義経の東アジア
小島 毅:著
発行:トランスビュー この版元の本一覧
四六判 247ページ 上製
定価:2,400円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-901510-92-9 C1095
在庫あり
奥付の初版発行年月:2010年09月 書店発売日:2010年09月05日
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紹介

義経はなぜ平泉に逃げたのか。清盛はなぜ福原に遷都し、宋と貿易したのか。中国大陸の宋と金は、源平の戦いとどう関わったのか。
開国派・平家、鎖国派・源氏と見直すと歴史が違って見えてくる。
東アジアの視点から歴史のダイナミズムを捉え、新たな歴史像を展開した名著に四篇を増補。

目次

はじめに



義経の東アジア

はしがき 墓前のお目汚し

第一章 義経の時代の東アジア情勢
義経と同い年の男
二つの中国—宋と金
日宋貿易の商品
ゼニがでまわったわけ

第二章 義経登場前夜の日本
中世のはじまりはいつか
京の権力闘争の変容
少年・義経は奥州平泉にいたのか
平泉の形成と義経
瀬戸内転戦、そして悲劇へ

第三章 源平合戦の国際性
西の平家、東の源氏
動乱の治承四年
仏教界の新風
無常観と軍記
もし宋が滅びていたら・・・

第四章 武士道と義経伝説
武士とはなんぞや?
「武士道」について—新渡戸稲造・三島由紀夫・大塩平八郎
京都から東京へ
新説鎌倉武士—踊る義経捜査線
義満の東アジア

略年表
参考文献



異境の表象
留学の歴史/道元の体験/儒者から志士へ

朱子学事始—武士の理想像の変容
寝殿造から書院造へ/東福寺—歴史の証人/円爾・後醍醐の意図せざる業績/正成神格化と明治維新/朱子学を武士が学ぶと・・・



開かれた日本思想史学へ
部外者からの提言/「日本」について/「思想」について/「史学」について

歴史を開かれたものに
ソクラテスの弁明/「日本」とは何か/「歴史」とは何か/時代の壁を越えて

初出一覧

前書きなど

はじめに

 本書の第Ⅰ部「義経の東アジア」は、もともと二〇〇五年夏に勉誠出版から刊行された。したがって、その執筆は同年初頭であり、本文中に「ついさきほど新幹線で京都駅を出た」とある(一四七頁)のは、二月に行われた研究会の帰途のことである。当時、私はさる共同研究を組織・準備しており、それに連動する企画として本書を著した。「小説やドラマを通じて再生産されつづけている誤った歴史認識を、放送中のNHK大河ドラマに便乗するかたちで告発する」——それが企画の趣旨だった。勉誠出版の池嶋洋次社長の厚意と理解、それに当時同社におられた編集担当小島明さんの活躍がなければ、おそらく日の目を見る機会はなかったであろう。

 幸い、本書はいろいろな出版社の編集者たちの目にとまり、そのおかげで、これを機に私は日本史をテーマとする一般向けの本を何冊か書かせてもらうことになった。トランスビューの中嶋廣氏もその一人である。勉誠出版での重版は困難ななか、今回、本書を新版として再び世に送ることに熱心だったのも、中嶋氏である。奇しくも、著者自身を含めて、いずれも苗字に嶋・島が付く人たちである。「日本は孤立した島国ではなかった」が本書の主題であることを思うと、なおさら感慨深い。

 上述の共同研究は、本書が世に出るのとほぼ同時に、二〇〇五年七月、文部科学省から採択通知を得た。「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成——寧波を焦点とする学際的創生」、略称ニンポープロジェクト、愛称「にんぷろ」である。以後、二〇一〇年三月にいたる四年半、百五十人にのぼる研究者が参加して多岐にわたる成果が得られた。私は全体の代表として、ひたすら駆け抜けた。共同研究としては成功だったと自負している。ただ、生来お調子者の私はうかれたあげく、逸脱と暴走によって身近な人たちを苦しめるという愚を犯した。楽しくてやがて哀しき祭りかな。四年半続いた祭りは、私の人生に汚点を残した。

 四年半とは、義経が平泉を去って頼朝の幕下に参じてから、京を逐われてふたたび平泉に戻るまでの時間にほぼ重なる。彼はこのわずかな期間の活躍によって日本史上に名を残し、現在にいたるまで景仰の対象となっている。その間、彼もまた私と同じように、自分の欲望や判断ミスを犯して周囲に迷惑をかけるなどの行為を重ねている。まだ二十代の青年にとって、愛する女性との別離や肉親との確執は、どのように心に響いたことか。そうした彼の体験が、本書でも述べたような伝説化のもととなったのであった。

 本書は二〇〇五年の本文をそのまま第Ⅰ部として収録し、誤りの修正も文字や事実に関する最小限のものにとどめた。余談や笑話にはすでに古くなったものもあるが、歴史的文書としてご寛恕願いたい。

 この新版では、加えて四篇の文章を収めた。うち二つは第Ⅰ部と同じ勉誠出版から刊行した共著に書いたもので、内容的に旧版『義経の東アジア』と深く関わる。あとの二つは学会誌から依頼されて書いた、研究の方法をめぐる問題提起である。これらをあわせて読んでいただくことで、私が当初『義経の東アジア』で何を意図したかが、よりよく了解されよう。こうした形での新版刊行を認めてくださった、勉誠出版の池嶋洋次社長に謝意を表したい。


二〇一〇年二月やはりまた新幹線の車中にて雪景色を眺めながら

小島 毅

関連書

父が子に語る近現代史 ISBN : 978-4-901510-77-6
父が子に語る日本史 ISBN : 978-4-901510-66-0

関連リンク

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著者プロフィール

小島 毅(コジマ ツヨシ)

1962年生まれ。東京大学卒。専門は中国思想史。現在、東京大学准教授。「日中歴史共同研究」委員、日本学術会議連携会員を務める。専攻分野での著書は『中国思想と宗教の奔流』(「中国の歴史07」講談社)、『朱子学と陽明学』(放送大学教材)など。
このほか『父が子に語る近現代史』『父が子に語る日本史』(共にトランスビュー)、『近代日本の陽明学』(講談社)、『靖国史観』(ちくま新書)、『足利義満』『織田信長 最後の茶会』(共に光文社新書)と、問題作・話題作を次々に発表している。

上記内容は本書刊行時のものです。
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