こころ美しい日本の再生海洋観光立国のすすめ
中瀬 勝義:著, 明戸 眞弓美:著, 庄司 邦昭:著
発行:七つ森書館 この版元の本一覧
A5判 128ページ 並製
定価:1,000円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-8228-0861-7 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年03月 書店発売日:2008年03月23日
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紹介

 エコツーリズム推進法が国会を通過し観光立国が本格的にスタート! 世界でもまれな循環型ライフスタイルを達成していた江戸時代の日本。近年の大量生産・大量消費・大量廃棄から脱却し、国内の資源をベースにした循環型ライフスタイルをみんなで模索しましょう。
 新情報を追加し、海洋観光立国の先進事例を増強して増補版になって再登場。

目次

増補版によせて

はじめに

第1章 いま、なぜ海洋観光立国か(中瀬勝義)
 1 知ってます? 料理メニューの輸入依存度!
 2 主要国の食料自給率——日本は海外に60%も依存
 3 日本は世界から資源を大量に購入しています!
 4 世界に資源はどれほどあるの?——もう直ぐなくなりそう!
 5 こんな生活はいつまで可能なの?——中国・インドに抜かれるよ!
 6 こんな生活からの脱出策は——エコライフを始めよう!
 7 地方では車なしの生活はできない?
 8 自給自足国家への道——持続可能な社会づくり
 9 かつての大国は観光立国
 10 世界の観光産業
 11 日本の観光産業——観光に対する考え方を根本から変えよう!
 12 日本の海は世界で第6位
 13 世界一安全な国——日本!
 14 バスコ・ダ・ガマ体験やマリンスポーツを楽しもう
 15 人口減少はチャンス、観光には定年がない——生活こそが観光資源
 16 こころ美しい日本の再生!——今こそ食料自給自足の 海洋観光立国 を目指そう!

第2章 海とスロー・ツーリズム・ジャパン(明戸眞弓美)
 はじめに
 1 観光という産業
 2 日本が海洋観光立国するには
 3 日本の海洋観光ビジョン
 4 観光開発の落とし穴
 5 海の観光資源とレクリエーション
 6 日本の海の楽しませ方
 7 日本の海の楽しみ方

第3章 海外にみる海洋観光と都市の賑わい(庄司邦昭)
 1 都市にとって、河川は重要な要素
 2 ベルリーン(ドイツ)
 3 サンナゼール(フランス)
 4 サンマロ(フランス)
 5 ベルゲン(ノルウェー)
 6 リスボン(ポルトガル)

