統合失調症と文学の表現世界異形の心的現象
吉本 隆明:著, 森山 公夫:著
発行:批評社 この版元の本一覧
四六判 280ページ 上製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-8265-0510-9 C0011
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年09月 書店発売日:2009年10月10日
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紹介

「精神分裂病」が統合失調症へと病名変更がなされたなかで、新たな治療論の展開が森山公夫によってなされたことは、『統合失調症−精神分裂病を解く』(ちくま新書)に詳しい。

この新たな治療論−統合失調症の全人間学的理解−のもとで、吉本隆明が自身の臨死体験以降の精神の変異をとおして見えてきた文学における「夢幻様体験」の表現世界を語ると同時に、それが人間の精神内容にとってどのような意味をもつことになるのかを、夏目漱石、宮沢賢治、芥川龍之介、島尾敏雄の諸作品をとおして具体的に明らかにする。

吉本隆明が語る、臨死体験以後の心的現象の新領域!

目次

■第1章 文学と統合失調症の心的世界

「精神分裂病」から「統合失調症」へ
『彼岸過迄』の中の「夢幻様」描写の意味
『三四郎』の中の「夢幻様」描写の意味
『彼岸過迄』『三四郎』『草枕』に描かれた漱石の「夢幻様」世界

■第2章 「臨死体験」と原始仏教の世界〜死に損なって◎体験とその後

「夢幻様」世界に親和性をもつ漱石の作品
死に損なって〜溺れた体験とその後
比喩として「怪しげなこと」へ〜中沢新一さんとの対論のなかで考えたこと
「心の考古学」への憧憬〜ヘーゲルの歴史認識を超えて
「統合失調症」における「統合」の意味〜臨床経験から
「心」あるいは「精神」内容二つの部分の相互関係〜『言語にとって美とは何か』と『胎児の世界』の共通性
『統合失調症〜精神分裂病を解く』をめぐって

■第3章 もうひとつの視線〜四次元的幻視の心的世界

作家と「夢幻様」体験の親和性〜漱石、ドストエフスキー、夢野久作
上からのもうひとつの視線の想像力〜『銀河鉄道の夜』の描写
四次元的映像空間の想像力ひもうひとつの視線と富士通館の経験から
三次元の感覚世界を四次元的視線で見る想像力〜麻原彰晃と芥川龍之介の視角
もうひとつの視線と「狂気」の世界
「狂気」と「健常」の閾値〜「生育の構造」をめぐって
浄土教にみる「狂気」の処遇◎親鸞の教えをめぐって(1)
親鸞の悟りと夢告〜「もの狂い」の排除の論理◎親鸞の教えをめぐって(2)

■第4章 「和解」と「諦念」、そして「内省」〜新しい関係世界の脱=構築

不安と葛藤の関係を超えて〜固有の世界と折り合いを付ける
対立と孤立を超えて〜「内省」のむずかしさ
 1・大岡昇平さんの場合
 2・小島信夫さん、鶴見俊輔さんの場合
 3・安原顕さんの場合
 4・出口裕弘さんの場合
 5・娘〜次女の場合
「ひきこもり」の心象風景『ひきこもれ〜ひとりの時間をもつということ』をめぐって

■補章1 僕のメンタルヘルス

『心的現象論序説』における「心」と「精神」
「心の危機」と労働の変質
不健康の社会的典型
家族の不健康とは
社会関係の不健康〜市民病という名の病気
親鸞の悟りと精神の病い
「狂気」と文学の可能性
レーニン的唯物論の陥穽と仏教の世界
精神医療における霊性と呪術的世界
「原生的疎外」をめぐって
「精神分裂病」から「統合失調症」へ〜実体の変革へ向けて

■補章2 それから――老いの心的現象論
加齢による心身の変調
精神科医療の新しい変化〜解離、ヒステリー、遁走
遁走の病理と実感〜隠れてしまえる場所があれば隠れたい
時代状況の転換期と追い詰められる思想の苦悩〜江藤淳の“妄想”
太宰治の苦悩〜志賀直哉との論争の果てに
うつ病の蔓延、拡散状況のなかで
社会の病理と若者たちの無差別殺傷事件〜正常と異常の狭間で
ある事故の顛末〜憂さ晴らしの会の変貌と荒廃
精神科バブル現象と唯物論的思考の蔓延〜ゆとりの喪失とエゴイズム
親鸞の悟りに学ぶ〜チベット仏教を支持した善光寺の教え
科学技術思考の分かりやすさの陥穽〜テレビ文化の機能をはじめて知る
これからの同人誌という自己主張の場〜「試行」の経験から

■解題(森山公夫)
敗戦後の60年
 敗戦体験からの帰還
 60年安保闘争前後
 全共闘運動と吉本思想
 80年代と吉本思想の展開
現在的課題 
 「もう一つの視線」
 「精神とは何か?」

■増補改訂版へのあとがき(森山公夫)

前書きなど

 わたしが初めて吉本さんと対談したのは一九七五年、「精神分裂病」をテーマにした現代思想誌の企画によるものでした。いまだ「七〇年代安保闘争」とも呼ばれた「反戦・反権力」闘争の余韻が強く残り、だがすでに運動全体の退潮傾向はくっきりと現れてきていた時です。わたしは畏敬する吉本さんとの対談にいまだ力足らずという感じを秘め、緊張しながらのぞんだものでした。
        *        *        *   
 そもそもわたしと吉本さんとの出会いは、かつての「六〇年安保」の指導者で元共産主義者同盟書記長でもあった島成郎さんが仲介してくれたものでした。一九五六年に刊行された、武井昭夫・吉本隆明の共著『文学者の戦争責任』を、当時まだ医学生だったわたしに是非読むようにと勧めたのが島さんでした。わたしは一読して、その斬新かつ強靭な思考の魅力にとりつかれ、以後氏の作品を読み継いだものでした。
 ほぼ四半世紀前に書かれた氏のこの戦争責任論を今回読み直して見て、その論点がいまだにみずみずしい生命力を保っていることを発見し、わたしは改めて一驚しました。
                    (森山公夫「解題」より抜粋)

版元から一言

旧版を全面的に改訂。「補章2 老いの心的現象論」として増補部分を収録。対談収録時間3時間。頁数にして50頁を増補!

関連リンク

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著者プロフィール

吉本 隆明(ヨシモト タカアキ)

1924年生まれ。
東京工業大学卒。詩人,批評家,思想家。
主な著書 『共同幻想論』『心的現象論序説』『言語にとって美とは何か』(以上角川文庫),『吉本隆明全詩集』(思潮社),他。『夏目漱石を読む』(筑摩書房)で第2回小林秀雄賞を受賞。

上記内容は本書刊行時のものです。

森山 公夫(モリヤマ キミオ)

1934年生まれ。
東京大学医学部卒。精神科医。現在、陽和病院院長。
主な著書 『狂気の軌跡』(岩崎学術出版社),『和解と精神医学』(筑摩書房),『統合失調症—精神分裂病を解く』(ちくま新書)他。

上記内容は本書刊行時のものです。
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