発行:解放出版社
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四六判 239ページ 並製
定価:1,700円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7592-6117-2 C0036
奥付の初版発行年月:2007年10月
書店発売日:2007年10月10日
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家庭や学校、職場で身近な人が精神科の病にかかった時、どのように接し、語りかければいいか。
精神科医として豊富な経験をもつ著者がサポートのツボを具体的に示し、医療関係者など精神障害者を支えるお仕事の人たちにも役立つ急所をときあかす。
精神科にかかっている人の処遇の歴史や現在の環境(国や社会のあり方)についてもわかりやすく解説。
好評の前著に最新情報を盛り込み全面改訂。
目次
第一章 病む人の苦しみ
1 健康は良いこと、では病気は悪いこと?
健康ブーム/定義できない「健康」
2 治療のために入院していてもつらい
3 養生することのつらさ
病人の辛抱は当然か/「糖尿病は私の病気」
第二章 精神病者であることのつらさ
1 Aさんの場合
声が聞こえる/「どうせ俺は病院帰り」
2 Bさんの場合
仕事に集中できずぼんやり/「うつ病になった自分は駄目人間」
3 感じたことは、本人にとって事実なのです
4 周囲は、なかなか病状を理解してくれません
5 「おかしい」と云われてしまう
6 正しいことと思って主張しても、相手にされない(無効化=差別)
7 「怖い」とか「危険な人」と思われます
8 精神科病院への入院は、とても重い体験です
9 「家族に迷惑をかける存在」であること
10 社会の中に参加しづらい
第三章 こころ病む人を支えるコツ
1 精神科の治療の流れ
やすらぎを目指す/こころのゆとりを取り戻す/社会参加への挑戦
2 「受容する」ということ
「しんどさ」は一人一人異なる/受容するとは?/話を聴くときの身体の位置/聴き方のコツ−復唱/批判や忠告などで、話の腰を折らない/「しんどさ」を分かり、分かったことを伝える
3 「心配」をキーワードに
4 支える側の心構え−五つのゆとり
落ちついていること/時間のゆとり
5 指摘することの大切さ
6 「具合悪さへの気づき」と「支えること」
こころの悩みに気づく/心配の材料、「身体化」と「一般化」/休息の提案
7 療養生活を支える
「ゆとりをとりもどす」段階
8 慢性状態とリハビリテーションを支える
「社会参加への挑戦」の段階/パートナーとしての関わり/インフォームド・チョイス/「指導」「教育」という思い違い/判断力を伸ばす/再発の原因の研究/失敗が許される役割を提供/支える人たちの連携/障害を持つ人も共に暮らせる文化づくり
第四章 病者とつきあうコツ
1 家族の役割、家族への期待
患者・障害者のこころを支える/患者の闘病生活を支える/病気や障害にともなう生活上の困難を支える/家族会への参加を
2 医療の適切な利用の仕方
精神科専門家の意見を聞く/薬の使用/入院治療
3 社会参加への援助のあり方
「社会復帰」ではなく「社会参加」を/社会参加への援助/励ましやねぎらいの言葉を/ゆっくり話を聞こう/より楽になる工夫をサポート/社会参加を進める四つの視点
第五章 日本の精神医療の歴史と現状
1 欧米の簡単な歴史
無拘束主義から大収容主義へ/開放処遇、地域精神医療へ
2 日本の精神障害者処遇の歴史
江戸時代まで/法による隔離と差別/高度経済成長下に精神病床急増/収容主義の時代/人権と福祉のゆくえ
3 「精神病者は危険な存在である」という偏見
保護から排除へ/保安処分制度とは/心神喪失者等医療観察法の制定
4 日本の精神医療の現状
病院改革運動/宇都宮病院事件の発覚/多い病床/長い入院期間/貧しい設備・少ない人員/入院患者の人権擁護/生活療法という病院での組織的管理/許容的態度は甘やかしか/「失敗を重ねて成長」を応援/地域生活するための練習ができない病院/職員の役割/治療共同体とは
第六章 精神障害者排除の構造
1 偏見、差別に基づく排除
精神障害者施設に対する建設反対運動/さまざまな偏見
2 遺伝病への偏見
遺伝、血筋へのこだわり/遺伝の研究/自信を持って子どもを産もう
3 「無能力な人間」としての排除
4 「厄介者」に対する排除
5 法による排除
市民生活からの排除/労働からの排除/家庭生活からの排除/欠格条項の見直し/残っている絶対欠格条項/差別を禁止する法律の制定を
第七章 おわりに
1 精神障害者を取り巻く状況の変化
障害者基本法の成立/保健所数が半減/精神保健福祉法の成立/障害者プランの策定/精神保健法の改正/支援費制度/退院促進支援事業/まやかしの退院促進施設/危険な心神喪失者等医療観察法/「改革」への動き/日本の医療・福祉制度のあり方/障害者自立支援法の問題点
2 メンタルヘルスへの関心を
自殺者三万人の背景/辛い思いに寄りそう/支えるネットワーク
前書きなど
この本の第一版が発刊されて十年が経ちました。この間に、精神医療の世界にも大きな変化が見られるようになりました。十年前のまえがきは、以下のような文章で始めていました。
「わたしは、こんな所へ来るような人間ではありません」。わたしが働いている診察室へ連れてこられた一人の患者さんの叫びです。
「だれも、こんな所へは来たくありませんよね」。なかなか通院したがらないわが娘のことを相談するために訪ねてきた、お母さんの声です。
だれでも病気にはなりたくありません。そんな病気の中でも、精神病は、最もなりたくない病気の一つなのでしょう。
わたしが「こんな所」といわれる場所で働くようになって、そろそろ二十五年が過ぎます。
