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英国の社会的養護当事者の人権擁護運動史
意見表明による劣等処遇克服への歩み
原書: CARE LESS LIVES: The Story of the Rights Movement df Young People in Care
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年9月
- 書店発売日
- 2014年9月15日
- 登録日
- 2014年9月12日
- 最終更新日
- 2014年9月12日
紹介
英国における社会的養護当事者の権利運動の物語。本書を通じて、社会的養護施策・実践の改革改善に当事者の評価が必須なこと、そのことを通じて当事者が人権回復を実現する運動を行い得ていることに気づかされる。日本の実践者にもエンパワメントを与える内容。
目次
第一章 なぜこのような人並でない暮らしをしなければならないのか?
第二章 リーズ市アド‐リブとは何か:底辺からの声(意見表明)
第一節 リーズ市アド‐リブの誕生
第二節 リーズ市アド‐リブの集会
第三節 ものごとを変えていくアド-リブ
第四節 アド-リブの若者による意見表明
第五節 蓄積されるアド‐リブ・グループの活動
第三章 「養護児童の声」:社会的養護で暮らす若者の声を社会に拡げる
第一節 「養護児童の声」:その起源
第二節 『養護児童の声:社会的養護で暮らす若者の意見表明』
第三節 「養護児童の声」プロジェクト:社会的養護で暮らす子どもの声(意見表明)を伝え拡げる
第四節 私たちが変革したいこと
第四章 「養護児童の声」運動は成功したか?
第一節 若者の「養護児童の声」運動への関わり
第二節 『「養護児童の声」ニュース』の発行
第三節 「養護児童の声」アクション・グループ
第四節 成果を上げる「養護児童の声」運動
第五章 全国社会的養護児童協会(NAYPIC):初期の歳月・1978~1983年
第一節 全国社会的養護児童協会:その起源
第二節 「衣服購入証制度を廃止せよ!」キャンペーン
第三節「社会的養護で暮らす」会議
第四節 Gizza Say?:ケース再審査会と社会的養護で暮らす若者
第五節 Gizza Say?:ポリシー(施策)策定上の意味合い
第六節 進みゆくNAYPIC
第六章 みんなで担う社会的養護(Sharing Care)
第一節 NAYPICが下院へ証拠を提出
第七章 『非白人として社会的養護で暮らす』
第一節 社会的養護で暮らす非白人であること――問題の脈絡
第八章 社会的養護で暮らす若者の願いと感情
第一節 若者の声に耳を傾ける
第二節 誰に閲覧を許可するか? 個人ファイルと社会的養護で暮らす若者
第三節 『決して一人ではない』:社会的養護を離れる若者に関する調査
第四節 社会的養護で暮らす子ども・若者のためのガイドブック
第五節 コントロールかケアか? 社会的養護で暮らす若い女性の生理用品
第六節 入所施設型社会的養護再検討委員会への証言提出
第七節 NAYPICがその目的をかなえる
第九章 NAYPIC内のもめごと(騒乱)
第一節 NAYPICという組織の複雑な取り決め・構成
第十章 「意見表明'89」会議――新たなはじまりとなるか?
第一節 NAYPIC、子どもの権利、1989年児童法
第二節 「意見表明'89」会議――新たなはじまり?
第十一章 混乱の余波
第一節 インケア・カンパニー(ICC)の政府補助金申請
第二節 社会的養護における虐待(濫用)
第三節 NAYPICの政府補助金復活への圧力
第四節 NAYPICの終焉
第十二章 ナショナル・ヴォイス(A National Voice)
第一節 深さを測ってみる――実現可能性の調査
第二節 ナショナル・ヴォイス――新たな始まり
第三節 ナショナル・ヴォイスの復活(活動再開)
第四節 様々なキャンペーン事業
第五節 前進するナショナル・ヴォイス:2006~2011年
第十三章 衣服購入証制度廃止からゴミ捨て用ビニール袋禁止まで
第一節 社会的養護で暮らす若者の権利回復運動
第二節 ある若者の社会的養護体験史
第三節 社会的養護における懲罰と濫用・虐待
第四節 社会的養護における劣等処遇的な暮らし?(Care Less Lives?)
注記と参考文献
訳者解説――社会的養護で暮らす子ども・若者にとって夢がもてる国・もてない国
第一節 訳者と「養護児童の声」運動の出遭い
第二節 英国社会的養護当事者の意見表明(=人権回復)運動という視座と促進要因
第三節 社会的養護の子ども・若者議会(CICC)とケアリーヴァ支援国家施策への結実
第四節 社会的養護途上国・日本の現実を照射する歴史記述
第五節 むすび
前書きなど
訳者解説――社会的養護で暮らす子ども・若者にとって夢がもてる国・もてない国
本書はMike Stein, Care Less Lives : The story of the rights movement of young people in care, published by Catch 22 and A National Voice, 2011の全訳である。訳者とほぼ同時代に、同じ研究テーマ(社会的養護当事者による意見表明運動)の原点となっている英国における施策・実践・運動に、その発端から今日まで直接間接に関わり、参与観察してきたスタイン教授の研究成果の集大成が本書である。原著の広告を全英ケアリーヴァ支援ネットワークであるNCAS(National Care Advisory Service)のウェブサイトで初めて見た時、そのタイトルと副題の絶妙なつけ方に訳者は感動させられるとともに、読まないうちからほぼその内容を想像できたし、原著翻訳は定年まぢかの訳者に与えられた最後の仕事となるとのインスピレーションを感じさせられた。果たして内容はその通りであったし、訳者のこの分野における我が国への貢献として最後のものになるとの感慨を抱きつつ、加齢に基づく不活性に抗いつつ、何とか訳了がかなった。
一読していただければ内容は単純明快、社会的養護施策・実践の改革改善に当事者の意見表明(=サービス評価)が必須なこと、そのことを通じて社会的養護当事者が人権回復を実現する運動を行い得ていること、どの国でも大人の都合・既得権益によりパワーレスな子ども・若者の生が劣等なもの(care less lives: 救貧法史の用語ではless eligible lives)として構築されてきている社会制度(=社会的養護)のあり方、が納得できるであろう。さらに、似たような政治体制の英日両国におけるこうした社会的養護当事者に対する市民・政治家・専門家・関係者の目線の違い、子どもの人権に対する大人の理解度の違い、社会行政に潜む前近代的な要素の規模・程度の違い、などにも気づかされるであろう。一言でいえば、日本で何ゆえに大規模入所施設偏重の社会的養護が半世紀以上も連綿として続いているか理解するためのいくつかの鍵となる原理原則・行為・現象が、本書における英国の社会的養護当事者の闘い(人権回復運動)を通じて、読者には反射として垣間見ることができるであろう。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。