馬村長 太田紘熙

山岳の土砂災害はどこまで防げるか
大雪渓周辺の土砂災害特性 ─ 砂防からみた山岳の土砂災害 ─
長野県姫川砂防事務所長 松本久志

さまざまな地質がひしめく白馬大雪渓
白馬大雪渓上部、葱平付近の地質の特徴と崩壊との関連
長野県環境保全研究所 主任研究員 富樫 均

謙虚な気持ちで山と接する心構えが大切
2008年8月崩落事故後の閉鎖と再開をめぐる経緯
北アルプス北部山岳救助隊長 降籏義道

第二部●登山道の事故と危機管理

自然公園内の歩道〈登山道の特性〉
環境省長野自然環境事務所
国立公園企画官 中野圭一

山の落石事故はなぜ起きるのか
事例から見えてくる特徴と対策案
名古屋大学大学院環境学研究科特任助教 小森次郎

山の道は、山小屋の生命線
槍・穂高連峰の登山道管理についての現状
(株)涸沢ヒュッテ代表取締役 山口 孝

活火山・浅間山における登山者への情報提供実験
浅間山倶楽部ポータルサイトの運用に向けて
NPO法人 環境防災総合政策研究機構 主任研究員 新堀賢志

登山道の安全に向けて シンポジウム 総合討論より
オーガナイザー
信州大学山岳科学総合研究所客員准教授 苅谷愛彦

登山道の地形変化に対応するための注意ポイント

前書きなど

 登山の醍醐味の一つは、地形や気象、体力、装備などを総合判断して山行計画を立て、刻々変化する自然に身を委ねることである。そして、登山は誰かに管理されるものではなく、それゆえ、逆に身命に関わる重大事故が起きた場合の責任は登山者自身に帰するとの考えが日本では支配的であった。

 一方、最近の事故の多発や外国人を含めた初心者の増加、登山様式の多様化を受けて、一定の登山道管理を必要とする声も聞かれるようになった。こうした流れにあって、登山道の維持や管理を巡っては登山者、行政、観光業者(山小屋)及び研究者の間で必ずしも意見が一致せず、多角的・客観的視点に基づいた安全環境づくりが進んでいない現実がある。互いの利害が一致しないなど、意見が収斂しない理由はいくつか考えられるが、そもそも関係者が情報や意見を交換できる場が非常に少なかったことは問題であった。

 本シンポジウムは、1.日本アルプスを代表する登山道である反面、自然災害による事故が続いている白馬大雪渓ルートを中心事例にとりあげ、2.様々な立場・視点から登山道の安全に関する情報を持ちより、3.登山道の安全を巡って意見交換すること、をねらいとした。こうした枠組みを設けた理由は4つある。

 第1に、日本有数の登山道を擁する白馬地域での安全に対する方策やそれに伴う効果は、海外も含めた登山や観光の将来像の一モデルになると考えられることである。
 第2に、白馬村は本格的な国際観光地化をめざしていることである。不況や円高など逆風は強いが、この挑戦が成功した暁には観光客全体に占める登山者の割合、特に外国人登山者の比率は高まっているはずである。また白馬大雪渓は世界でも希な大規模越年雪渓で、観光資源としてだけではなく学術的にも価値が高いことから、今後の方策次第では将来にわたり一定の登山者の往来が見込まれる。多数かつ多彩なゲストを迎える前に、先進的な安全基準作りや環境整備のための議論が必要な段階に来ている。
 第3に、前述のように、議論を始めるには関係者が情報や意見を交換できる場が必要なことである。
 そして第4に、信州大学山岳科学総合研究所と白馬村は包括的連携協定を結んでいることである。両者は学術研究で緊密な関係を築きつつあり、登山道に関する検討や議論でも協力しあうことが望まれている。
 本シンポジウムの主眼は登山道の安全を考える議論のきっかけ作りにある。入山規制の導入や登山道の改廃問題を結論づけることが今回の優先課題ではない。意志決定過程が悠長なものであってはならないが、十分な議論なしに導入した方策は長続きしないことも多い。講演者のみならず、会場に来られた方々からも建設的な意見やアイデアが出され、次の議論へ発展してゆくことを期待したい。

著者プロフィール

信州大学山岳科学総合研究所()

信州大学山岳科学総合研究所は山岳県・長野にあるという恵まれた立地から、山岳を環境・人文・健康・地質・植生など多岐に渡り総合的に研究する機関です。

上記内容は本書刊行時のものです。
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