発行:ボーダーインク この版元の本一覧
四六判 240ページ 並製
定価:1,500円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-89982-178-6 C0034
在庫あり
奥付の初版発行年月:2010年03月 書店発売日:2010年03月20日
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アマゾン|HonyaClub.com紹介
国際的な存在であった中世・近代の琉球物産とブームを巻き起こした現代の沖縄物産、そのルーツと本質、メカニズムを説き明かし、新たなる物産の産業化と島々の都市化の可能性を探る先鋭的な「沖縄物産論」問題提起の書。
目次
目 次
なぜこの本を書くか まえがきとして 3
第一部 琉球の歴史の中の物産
はじめに 18
第一章 沖縄の物産 20
・ 沖縄物産の特性 20
2 沖縄ゆえの商品とは 23
(1)地勢的、気候的、自然環境の条件から、多くの医食同源が中心 24
(2)歴史、時代性ゆえの商品 26
(3)中国の影響による沖縄ゆえの商品 29
(4)米軍ゆえの沖縄商品 33
(5)沖縄物産を抽象化する沖縄ゆえの商品 35
3 沖縄ゆえの物産の産業化 40
(1)物産複合の変遷 40
(2)物産の内製化 42
(3)第三の道があった 45
(4)いろいろな経済成長を終えたあとに 48
第二章 歴史の中の琉球物産のルーツ 52
1 視点 52
(1)東南アジアから後退する琉球 53
(2)価格が貿易をリードする 61
(3)香辛料の争奪戦とその終焉 64
2 琉球国の中継貿易の成立 71
(1)取引相手の状況 71
(2)中国・日本の双方が対琉球策として特恵優遇措置 72
(3)中継貿易の方式 74
(4)大航海の開始と内容 74
(5)銀通貨の導入 76
(6)進貢貿易方式の機能低下 77
(7)衰退へ 78
(8)航行技術の格差 79
3 江戸時代に登場する沖縄の物産 82
(1)江戸時代、琉球からの輸出 83
(2)二五〇年前の泡盛の輸出 86
4 天保改革時の薩摩の財政改革と貿易の利益計算 87
(1)米と黒糖の交換比率 89
(2)抜け荷と物産 92
5 ルーツから見た物産の物語 97
(1)シークヮーサーのルーツ 97
(2)ウコンのルーツ 106
(3)砂糖キビのルーツ 109
(4)イモのルーツ 114
第二部 沖縄ブームの終焉から物産のブランド化へ
はじめに 120
第三章 沖縄ブームの始まりと終焉 121
1 物産ブームの始まり 121
(1)それは銀座わしたショップから始まった 121
(2)ブームの物産と展開 125
(3)沖縄につづく各県のアンテナショップ 127
2 ブームは生き物 130
(1)物産ブームの狂騒曲 131
(2)ブームの凋落と崩壊 134
(3)1千億円市場の萎縮 137
(4)ブーム凋落直後に、業界の動きと対応 139
(5)ブームの転換(物産ブームから居酒屋ブームへ) 143
(6)業界の反省と分析 145
3 沖縄ブームの総括 149
(1)非日常から日常へ 149
(2)そこまで来たブーム、その広がり 150
(3)ブーム崩壊の恐怖 151
第四章 島々の都市化と物産 153
1 島々の発展を規程する要因 153
(1)「島」概念からの脱却 153
(2)物産展開と心の復活(ノスタルジア) 155
(3)島々、物産のマーケティング 158
(4)沖縄のモデル化 164
(5)島々のイノベーション 170
2 島々の市場展開 173
(1)奄美、大島紬の凋落 174
(2)沖永良部、農業王国のプライド 177
(3)伊江村、地域村から観光村へ 184
(4)インドネシア・バリ島、都市化と観光 186
第五章 沖縄物産のブランド物語 191
1 ブランドの歴史 192
2 一人歩きする沖縄ブランド 196
3 今日的な地域ブランド 199
(1)商標と地域ブランド 199
(2)地域ブランドの形成 200
(3)日米のブランドの違い 202
(4)地域ブランドと商品マーケティング 203
(5)地域ブランド化と商品開発 204
(6)地域ブランドと観光 205
(7)沖縄ブランド化の現状 208
(8)北海道ブランド 209
(9)ブランド化の原則 211
4 ナショナル、プライベート、地域の各ブランド化 212
(1)メイド・イン・ジャパンはどうなるか 213
(2)なぜPB(プライベートブランド)が必要か 218
(3)沖縄ブランド化の模索 220
5 地域経済団体商標制度 224
6 都市圏市場における各県のブランド化の動き 239
あとがき 235
前書きなど
なぜこの本を書くか まえがきとして
