シリーズ・叢書「世界歴史叢書」の本一覧
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 584ページ 上製
定価:6,500円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-3040-2 C0322
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年08月 書店発売日:2009年08月31日
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現在、世界有数の親日国、バングラデシュを、東ベンガル地域の歴史という視点から仏教が支配した紀元前5世紀より物語る。本書は、イスラム国ではあるが日本人との親近性を肌で感じ、この地の来し方・歩みを著者が愛情を持って丹念に記述した初の通史である。
目次
はじめに
第 I 部 古代ベンガルから東パキスタンまで
第1章 ベンガルの風土と歴史
1 「川の国」ベンガルの風土
2 古代ベンガル
3 ベンガル人王朝の成立
第2章 イスラム諸王朝とムガール帝国(一三〜一八世紀)
1 イスラム諸王朝とベンガル
2 ムガール帝国とベンガル
第3章 イギリス植民地時代(一七〜二〇世紀)
1 ヨーロッパ諸国のインド進出
2 太守ミル・カシムの反イギリス闘争
3 イギリス植民地体制の発展とベンガルの没落
4 ベンガル・ルネサンスとセポイの反乱
5 ベンガル分割とモスレムの反応
第4章 インド・パキスタン分割までの軌跡(一九一四〜四七年)
1 第一次世界大戦と独立運動の進展
2 インド分割への分岐点
3 第二次世界大戦とベンガル
4 「パキスタン構想」とインド分割
第5章 東パキスタン時代(一九四七〜七一年)
1 インド分割直後の東パキスタン
2 新国家のスタート
3 軍事政権下の東パキスタン
4 独立戦争とバングラデシュの独立
第II部 バングラデシュ現代史
第6章 ムジブル・ラーマン政権の実績と問題点(一九七一〜七五年)
1 新国家建設の開始
2 「第二の革命」と民主主義の否定
3 対外関係
4 クーデターとその背景
5 ムジブル・ラーマンの評価
第7章 ジアウル・ラーマン政権の成果と課題(一九七六〜八一年)
1 ムシュタク政権と連続クーデター
2 ジアウル・ラーマンの大統領就任と改革の推進
3 対外関係の展開
4 ジアの暗殺とジア政権の評価
第8章 エルシャド政権の成果と問題点(一九八二〜九〇年)
1 エルシャドの登場
2 正統性をめぐる野党との攻防
3 民政移管
4 エルシャド政権下の経済
5 対外政策と成果
6 エルシャドの退陣
第9章 第一次BNP政権の実績と課題(一九九一〜九六年)
1 BNPの勝利と議院内閣制への移行
2 内政の混乱
3 ロヒンガー難民問題
4 経済政策と実績
5 対外関係
6 政争の激化とBNP政権の評価
第10章 アワミ連盟政権の実績と問題点(一九九六〜二〇〇一年)
1 アワミ連盟政権の成立
2 発足直後の目覚ましい成果
3 ムジブ暗殺事件関係者の裁判とパキスタンとの軋轢
4 経済開発の実績と諸問題
5 対外関係
6 政治的対立の激化とアワミ連盟政権の評価
7 選挙管理内閣
第11章 第二次BNP政権の成果と問題(二〇〇一〜〇六年)
1 第二次BNP政権の成立
2 経済政策と改革の進展
3 悪化する治安問題と特殊部隊の導入
4 対外関係
5 第二次BNP政権の評価
第12章 バングラデシュ民主政治の改革と新たなスタート(二〇〇六年〜)
1 バングラデシュ民主政治の問題点
2 選挙管理内閣と軍の介入による改革
3 総選挙の実施と選挙結果の評価
あとがき
参考文献
写真提供・出典一覧
年表
索引
地図
前書きなど
はじめに
(…前略…)
3 バングラデシュ史をどこから書き始めるか
