障碍児心理学ものがたり 小さな秩序系の記録II
中野 尚彦:著
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 360ページ 上製
定価:3,200円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-3059-4 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年09月 書店発売日:2009年09月29日
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紹介

障碍児の学習に寄り添いながら、ときに立ち止まり、試行錯誤し、また進む。そうしたかかわりの中で著者が得た確定共有とは。心理学の知見を交え、自らの秩序をもとに逞しく生きるこどもたちの姿を詳細に描く第II巻では、障碍児教育のあり方をも考えさせる。

目次


 献辞
 まえがき
 こどもたちの名前

第1章 心理学寓論
 第1節 チンパンジー列伝
  知恵試験の元祖たち
  ヴィキィ
  数行動
  ドナルドの妹
  可愛い我が子
  手話で話す
  プラスチック言語
  文を作る
  野生の仲間たち
  現代の名士たち
 第2節 野生児
  人憑きの人並み
  人憑き
  人憑かぬ人
 第3節 2人の盲聾児
  始まり
  形
  位置
  点字
  言葉
  指文字
  音声
  確定共有
  そしてもう1人
  何が起きたか
 第4節 行動の系譜
  鯨と卵
  心理学的行動図
  救急・緩衝・革生
  下位尺度値
  開放と自律
  呪術と工作
  信号系の系譜
  行動図の味わい
 第5節 秩序系
  ロレンツのバクテリア
  ボール探し
  コップの姉妹
  発振器
  眼球運動
  αの目βの目
 第6節 確定域
  オタマジャクシ人間
  音素の獲得
  意味素の獲得
  文の獲得
  お日さま飛んでる
  温かいの水
  タイピストの不自由
  あかちゃんの計画
 第7節 現象と知識
  生物学者と教育学者
  ホヤの話
  高いところに登る
 第8節 見える世界
  還元視野
  良き形態
  色の見え方
  図地反転
  隠し絵
  ケルンを拾う
  ヒヨコのお尻
  弁別素性
  蛙の目
 第9節 こどもの科学
  月の大きさ
  こどもの科学
  網膜像
  像の大きさ
  恒常現象
  心の値
  月の布置
 第10節 運動と感覚
  極楽トンボ
  見ること、すること
  針の目処
  レモントンカツ
  左利き障碍
  脳間通信
  背面鏡
 第11節 構造化
  お母さん仮説
  予兆
  コップ警報
  拠り所保険
  4番打者
  碁石とクレヨン
  小さな反逆者
  衝立の陰

第2章 人と暮らして
 第1節 小さな秩序系
  バルコニーのこども
  手のひらのネズミ
  後ろの父さん
  風の人
  2人だけの秘密
  届かない心
  ブルーベリーヨーグルト
  時を計る人
  映像の中
  集中治療室の人
  話す声、聞く耳
  ロバとオウム
  紐を回して
  やる気の形
  閾下の射撃手
  視線の形
第2節 秩序系の反転
  着席の系譜
  頭をはたく
  幸せな人
  隠し絵の護り
  猫たちの護り
  仕草の系譜
  墨字文盲
  目と生活
  疑似盲人
  誰が選ぶか
  人の壁
  大混乱
  筏と汽船
 第3節 秩序系の系譜
  始まりの一歩
  奥の細道
  転がるコップ
  落とし扉
  透明なコップ
  コップの底の穴
  世界征服
  順路
  自信と信頼

第3章 食べる心
 第1節 美食の系譜
  おせんべいしか食べない
  一夏のカレーライス
  教室のラーメン
  納豆無用
  鯛も鮃も
  偏食百景
  真夏のすき焼き
  おせんべいだけでいいでせう
 第2節 満腹の系譜
  食べれば育つ
  クッキー缶の広さ
  大宴会
  選び取った麦チョコ
  誇りとおせんべい
  餓死するディスカス
 第3節 食卓の系譜
  両手協奏曲
  ピアニストの手
  回転お膳
  ぺたんこのスプーン
  スプーン回し
  手品の世界
  美しい誤解
  手酌の味
  スイカの滓
  余りの餃子

第4章 それぞれの世界
 第1節 辺境の秩序
  唾を吐く人
  たろちゃん働く
  やっていけます
  それぞれの仕事
  独り言
  乾電池を食べる
  砂を食べる
  籠をかぶって
  爪を噛む人
  狐の尻尾
 第2節 数行動
  4つ半分こ
  数行動の胚芽
  雛壇のチョコ
  天才のかけ算
  数える九九
  どこまで行っても
  階段の発明
  お口は1つ
  自前信号
  21より大きい19
  2と5と7
 第3節 確定域
  スリッパの世界
  確定域の飛躍
  無用の暗算
  千も万も
  数の実感
  ニッチ
  ソファと畳
  満杯の5
  3までの数
  1と2とたくさん
  歩く世界
  50音表
  留まる世界
 第4節 隠された心
  秘密の美学
  流れる光
  風が咬む
  自動車の秘密
  やっちゃん探索する
  禁じられた遊び

 あとがき
 参考文献
 こども一覧
 本書を構成する用語――参照先一覧

 ■巻末資料
  障碍児心理学ものがたり 小さな秩序系の記録 I 目次

前書きなど

   まえがき

 木苺を摘んだ記憶がある。藪の中に1つ見つければ、たいてい次が見つかり、次々に見つけて、実をつける枝を知る。枝は集まって幹となり、幹は根となって土につながる。土につながって、ここに木苺の実が1つある。するとこの林のどこかに、きっとまた他の木苺がある。だから、1粒の木苺の記憶は、木苺のある林の思い出となる。
 こどもたちについて、1つの出来事は次々に他の出来事に連なり、それらをつなぐ枝や幹や林についても思いが巡る。そうやって書きとめた第I巻の補注が第II巻になる予定だったから、簡略なものになるのだと思っていた。しかし巡り歩けば林は広い。彷徨ううちに頁数がかさんでしまったが、どこを削れば良いのか私にはわからない。思い出とはそういうものかもしれない。
 木苺の記憶は大分県の由布院で、私は小学生になっていなかったかもしれない。年上の子に連れられて、ヒジュウダイの林に行く。連れて行ってもらえたのは、林のほんの入り口にすぎなかったのだと思う。由布は盆地だ。私の家からはぐるっと360度、山々が見渡せる。その山腹を登るのだと思っていたが、そうではない。ヒジュウダイは、すり鉢の底に置かれたオムレツのような台地だ。平成17年、私はテレビドラマのタイトル画面で初めてそれを知った。そしてこの文を書きながら地図を開いて、ヒジュウダイは日出生台と書くのだと知った。

著者プロフィール

中野 尚彦(ナカノ ナオヒコ)

1940年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程心理学専修課程退学。東京都心身障害者福祉センター視覚障害科、群馬大学教育学部教授を経て、同大学名誉教授。明和学園短期大学教授。

上記内容は本書刊行時のものです。
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