物産で見ていく限り、琉球は、日本の版図には入らない。
大交易時代に海外に飛躍し自由に進貢貿易体制を活用し、琉球国を支え、経済を成り立たせていた物産が、如何なるものであったか。
一般に物産とは、特定の時代に、特定の地域で、特定の階層の人々が所有し使用する権利をもっているもので、生産者であった農民さえ口にも出来なかった。例えば布を織っていた女性達、加工していた人々は埒外に置かれ、しかし産出を強制的に義務付けられていたのが物産と言われるものである。従ってその物産が、どのように商品となり流通し誰でも何処でも購入出来るようになったのかが、非常に重要なことである。
一方商品とは、特に産業革命以降、近代技術やシステムによって物産に機能性・利便性、量の生産性、品質の均一性を付加して市場流通を可能としたものである。その大きな違いは物産は物々交換をベースとし、商品は貨幣経済をベースとするものである。それは発見と発明の対比、或いは地域と都市にも対峙される。
本書の第一部は、この歴史の中の物産物語がテーマである。歴史上、産業革命以前のグローバル世界の経済の中で琉球・沖縄の経済を成り立させてきた事実を見出したい。
かつての琉球王国において、市場と連関して初めて経済を成り立たせる優秀な民が登場し、中国との進貢貿易の経済を支えていた。薩摩侵略以前は自由市場と琉球の取り扱う物産(必ずしも琉球の産物とは限らない)は繋がっていた。一方では進貢貿易という中国との何百年にわたるつながりがあった。つまり、中国との関係がなければ進貢貿易とは言えず、むしろ民間貿易・自由貿易というべきである。琉球王国が、かつてのアユタヤ(タイ)とかマラッカ、ジャワ・スマトラなどと行なった東南アジア貿易は、完全なる民間貿易の範疇である。ただその中に中国・明が朝貢貿易という制度を持ち出してきたものだから、琉球王国の交易があたかも全て進貢貿易と見なされ、民間貿易としての性格が埋没してしまっているのである。
グローバルな琉球の貿易活動が、半分の進貢貿易になったのは薩摩侵略以降である。それは抑圧下の貿易であった。薩摩がやったのは、自由貿易と管理貿易の密輸に近い抜き荷貿易である。いずれにせよ本質は、冊幇というセレモニーに名を借りた物産交易会であった。物産の国際見本市・フェアと言えば分かり易いが、今でいう物産展である。アヘン戦争直後、フランス艦隊が相次いで琉球に通商を求めていた頃、薩摩は広州で琉球物産を持ちより欧米諸国と貿易を図るため物産展を琉球王府に持ちかけている(『琉球王国評定所文書』)。当時冊封使一行(500人前後)は、売り切れるまで物産展を半年も続けるが、最後には売り逃げになることもあった。
進貢貿易は、一種の片務貿易になっていた。中国を除けば、市場は日本であろうが、朝鮮であろうが、いずれも民間自由貿易である。従って物産というテーマは、その商品の流通や物流の仕組みや枠組みを考慮しなければ、論じることはできない。琉球という経済を成り立たせていた世界、とりわけ東アジアや東南アジアの世界の中の仕組みとの兼ね合いで物産展というものを捉えなければならない。
その仕組みを作っていたのは多くの場合、中国の政策に対応しようとする琉球王朝の政策であり、主体は官であるが、根本は民であろう。それぞれ関連が深い点については、本論で述べていくつもりである。この時の物産は、王府が仕入―販売する輸出入貿易はすべて琉球物産である。
しかし歴史的な物産展が地域産業として成立した否かは、歴史の中で検証しないと解らない。そして物産が産業として成立してきた歴史を見ていけば、今後の沖縄に成立する物産の産業として全体像は見えてこよう。
その意味において、歴史の中で琉球・沖縄経済を成り立たせてきた物産展の仕組みの研究は欠かせない。それが進貢貿易であろうが、片務貿易であろうが、薩摩が演じた密貿易であろうが、物産商品の研究は非常に重要である。
薩摩支配時代は、琉球の物産市場は存在したものの、生産と流通は断絶し独占され、極端に言えば島津家の利益のため存在したのである。琉球の物産や密輸で流入したり、輸出で出て行った物産が、全て商品として高められていったのではない。持ち込まれたままの物産を右から左に流すブローカー商売に過ぎない。地勢的には、薩摩で生産されたものは商品としての価値は高められず、大坂市場では売れなかった。琉球で産するもの、関連している物産が市場性を持ち、市場ニーズに合い、利益に繋がっていったのである。
しかし世界に目を向ければ、まず薩摩の存在が大きい。近世において、なぜ薩摩のから抜き出せなかったか。1800年代中国の人口は、約3億1500万人余、ヨーロッパ諸国の総人口1億7300万人と比べると約倍近い。世界の人口が8億9、000万人だったので、世界人口の35%を占めていた(『東アジアの「近世」』岸本美緒)。その中国を市場とすると、単純に琉球の進貢品だけでは足りない。1800年代前半、琉球が2年毎に台風、干魃、飢餓と災難を繰り返していたころである。中国は生活革命が起こっており、どんな商品でも売れた時代だ。
