虫のフリ見て我がフリ直せ
養老 孟司:著, 河野 和男:著
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 232ページ 上製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-3045-7 C0045
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年09月 書店発売日:2009年09月25日
※送料は無料です。
FAXによるご注文は、原則としてお受けしておりません。
学校・官公庁などのでの御用でネットショッピングが利用できない場合、メールか電話にてご相談ください。

※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカードがご利用いただけます。
この投稿にタグはありません。
タグは版元ドットコム事務局で編集することがあります。
あらかじめご了承下さい。


このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

わずか数ミリのゾウムシから10センチをこえる大型甲虫まで、虫たちは、狭い地域に限定して生息したり、国境を越え広大な地域に分布したり、さまざまな自然環境のなかで生き抜いている。声高には何も発言しない虫の暮らしは、私たちに何を語りかけるのか。

目次

第 I 部 虫の目で世界を眺めて
 人はなぜ虫を集めるのか
 「種」や「属」は存在するのか
 進化論者たち
 発生遺伝子と遺伝率
 種の分布と分化の関係性

○コラム
 個体発生と系統発生――クワガタムシの大顎のパターンによる属の記述
 高位分類群とホックス遺伝子
 内部選択説
 バベルの図書館
 進化は末広がりではなく先細り
 ネオダーウィニズム
 工業暗化

第II部 生き物たちのつどう社会
 人為的な生態系
 文化と地形
 「お国のため」と「愛国心」
 日本人と森
 世界と日本――大気、海洋資源、森林
 進化と進歩
 生物は遺伝子の「乗り物」なのか?
 生物学は情報学だ

○コラム
 愛国心か「お国のため」か
 ダーウィンの図
 似ているということの異端児――並行進化

 対談のあとで 河野和男

前書きなど


 対談のあとで(河野和男)

 養老孟司さんといえば、超ベストセラー『バカの壁』で代表される“偏見や思い込みにとらわれずに柔軟な思考でもって物事を見つめ対処せよ”といった極めて根本的なメッセージをていねいな論理とやさしい言葉で、あらゆる類の人々にあらゆる類のメディアを通じて語りかけている人という受けとめ方が一般的であろう。このことの意義深さを重々理解した上で、私にとっての養老さんは、1991年出版の講座『進化』(東京大学出版会)を苦労して編集し、その全7巻中の白眉の一つ「個体発生と系統発生」を担当した進化生物学者、そして1996年出版のもう二人の著名な虫屋、奥本大三郎氏と池田清彦氏との鼎談『三人寄れば虫の知恵』(洋泉社/2001年、新潮文庫)で縦横無尽の発言をしている筋金入り虫屋とのイメージが今でも強い。私自身にとって1990年代は長年進めてきた熱帯作物キャッサバの育種が仕上げの段階に差しかかった時期で、目の前の品種のできあがり具合とその普及の進み具合が最大の関心事といった日々であった。その小進化を扱う育種家の世界からより大きな生物そのものの大進化の世界へ思考を拡大させるきっかけとなったものの一つがこの講座『進化』であった。また長年の熱帯生活で集めた甲虫標本が相当な量となり、何かまとまった論文、できれば学説のようなものを出せるようにしたいという願望が生じてきた時期でもあったが、その頃に読んだ『三人寄れば虫の知恵』はいつかこのような人たちとこのような話をしてみたいという望みも持たせてくれたことを思い出す。
 養老さんとの対談はこの私のイメージと望みに沿った形で進み、好みと思考パターンが初めから一致している仲良し子供会的な話し合い(日本では結果的にこのパターンが極めて多い)ではなかったのは当然として、またもう一方の極端である思い込みと見解の表示様式に初めから全く共通点のないすれ違いの意見交換(日本で声を大きくしてのディベートとされるものはこのパターンで終わるものが多い)でももちろんなく、知的緊張感がバランスよく保たれた議論の時間だったと思う。そんな中で、養老さんの発言にハッとさせられたことが、すぐその場でハッとしたことと時間がたってからハッとしたことを含めて少なくとも三度あった。
 まずその場でハッとさせられたことは“「新しい種を作るんだ」などと言っている大学院生がいたら、「そんなアホなことを」と言ってしまってはいけない。「そんならやってみな!」と言ってやるべきだ”という発言である。養老さんは若い学生に対する苦言もいろいろおっしゃるが、やはりかなりレベルの高い学生も相手にしてこられたのだろう。「そんなアホなことをやるな」と言ってしまうのは年長者のオジさん化の現れであるが、一方で「そんなに言うのならやってみな」と言えるだけの研究環境を、雲をも凌がんという心意気の学生に提供できる場が日本にいかほどあるのかということも考えてしまう。
 その場でもハッさせられたが、その後いろいろ考えてゆくにつれてさらに考えさせられたのは、私のエピジェネティクスについての知ったかぶりの発言についての養老さんの“あんまり言わないでくださいよ。それ以上言うと今度は仏教の世界に入ってしまうから”との答えである。発生過程での形態形成はエピジェネティクス的であり、遺伝子還元的であるよりは、あらゆる要素の相互作用が基本であるとするのは良いとして、あまりにこれにこだわり、すべては複雑怪奇の霧の中だとしてしまうと科学の要素還元的な部分を否定してしまうだけでなく、どうせすべてはわからないのだからという宗教的立場に行ってしまう危険性があるという意味である。アメリカのキリスト教保守派はこの過程で早々と科学に見切りをつけてしまう単純素朴な例であろう。

