その実態とメカニズムの解明天下りの研究
中野 雅至:著
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 536ページ 並製
定価:2,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-3046-4 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年09月 書店発売日:2009年09月29日
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紹介

官民業癒着の象徴として語られる天下りは、学問の対象としてきちんと研究されてこなかった。本書はさまざまな関係者の証言やあらゆる種類の資料を渉猟し、多角的かつ包括的に天下りを分析した画期的なものである。各省歴代事務次官・局長の天下り先リスト掲載。

目次


序章 すれ違う天下りの議論
 天下りの曖昧さ
 本書の意図と構成

第一章 「天下り」とは何か
 1 多様な文脈で使われている「天下り」という用語
 2 天下りの一般的な定義
 3 官民問わずに存在する天下り
 4 本書が用いる天下りの定義

第二章 公務員等の天下りの現状
 第一節 公務員等の天下りを分析する際に使用するデータについて
  1 国家公務員の天下りに関するデータ
  2 地方公務員及び非営利法人役職員の天下りに関するデータ
  3 天下りデータ分析の視点
 第二節 国家公務員の天下りについて
  1 各省別の天下りの現状
  2 時系列の公的データの重要性について
  3 国家公務員の在職中の出向について
 第三節 地方公務員の天下りについて
  1 国家公務員と異なる枠組み
  2 都道府県・政令指定都市とその他市町村の違い
  3 都道府県及び政令指定都市の天下り状況
  4 その他の市町村の天下り状況
  5 地方公共団体・地方公務員の天下りの特徴
 第四節 非営利法人の天下りについて

第三章 国家公務員の天下りの現状分析とその特徴
  1 各省ごとの天下りの特徴
  2 各省を超えた、国家公務員に共通した天下りの特徴
  3 国家公務員の天下り分析に使用するデータについて
 第一節 各省ごとに異なる天下り先の種類・豊富さ等
  1 財務省(=旧大蔵省)
  2 外務省
  3 経済産業省(=旧通商産業省)
  4 旧運輸省
  5 旧建設省
  6 旧郵政省
  7 旧自治省
  8 警察庁
  9 防衛庁(省)
  10 旧厚生省
  11 旧労働省
  12 旧文部省
  13 農林水産省
  14 環境省(=旧環境庁)・旧総務庁・旧経済企画庁・旧国土庁各省・各省事務次官・局長の再就職先一覧
 第二節 「天下る人」からわかる天下りの特徴
  1 退職時の役職と天下りの関係
  2 複数回にわたる再就職(=わたり)のパターン
  3 時系列で見た天下り先の変化
 第三節 天下り先の特徴
  1 意外と少ない営利法人への再就職
  2 大多数を占める非営利法人への再就職
  3 営利法人・非営利法人以外の天下り先
  4 退職時の役職と天下り先の格・ポストの関係
  5 2回目以降の再就職先の特徴

第四章 天下りを成立させる要素
  1 中央官庁側の内部要因
  2 天下りを受け入れる側(営利法人・非営利法人)の要因
  3 天下る側と受け入れ側の関係
 第一節 天下り促進的に機能した中央官庁側の内部要因
  1 天下りを促進した5つの矛盾した内部要因
  2 各省の利益共同体化
  3 平等主義の進展
  4 競争的人事の制限
  5 首尾一貫していた差別化しようとする動き
  6 競争主義的要素の導入による組織活性化と公務員のモラルの維持向上
  7 競争促進的要素と平等主義的要素が混じり合った結果
 第二節 拡大をたどった営利法人・非営利法人の天下り受け入れ動向
  1 営利法人の動向と天下りの関連について
  (1)戦後日本の経済発展の主因について
  (2)政府介入の態様
  (3)業種別に見る政府介入の程度の違い
  (4)民間企業への天下りの不安定性
  2 非営利法人の動向と天下りの関連について
  (1)中央官庁と特殊法人の支配-被支配関係
  (2)特殊法人に対する改革プラン
  (3)天下り抑止という観点からの特殊法人改革
  3 中央官庁と公益法人の関係
  (1)公益法人に対する改革
  (2)天下り抑止という観点からの公益法人改革
 第三節 天下る側と受け入れる側との4つの関係
  1 マーケットベースでの人材の受け入れ
  2 情報入手・コネクション形成目的の天下り
  3 天下り先への利益供与・許認可・権限などを背景とした押しつけ
  4 支配-被支配関係