中国の流通は、大量仕入―大量販売を主とする「客商」という、食品雑貨など生活用品の卸売業に似た商人が主流を占めていた。それは長距離商業で琉球を相手にしていた「芽行」というブローカーより広範囲の商業を営んでいた。日本は鎖国体制で身動きできず、動けるのは琉球しかない。しかしその流通にアプローチ出来なかったことが、後々の商域拡大に直結しなかった理由である。
替わって活発だったのは、マニラを拠点に銀を持つスペイン、中国生糸と日本の銀のドル箱貿易を握っていたポルトガル、後のオランダ・イギリス勢力による対中国流通である。中国に収斂される商品は全て取り扱うことが可能であった。
当時、銀が機軸通貨の役割を果たしていたが、琉球は肝心の銀がない。しかし後にナマコ、アワビ、昆布などが中国に向けて盛んに輸出されている点から物々交換を基本とする貿易がまだ通用した時代だと思われ、銀なしの貿易も可能であった。歴史学者の高良倉吉は、螺殻(ヤコウガイ)と呼ばれる琉球貝殻類の、豊見山和行は、鰹節の中国輸出を研究している。1762年~1862年の100年間に昆布638万斤、フカヒレ25万斤、鰹節8万斤が輸出されているが、主に生活食材類である。
世界の銀の半分が中国に集まっており、中央消費市場に合わせて行けば何でも売れたといっても過言ではない。琉球は、冊封使並みの物産展を通して貿易の拡大ができたが、産業振興とはとらえてなかった。。
琉球・沖縄の歴史家、学者・研究者を見ていると、戦前の伊波普猷、東恩納寛惇、比嘉春潮、中原善忠らの時代から、現在活躍中の戦後生まれの学者・研究者(筆者からしたら薩摩に気兼ねし過ぎた限定的なものではあるが)を中心に移行してきている。更に日本復帰以降、グローバル化とかIT化の中で、次代の研究者が出てくると思われる。共通しているのは国境のなかった自由貿易時代に戻って、島経済から都市型経済へ指向する研究になるだろう。
【展海】について
中国の閉鎖的な政策に拘わらず康熙帝、雍正帝、乾隆帝の三代(1661年~1795年)の130年間に経済文化などの分野でヨーロッパを凌ぐ繁栄が続いたがそれは海外発展政策となった1684年の「展海令」にある。当時の人口はヨーロッパの倍を占める3億人に膨れ上がるほどの成長を謳歌していた。
冊幇体制の中の琉球進貢貿易は明清王朝の海禁令や遷海令によって機能し発展を確保していくが1567年の海禁令の緩和、1684年の展海令で中国商人の攻勢で中国との琉球貿易は後退していく。
東南アジア市場における磁器類を見ていくと海禁令が公布されると肥前磁器が勢いを増して、例えば万治2年(1659)~寛文11年(1671)には何万単位で輸出されたが、元禄4年(1691)~宝永元年(1704)には何千単位でしか輸出されてない。つまり展海令が出ると中国産が勢いを増し、海禁令が公布されると急に中国産は萎み肥前磁器が中国磁器に取って代わるという、激しい競争を繰り返すのである。そして展海令の公布をキッカケに中国人の長崎渡航ブームが起こる(「金大考古 第48号」、金沢大学考古学研究所、2005年)。
「展海」というのは珠海とか廈門、上海などの海に面した地域から、海外への発展を意識する中国人の見方である。
版元から一言
著者は、1990年代から2000年代の沖縄物産ブームの仕掛け人です。そのかれの最新の「沖縄物産論」です。
関連書
『沖縄の物産革命』
著者プロフィール
宮城弘岩(ミヤギヒロイワ)
宮城弘岩 みやぎ・ひろいわ
1940年(昭和15)生まれ、沖縄県南風原町出身
早稲田大学、国立台湾大学経済学研究所(修士)卒業
国際監査法人プライスウォーターハウス、(株)山崎鉄工所(ロボットメーカー、現ヤマザキマザック)、(社)沖縄県工業連合会専務理事、同副会長、(株)沖縄県物産公社代表取締役専務を経て、(株)沖縄物産企業連合代表取締役、取締役会長に就任、現在に至る
(社)中小企業診断協会理事、同沖縄県副支部長、中小企業診断士(工業)
沖縄大学非常勤講師
主な著書
『中国近代市場形成の特質』(中国語文、1969年)、『ズバリ沖縄診断』(第一集・1986年、第二集・1987年)『「沖縄発」の時代 その経済原論をさぐる』(1988年)、『沖縄をこえるもの』(裁弘義との共著・1990年)、『ポスト香港と沖縄』(1991年)、『沖縄自由貿易論』(1998年)、『沖縄の物産革命』(2003年)
その他沖縄振興に関する小論文多数
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