(…後略…)

著者プロフィール

養老 孟司(ヨウロウ タケシ)

1937年、鎌倉市生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ入る。95年同医学部教授を退官し、東京大学名誉教授。著書に『からだの見方』(筑摩書房、サントリー学芸賞)、『唯脳論』(ちくま学芸文庫)、『バカの壁』(新潮新書、毎日出版文化賞)など、専門の解剖学だけでなく、社会時評なども手がける。最近は『正義で地球は救えない』『ほんとうの環境問題』(ともに共著、新潮社)など環境問題へのコミットメントも多い。昆虫に関する著書に『私の脳はなぜ虫が好きか?』『養老孟司のデジタル昆虫図鑑』(ともに日経BP社)、『三人よれば虫の知恵』(共著、新潮文庫)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

河野 和男(カワノ カズオ)

1941年、大阪府生まれ。北海道大学大学院農学研究科博士課程修了。73年国際熱帯農業研究センター(CIAT:コロンビア)キャッサバ育種室長として着任し、変異の大きな巨大な育種材料集団をつくりあげ、83年タイ移転。CIATのアジアキャッサバプログラムを設立し、アジア各国で50以上の新品種が採用され、栽培面積は170万ha以上に及ぶ。98年に帰国し、神戸大学農学部教授を経て退官。カブトムシなど甲虫類の世界的コレクターとしても知られる。著書に『自殺する種子:遺伝資源は誰のもの?』『カブトムシと進化論:博物学の復権』(ともに新思索社)、『キリスト教・組織宗教批判500年の系譜』(明石書店)など。

上記内容は本書刊行時のものです。
※送料は無料です。
FAXによるご注文は、原則としてお受けしておりません。
学校・官公庁などのでの御用でネットショッピングが利用できない場合、メールか電話にてご相談ください。

※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカードがご利用いただけます。


コメントとトラックバック »

まだコメントとトラックバックはありません

TrackBack URI : http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-7503-3045-7.html/trackback

コメントをどうぞ

お寄せいただいたコメントは、当サイトに掲載されますが、内容によっては削除させていただく場合がございます。なお、コメントへの回答は原則としていたしておりません。当サイト・著者・各版元へのお問い合わせの際は、お問い合わせフォームをご利用下さい

Twitterでのつぶやかれ

▲ページの上端へ