第五章 天下りが引き起こすさまざまな問題と天下りを規制する枠組み
 第一節 天下りが引き起こすさまざまな問題
  1 政官業癒着がもたらす害悪
  2 政官業癒着を類型化する時の基準
  3 政官業癒着の類型と天下りの位置づけ
  4 天下りと政官業癒着の関係
 第二節 天下りを規制する枠組み
  1 営利法人への再就職規制に関する現行法の基本的な考え方
  2 国家公務員法103条の条文と運用の乖離
  3 人事院規則14-4による天下り承認条件の実質的緩和
  4 人事院規則14-4の全面的改正
  5 人事院の天下り承認件数の推移
  6 非営利法人への天下りに対する対応
  7 政治の天下り抑止力

第六章 天下りの実態
 1 天下りのプロセスについての論点
 2 求人がもたらされるまでのプロセスの実際
 3 求職者と求人者のマッチングの実際
 4 天下り斡旋に当たっての各省の方針
 5 OB人事と現役人事との一体性の程度について

第七章 天下りに対する国民の反応と天下りの多面性
 第一節 天下りに対する国民の反応
  1 天下りが批判される理由
  2 社会経済と連動する天下りに対する評価
 第二節 天下りの多面性
  1 制度の利点に着目する視点
  2 公務員の能力に着目する視点
  3 職業選択の自由を剥奪しているという視点
  4 リストラの代償という視点
  5 天下り先の労働条件の厚遇度に着目する視点
  6 特殊法人などの非営利法人の長の能力評価が適切に行われていないという視点
  7 「官民問わず天下りは存在している」という視点

第八章 戦前における天下りの動向
 第一節 天下りの淵源――戦前と戦後の連続性を認めるか否か
  1 天下りの淵源を戦時統制経済に求める先行研究
  2 戦前における天下りを分析するための枠組み
 第二節 戦前に天下りは存在したか
  1 戦前の官僚制度の任用
  2 戦前の官僚の服務規律
  3 身分保障制度
  4 早期退職勧奨
  5 年次主義
  6 退職後の身の処し方
  7 政治状況
 第三節 天下り先の発達
  1 戦前の主な天下り先
  2 頻繁に見られる特殊会社への天下り
 第四節 GHQの天下りに対する認識度合い
  1 GHQによる再就職規制の意図と天下りの関係
  2 GHQによる官僚制度改革の動向
  (1)官僚制度改革に対するGHQの問題意識
  (2)エスマンとマキの日本官僚制に対する認識
  (3)エスマンとマキが見た日本の官僚制の非民主性
  (4)フーバー顧問団の官僚制度改革
  (5)フーバー自身の日本官僚制に対する認識
  3 フーバー案をめぐる日本政府の対応
  (1)商工省と運輸省の反応
  (2)各省意見提出後の情勢
  (3)天下り規制が骨抜きにされる過程に関する考察
  (4)天下り規制の骨抜き策に関する考察

終章 天下りの変遷
 第一節 戦前・戦後を通じて見られる天下りの特徴
  1 天下りに関する戦前・戦後の連続性
  2 「状況依存」と「根絶できない粘着性」という天下りの特質
  3 天下りのサイクル
  4 戦前・戦後に共通する「人事の停滞」という要因
  5 非営利法人中心の天下り先
  6 天下りを抑止する監視システムの難しさ
 第二節 「戦前の天下り」と「戦後の天下り」の違い
  1 異なる外部要因
  2 天下りの規模・規則性・成果主義・天下り先の豊富さ
  3 天下りの弊害
  4 「第二政府」の形成まで促した戦後の天下り

  参考文献
  あとがき

前書きなど


序章

(…前略…)

