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原子力市民年鑑2014
- 初版年月日
- 2014年11月
- 書店発売日
- 2014年11月21日
- 登録日
- 2014年11月12日
- 最終更新日
- 2015年7月29日
紹介
40年以上にわたり、調査・研究・提言を行ってきた原子力資料情報室による、原発データブックの最新版。巻頭では、福島原発事故の現状を分析した論文など7本を掲載。データ編では、日本の原発の全データを収録。原発・原子力に関するニュースを理解するために、必備しておきたい1冊。
目次
巻頭論文
原発と訣別し、あたらしい社会へ(山口幸夫)
住民の直接参加で決めよ
──課題山積の処分地選定 放射性廃棄物ワーキンググループの議論に参加して(伴英幸)
福島第一原発事故──事故の原因・推移に関する未解明な問題(上澤千尋)
福島第一原発 きびしい作業環境の中、高い被曝状況は続く
──すべての収束作業者を疫学調査の対象にして、健康管理の徹底を(渡辺美紀子)
東京電力福島第一原子力発電所事故処理状況[2013年4月から2014年4月まで](松久保肇)
新「エネルギー基本計画」と2013年度原子力事情(西尾漠)
第1部 データで見る日本の原発(サイト別)
日本の原子力発電所一覧
原発おことわりマップ
BWR(沸騰水型軽水炉)の概念図
PWR(加圧水型軽水炉)の概念図
ABWRの概念図(従来型沸騰水型炉との比較)
主な原発裁判
各年度末の原発基数と設備容量
原発に関する住民投票
原子力関連資料公開施設一覧
研究炉・臨界実験装置一覧
【計画地点】
上関
【運転・建設中地点】
泊
大間
東通
女川
福島第一
福島第二
柏崎刈羽
東海・東海第二
浜岡
志賀
敦賀
美浜
大飯
高浜
島根
伊方
玄海
川内
ふげん・もんじゅ
第2部 データで見る原発をとりまく状況(テーマ別)
1 プルトニウム
2 核燃料サイクル
3 廃棄物
4 事故
5 福島第一原発
6 地震
7 被曝・放射能
8 核兵器
9 世界の原発
10 アジアの原発
11 原子力行政
12 原子力産業
13 輸送
14 エネルギー
15 その他
前書きなど
【巻頭論文①】原発と訣別し、あたらしい社会へ──山口幸夫
時代がおおきく角を曲がろうとしている。この1年、それがより明白になった。そしてまた、その動きを旧来のままにとどめるだけではなく、さらに旧体制へ強く押し戻そうとする勢力とその構造も、より露わになった。
3・11東日本大震災と東京電力福島第一原発事故による未曾有の惨状が、日本列島に住みくらす私たちの社会に根源的な見直しをうながしていると思う。
核のエネルギーに頼ることをやめるという選択は、エネルギー選択の問題だけで済むのではない。個人のくらしのありかたと同時に、様々な分野で既存の社会システムと価値観とを問い直し、つくりかえていくことを意味する。文明のありかたをどのように考え、選択するのかという問題である。日本が原子力を導入して60年たつが、3・11「福島原発震災」を契機に時代が変化しはじめた、変化せざるをえなくなったのだ、と見ることができる。
時代の変化は多様にあらわれている。数万人から数十人という規模まで、大小を問わない各種の集会・講演会・学習会、デモ、署名運動、論考、小説・評論、直接的な抗議行動、法廷での主張と判決、教育・研究・知のありかたの再検討等々、おおきな潮の流れのような変化が起きている。個人であるかグループであるかを問わず、従来の日本社会、つまりは高度工業化社会を志向してきた考え方とその仕組みに、根底からの疑問が呈されているわけである。
これからやって来る世代が、人間として人間らしく、尊厳を保ち、安全に、安心して生きることができる社会は具体的にどうあるべきか。地震・津波・火山列島の日本の自然とどう折り合いをつけていくことができるのか。経済性と利便性とを優先し少数派や弱者を切り捨ててきたこれまでのような社会ではなく、誰かに犠牲を強いてしか成り立たない原子力のシステムのようではなく、社会のありようと仕組みはどのようにして可能か。こういう議論が3・11によってうまれ、深化してきたことは疑いえない事実である。
しかし他方で、長年にわたって慣れ親しんできた私たち自身の思考の枠組みは制度と法律とによって強く裏付けられている。また、これまでのくらしと社会の仕組みへのこだわりと慣習は歴史のなかで定着してきたものでもある。この現状のもとで根源的な改革をしようとすれば、日本の近代化と現代化の過程を振り返って検証し、考察し直す作業が必要である。たいへん困難な仕事ではある。
2012年12月に発足した自民党の第二次安倍内閣は、討論型世論調査などを経て原発ゼロをめざすことを決定した民主党の前内閣の方針を覆し、2014年4月、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。あきらかに、原発に依拠した社会を目指す方針である。政府に同調する政治家・官僚・経済界・専門家たちは、あたかもフクシマなどは無かったかのようにふるまっている。旧来の姿勢を変えようとはしていない。
なかなか見えにくいところもあるが、原子力の今後をめぐって、推進側と反対派の間で重要な議論が続いている。(1)政策の決定のプロセスに市民がどう関わるか、(2)科学と技術、あるいは科学技術の閉鎖性をどう見るか、(3)市民が向き合う科学技術とは何か。以下に具体的にとり上げる。……
上記内容は本書刊行時のものです。