おわりに

付録
 海洋環境問題に関する声明
 観光立国推進基本法
 海洋基本法
 海洋白書2006
 エコツーリズム推進法
 水辺活用ハンドブック

前書きなど

はじめに

 少子高齢化や格差社会などと不安要因が多い最近の日本ですが、暗い話はさておき、今までのライフスタイルから抜本的な転換をした、明るい持続可能社会、平和な、こころ美しい日本の再生を考えてみました。そのオルタナティブは海洋観光立国です。
 150年前のペリー提督が著した『日本遠征記』に、「川べりの肥沃な土地には絵のような美しい村がたくさん集まり、豊かな田園が広がっていた。ボートで川を進んでいくと、外国人の姿を一目見ようと岸にやってきた大勢の住民たちに出会った。身振り手振りで歓迎の意を表して挨拶し、すすんで水やおいしい桃をくれる住民もいた」と書かれていますが、江戸時代末期の日本は素晴らしかったようです。
 また、明治11年7月、イギリスの女流探検家イサベラ・バードは東京から北海道までの長旅を進める途中の山形県で、「険しい尾根を越えて非常に美しい風変りな盆地に入った。ピラミッド型の杉の林で覆われ、その麓に金山の町がある。ロマンチックな雰囲気の場所である。私は2、3日ここに滞在したいと思う……」と記し、当時の日本の山村の美しさに感激しています。その後金山町は商業ベースには乗らない、観光のまちとして地道な発展をしているので有名です。
 敗戦後の昭和22年6月発行の『黒船談叢』に出淵勝次は、「日本は戦争に負けた。確かに徹底的に負けた。そして国民は今や塗炭の苦しみを嘗めている。然らば日本はこのまま足腰が立たなくなるだろうかと云うに自分はそうは思わない。否、封建的な政治機構を一蹴し、軍備をかなぐり捨てたところの民主日本なるものは文化国家として再び世界に重きをなす時が存外速やかに来るだろうと思う。日本のなすべき仕事は多々ある。第一に胸に浮かぶものは観光事業である。観光事業なるものは今や立派な近代的インダストリーであって、世界各国何れも力を注ぎつつあるところである」と書いています。
 話は世界に飛びますが、カリブ海の国々はGDPの35〜75%が観光産業で、小学生のうちから観光教育を行っています。このように観光が国の中心産業になっている国は少なくありません。かつての大国であったヨーロッパを見ると、イタリア、オランダ、スペイン、ポルトガルなども、現在は観光大国といえます。
 日本で早くから観光学科を創設している立教大学のホームページには、「観光は巨大な産業です。現在世界では年間7億人を超える人びとが観光客として流動し、その金額は膨大なものになっている」と記しています。
 現在来日する外国人観光客は年間600万人で、世界一多いフランスの10分の1にしかすぎません。日本の気候や緯度から考えると、カリブ海並みの観光客が来ない方がおかしいのかもしれません。従来、日本は科学技術大国・輸出立国を唱え、莫大な量の外国資源を購入し、付加価値の高い物に加工し、世界へ輸出し、国民を豊かにしてきました。
 現在、中国やインドのような大国が工業化に邁進し、急激な成長を遂げています。そのため、従来日本が行ってきたような、世界の15%もの外国資源を購入することは、もはや不可能になっています。日本がかつて欧米に追いつけ・追い越せと、付加価値の小さい農林水産業を捨てて、工業化に驀進してきたことと同じことを、現在の中国やインドが推進しています。このことは、日本から工業が移転・衰退するだけではなく、それらの国々の工業化はその国の農産品輸出の規制に繋がります。外国食品に依存度を高めてきた日本の輸入が難しくなり、食糧危機が生まれることもそう遠いことではありません。
 同じように中世のオランダやスペインが世界を制覇する中で、徐々に新興国に道を明け渡さねばならなくなったことが連想されます。日本は戦後、アメリカに追随する中で、世界第2位にまで上りつめてきました。しかし、最近のアジアの成長は驚くものになっています。日本の成功体験はもはや過去のものになりかかっています。これからは攻守交替する中で、新しい時代を切り開かなくてはなりません。
 ところで、日本の国土面積は世界の60番目ですが、日本の海は200海里時代の今日、排他的経済水域を加えると世界で6番目の面積を有する大国です。そこで、新しい国づくりのコンセプトは日本を取り巻く海に求めることが重要になってきています。
 この日本の周囲に広がる海を新しい観光資源として展開することで、日本は海洋観光立国に転ずることができるのです。東や南に広がる太平洋で、かつてのバスコ・ダ・ガマの大航海時代を体験する観光ツアーやコロンブスのアメリカ大陸発見のイメージ体験冒険旅行やタイタニック号の北大西洋航海旅行を体験したり、マリンスポーツを楽しんだり、一日中海浜のホテルでゆったりと過ごしたりすることを、世界中の人びとに提供することが可能になるのです。
 できることならば、中国・インドをはじめとするアジアや世界から年間数千万人の方に来訪していただき、日本中を1〜2ヶ月かけて、ゆったりと自転車などで旅していただき、日本の素晴らしい自然と寺院などの文化遺産を楽しむとともに、毎晩温泉に入っていただきたいと考えます。日本に来れば本当の健康が取り戻せる 癒しの国 になることができるならば、世界からリピーターが増えるでしょう。
 そのためには、日本は農林水産業を大切にして100%の自給国に転じるとともに、農薬などを使わない有機農業をベースにした食の安全が保証されたエコライフの国にすることが望まれます。幸い、キューバの事例があります。ソビエトの支援を頼りに政治経済を行ってきた国が、支援がなくなり、有機農業に転じざるを得なくなり、10年かけて成功した例です。
 江戸時代の日本は、世界でもまれな循環型ライフスタイルを達成していたことが知られています。今また日本人の勤勉さと知恵があれば、この循環型ライフスタイルをできないことはありません。近年の大量生産・大量消費・大量廃棄に乗ったライフスタイルから脱却できないはずはありません。今後、数十年、数百年かけて江戸時代を参考にエコライフ国家を創り上げるのです。途方もない息の長い夢かもしれませんが、基本的に、国内の資源をベースにした循環型ライフスタイルをみんなで模索しましょう!
 そのためには、海とのつき合い方を抜本的に創意工夫し、創造しなければなりません。
 持続可能社会、明るい平和な、こころ美しい日本再生を楽しみましょう!

著者プロフィール

中瀬 勝義(ナカセ カツヨシ)

1945年生まれ。東京都立両国高校卒業。東海大学海洋学部、法政大学法学部卒業、慶応大学経済学部に学ぶ。海洋環境調査会社で日本各地の海洋環境調査に参加。現在は江東自転車エコライフの会、江東エコリーダーの会、江東区の水辺に親しむ会、海辺つくり研究会、荒川をよくする会KOTO、隅田川クリーンキャンペーン実行委員会、日本海洋学会・海洋環境問題委員会、環境アセスメント学会等に参加。技術士(応用理学、建設、環境)、公害防止主任管理者、環境カウンセラー。著書:『屋上菜園エコライフ』(七つ森書館)

上記内容は本書刊行時のものです。

明戸 眞弓美(アケド マユミ)

1970年生まれ。大阪市、青森県十和田市育ち。岩手大学人文社会科学部人文社会科学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士課程言語情報科学専攻修了、國學院大學大学院経済学研究科博士課程後期経済学専攻2007年3月満期修了。博士論文は「中世ヨーロッパの海洋ネットワーク」のテーマで執筆中。実践として、NPO法人地域交流センターにて「日本ぐるっと一周・海交流」「安全・安心まちづくりワークショップ」「都心の水辺探訪クラブ」等事務局を担当。水辺から考えるまちづくりと格闘中。

上記内容は本書刊行時のものです。

庄司 邦昭(ショウジ クニアキ)

1948年生れ。神奈川県立湘南高校卒業。横浜国立大学工学部造船工学科卒業。東京大学大学院工学系研究科船舶工学専門課程博士課程修了。東京商船大学商船学部講師を経て、東京海洋大学海洋工学部教授。1987年12月〜1989年3月、アレキサンダーフォンフンボルト奨学金により在外研究員としてベルリーン船舶海洋工学研究所へ滞在。日本航海学会(会長)、船の科学館(理事)、NPO法人江東区の水辺に親しむ会(理事)、NPO法人本所深川(理事)、小型船舶検査機構(評議員)。著書に『ショージ先生の船の博物館めぐり(国内編)』『同(海外編)』(春風社)『航海造船学 二訂版』(海文堂)

上記内容は本書刊行時のものです。
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