 本書の意図と構成

 本書は「なぜ、天下りという現象は複雑で曖昧模糊としているのか」ということを探求することを通じて、日本の官僚制度の病弊と言われてきた天下りの全容を明らかにすることを主な目的としたものであるが、上記の課題を探求するために、大きく3つに分けて考察を展開していくこととする。
 第一部(第一章・第二章・第三章)では、国家公務員の再就職に関する状況など、天下りに関する基本的事項を考察することにする。ここでは、「天下る主体」や「天下る先」を含めた天下りの一般的定義、公務員の再就職の現状などを明確にする。
 第一章では、天下りの定義を考えてみることにする。広辞苑・政治学事典などから、天下りの定義を調査し、いつくらいから天下りという言葉が定着してきたのか、どのように定義が変遷してきたのかなどを考察する。続く第二章では、政府・地方自治体・特殊法人などの非営利法人の天下りを考察する。そして第三章では、国家公務員に絞って、各省ごと、天下り先の種類、天下り先のポストなどを分析する。
 第二部(第四章・第五章・第六章・第七章)では、天下りが生じる原因を追求するとともに、過去の研究や新聞・雑誌記事あるいは、天下りをはじめとした公務員問題を主題とした政府主催の研究会の議事録などから、天下りのプロセスを考察することとする。
 具体的には、第四章では、天下りが発生する要因が複数あることを検証した上で、天下りが幅広い角度から分析できる現象であること、さまざまな要素が絡み合ってできあがっている複合的な現象であることを考察・実証することとする。冒頭で述べたように、天下りの定義が曖昧で、なおかつ、実態が不明確な要因の1つに、天下りがさまざまな観点から分析できる現象だということがある。一般的にメディアの論調では「政官業癒着」「高級官僚の特権」といったことに焦点が当てられるが、天下りは中央官庁の労務管理に深く関連した問題でもある。
 続く第五章では、天下りが引き起こすさまざまな問題を観察することで、天下りが複雑で広範囲にわたる問題であることを示すとともに、天下りが引き起こすさまざまな問題を制御するために、どのような規制が行われてきたのかについても考察することとする。
 第六章では、中央官庁などが個々の公務員にどのように再就職先を斡旋するのかを具体的に考察していくことととする。斡旋の実態はほとんどブラックボックスと化しており、現実に何が起こっているのかが明確になっていない。そんな不明確さが天下りの曖昧さに拍車をかけている。
 第七章では、国民の天下りに対する反応を見るとともに、天下りは規制対象という側面だけでなく、公務員の職業選択の自由などさまざまな側面から考察されうる複雑な現象であることを示す。
 最後の第三部(第八章と終章)では、天下りも政治経済・社会情勢の大きな変化の中で、その性質を変化させてきたという仮説を実証することとする。天下りは経済社会の状況に関係なく永遠に同じ形態で続いていくような独立性を持ったものではない。時代に応じてその姿を変えていく。それゆえに本質も見えにくくなる。
 具体的には、第八章では、戦前にも天下りは存在したのかどうかを検証することにする。果たして天下りは戦後に特殊な現象なのだろうか。戦前においても天下りは一般化していたのだろうか。続く終章では、戦前と戦後の天下りを比較考察することで、天下りの性質がどのように変化してきたのかを跡づけ、天下りが従属性の強い「弱い現象」である一方で、簡単には根絶できない「強い生命力」を持ったものであることを示すこととしたい。

著者プロフィール

中野 雅至(ナカノ マサシ)

兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科准教授。1964年、奈良県生まれ。同志社大学文学部英文学科卒業、The School of Public Policy, The University of Michigan修了(公共政策修士)、新潟大学大学院現代社会文化研究科(博士後期課程)修了(経済学博士)。大和郡山市役所勤務ののち、旧労働省入省(国家公務員 I 種試験行政職)。厚生省生活衛生局指導課課長補佐(法令担当)、新潟県総合政策部情報政策課長、厚生労働省大臣官房国際課課長補佐(ILO条約担当総括)を経て、公募により現職。2007年12月まで官房長官主宰の「官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会」委員、2008年からは国家公務員制度改革推進本部顧問会議ワーキンググループ委員を務める。主な著書に、『はめられた公務員』『高学歴ノーリターン』(以上、光文社)、『間違いだらけの公務員制度改革』(日本経済新聞社)、『公務員クビ!論』(朝日新書)など多数。

上記内容は本書刊行時のものです。
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