本書では現バングラデシュとインドの西ベンガル州を合わせた地域をベンガルと呼ぶ。これは通常「ベンガル(旧ベンガル州)」といわれる地域にほぼ相当するが、現在のバングラデシュとは、アッサム地方から編入されたシレット県が含まれている点で異なる。ただし、アッサムがベンガルから独立したのは一八七六年であり、それ以前はベンガルの一部であった。本書で扱うベンガルは、一九〇五年のベンガル分割令以降、東西ベンガルのそれぞれの動きが記録されるまでは東西未分化のベンガルである。
次に、バングラデシュの歴史を取り上げる上で問題になるのは、いつまで遡ったらよいか、あるいは、いつの時代から書き始めたらよいかという点である。バングラデシュ人やパキスタン人の書いた歴史書の中には、最も古いものは七一二年のムハマド・ビン・カシム率いるサラセン軍がパキスタンの一部であるシンド地方を一時的に支配した時を起点とするものがある。次に古いのは、九八六年のアフガニスタンのガズニー朝がインド北西部を支配した時点からのものがある。次いで、一一八六年樹立したゴール朝が、ガンジス河流域を中心にアフガンからベンガル湾まで支配した時点や、また、一二〇六年、奴隷出身のクトブディーン・アイバクがデリーを都とするイスラム王朝を開始した時点をとる歴史書などがある。これらの説に共通する考えは、インド亜大陸のモスレムが一九四七年にパキスタンとして独立するに当たって強調された「二民族論」に立ち、モスレムとヒンドゥーは、宗教、言語、文化、食習慣などの違いからあくまで別の国家、民族であるとして、「モスレムの国家」に視点を絞る見方である。しかし、「二民族論」は、一九四七年のインド・パキスタン分割の際に、亜大陸に住む約一億人のモスレムのうち、三五%ものモスレムがインドに残ってインド国民となったことだけ見ても難がある。
現在のバングラデシュには、九〇%弱のモスレムとともに、一〇%前後のヒンドゥーと、合わせて数%の仏教徒、キリスト教徒などが住んでいる。彼らがバングラデシュ国民としてこの地に住んでいるのは、それぞれの歴史があるからである。バングラデシュないし東ベンガルの歴史を見るには、モスレムがこの地に住み始めた時点からではなく、この地に人間が住み始め、記録を残し始めた時点から見た方が、バングラデシュ人のアイデンティティを探り、より多くの「歴史の教訓」を学ぶことができるであろう。
(…中略…)
さらに、バングラデシュでは一九七一年以降の現代史については、二大政党であるアワミ連盟とBNPの確執による政治的介入のため学問的議論が阻まれ、政権交代のたびに独立の経緯に関する歴史教科書が書き換えられたりしてきた。バングラデシュ人の国民的アイデンティティ確立のためには、このような事態は一日も早く克服される必要がある。
日本を含む国際社会は、バングラデシュが一日も早く経済開発を軌道に乗せ、国内の諸問題を解決しながら、国際社会から期待される役割を果たして欲しいと望んでいる。バングラデシュ人がこのような国造りを進めるため自らのアイデンティティを確立する上で、祖先が仏教徒であった時代を含むこれまでの歴史を正面から捉え、国家と国民性を考察することは有益と思われる。以上の理由から本書では、文献に残された歴史の上で初めてベンガル地方を実効的に支配した、ナンダ朝の前後から書き始めることとしたい。
著者プロフィール
堀口 松城(ホリグチ マツシロ)
1943年、千葉県生まれ。東京大学教養学部卒業後外務省に入省。エール大学大学院修了(M.A.)後、韓国大使館、中国大使館、OECD代表部勤務などを経て、外務省海洋法本部海洋課長、法務省入国管理局入国審査課長。その後、ミャンマー大使館公使、国連代表部公使、エジンバラ総領事を歴任し、1988年から2000年まで駐レバノン特命全権大使、2003年から2006年まで駐バングラデシュ特命全権大使。2007年より国立大学法人東京学芸大学監事。早稲田大学大学院客員教授。
著書『レバノンの歴史——フェニキア人の時代からハリーリ暗殺まで』明石書店
主な論文「深海底鉱区重複問題の解決」ジュリストNo.902 有斐閣
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