あれから十年余。政府や地方自治体が、「こころの病」についての啓発活動に力を入れ、保健所を中心に、子育て教室、精神保健相談や訪問活動、保健所でのデイケア、家族教室、お年寄りへの機能訓練教室、さらには共同作業所や作業所などの支援や講演会などが、取り組まれてきました。
学校にはスクールカウンセラーが配置されて、不登校その他への取り組みがなされています。産業現場でのメンタルヘルスケアも、労働衛生の主要課題となってきています。地震などの災害の被災者には、「こころのケア」チームが派遣されることも当たり前のことになってきました。
こころを病む人については、その人の人格や性格、生まれ持った資質などに原因を求めるのではなく、その人をとりまく状況の厳しさなどに目を向ける考え方がひろまってきています。うつ病については、「こころの風邪」といういい方が気軽に使われています。
医療についてみれば、精神科や心療内科を標榜する診療所が飛躍的に増えてきて、こころの問題を抱えた人が、受診しやすくなり、利用者もどんどん増えてきています。
しかし、残念ながら、さまざまな問題が解消してきたとはいえません。自殺による死亡者数は、八年連続三万人以上を示してきています。二〇〇五年の死因統計では、三大疾病といわれる癌、脳卒中、心臓病がすべて減少していますが、自殺だけは増加しています。殊に中高年男性の死亡原因の一番は自殺なのです。自殺の多くは、こころの病による病死だといってもさし支えないでしょう。勤労者の自殺が労働災害であると認定される数も増えています。しかし、その自殺者の半数以上が、自殺を遂行する前に精神科医療を受けてはおられません。
死を選ばざるを得ないほど、悩み苦しんでいる人々が、相談できる場がないのでしょうか? いや、その人をとりまく人々、ご家族や同僚、仲間などが、気づいていなかったのか、気づいてもどのように対応してよいか分からないままに、経過してしまったことが多いと思います。
厚生労働省の報告によれば、日本人が一生の間にうつ病にかかる割合は、十六パーセント以上となっています。七人に一人がかかる病気なのです。だれでもかかっておかしくない「こころの風邪」といわれるのももっともでしょう。統合失調症(精神分裂病)は、ずっと以前から先進諸国では有病率が一パーセント、百人に一人の割合でかかる病気なのです。
強迫神経症(ものごとにとらわれて、いくら確認しても気がしまなくなるような病気)や、パニック障害(突然不安に襲われて、どうしようもなくなることがある病気)、社会恐怖症(不安のために、他人と話をしたり、会ったりすることができなくなる病気)なども、決して少なくない病気です。
適応障害といわれる、ストレスの強い状況にある人が、睡眠や食欲が傷害されるなどの身体の不調や、不安やイライラなどのこころの不安定さに苦しむ状態も、非常に増加している病気ですが、周囲の親しい人たちが、その人のしんどさに耳を傾け、しんどさを分かってあげることができるだけで、気持ちが安らぎやすいのです。
癌や難病をはじめ、さまざまな身体の病気に苦しむ人たちも、その苦しみを分かろうとする、身近な人たちからの適切な関わり(看病)があると、こころがなごみます。
厚労省が、日本中の精神科病院入院患者の中の七万二千人が、社会的な受け皿がないために、病気は治っているが退院できないでいるので、十年間にその人たちを「地域移行」してもらうと発表して五年が経ちました。しかし、退院できた人はそんなに増えていません。そして、全国の精神科病床数は決して減ってはいません。OECD諸国の十倍以上の病床を抱えている日本の特徴に変化が見られていないのです。ついに厚労省は、精神科病院がその病棟を「退院促進施設」に改修するなら補助金を出すと言い出しました。「地域移行」ではないが、その施設に移れば入院費を取らなくなるので、医療費は減る、というのです。社会には出せないという状況が改革されていないからです。
医療費の削減の政策によって、新たに入院する人が入る急性期治療病棟は、平均三カ月しか入院できません。だらだらと入院を続けるよりはよいでしょうが、早期退院のあまり、入院前のその人をとりまく状況や、関わる人たちへの具体的な働きかけもないまま、退院といわれてしまうと、受け入れる側のご家族はとまどわざるをえません。それでも、救急医療を引き受ける病院が少ないために、入院を求める人が集中して、いっそう入院期間は短くなります。
精神障害者といわれる人たちを支える、適切な支援の輪の必要性が、いっそう高まっているのです。
このように、こころを病む人に関わる人たちの、正しい知識に基づく、適切な対応がいっそう求められていると考えて、改訂版に取り組むことにしました。
版元から一言
メンタルヘルス時代を照らす決定版
著者プロフィール
田原 明夫(タハラ アキオ)
1967年、京都大学医学部卒業。
1969年から10年間、大阪府高槻市の光愛病院に勤務。大阪市内に家族会などが設立した夜間診療所所長や大阪精神病差別と闘う共闘会議議長などを兼務。
京大医学部精神科、京大病院デイケア診療部に勤務しながら、京大医療技術短期大学看護学科の非常勤講師。この間に数カ所の保健所で精神保健嘱託医を兼務。
1992年より新設された京都市立病院精神神経科部長。1995年から京都市立看護短期大学教授を兼務。
2000年より定年退職まで、京都大学医療技術短期大学作業療法学科教授。また、15年間京都府精神保健審査会委員を兼務。
あらゆる職種や家族・当事者にも開かれた学会である日本病院・地域精神医学会の理事を1972年より、副理事長を1988年より、2001年より監事を務める。2005年より日本集団精神療法学会理事長。
2004年より田原メンタルクリニック院長、京都市メンタルヘルス担当嘱託医。
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