子どもソーシャルワークとアドボカシー実践
堀 正嗣:著, 栄留 里美:著
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 232ページ 上製
定価:2,500円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-3033-4 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年08月 書店発売日:2009年08月20日
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紹介

イギリスにおける子どもアドボカシーの理論と実践に学び、子どもソーシャルワークにおけるアドボカシー実践の意義と可能性を明らかにする。子どもをひとりの人間として尊重し、子どもの意見や主体性を尊重する立場から権利を擁護するための考え方と方策を示す。

目次


まえがき 本書で使用する用語について

第1章 アドボカシーの本質としてのセルフアドボカシー
 はじめに
 1 アドボカシーの意味と起源
 2 パターナリズムから権利主体へ
 3 自立生活運動とアドボカシーの意味の変化
 4 アドボカシーの2つの形態
 5 アドボカシーの本質としてのセルフアドボカシー
 6 セルフアドボカシーとエンパワメント

第2章 ソーシャルワークにおけるアドボカシー実践の意味
 はじめに
 1 ソーシャルワークとアドボカシー
 (1)ソーシャルワークとアドボカシーの関係
 (2)日本のソーシャルワークにおけるアドボカシーの位置
 2 利用者認識・権利認識とアドボカシー
 (1)利用者認識・権利認識の重要性
 (2)利用者認識・権利認識とアドボカシーの関係
 3 ソーシャルワークにおけるエンパワメントとアドボカシー
 4 アドボカシーの構成
 (1)アドボカシーの担い手
 (2)アドボカシーの対象
 (3)アドボカシーの構成とソーシャルワークの位置
 5 アドボケイトの役割と困難
 6 アドボカシーの原則

第3章 子どもアドボカシーの独自性
 はじめに
 1 子どもアドボカシーの必要性
 2 アドボカシーの原理としての子どもの権利認識
 (1)子どもの権利条約における子ども観の変革
 (2)参加権の重要性
 (3)参加権と保護・付与の権利の関係性
 3 子どもアドボカシー実践の展開
 (1)カナダオンタリオ州子ども家庭アドボカシー事務所の実践
 (2)兵庫県川西市子どもの人権オンブズパーソンの実践
 4 子どもアドボカシーの基準
 (1)子どもアドボカシーの提供するもの
 (2)子どもアドボカシーの基準

第4章 イギリスにおける子ども虐待対応と子どもアドボケイト
 はじめに
 1 イギリスにおける児童福祉のあゆみと子どもの意見表明及び参加の発展——虐待対応を中心に
 2 イギリスの子ども虐待対応の体制
 3 イギリスにおける子ども虐待への対応方法
 4 イギリスの子ども虐待対応における原則と子どもアドボケイト

第5章 イギリスにおける子どもアドボケイトの実際
 はじめに
 1 児童保護会議におけるアドボケイトの役割
 (1)児童保護会議とは
 (2)児童保護会議におけるアドボケイトの役割
 2 児童保護会議におけるアドボケイトの実際
 (1)スージー(10歳)とニッキー(12歳)の事例
 (2)ザック(12歳)の事例
 3 ファミリー・グループ・カンファレンス(FGC)におけるアドボケイトの役割
 (1)FGCとは
 (2)FGCの内容と意義
 (3)FGCにおけるアドボケイトの役割
 (4)FGCにおけるアドボケイトの実際
 4 独立アドボケイトの必要性と意義
 (1)ソーシャルワーカーとアドボケイト
 (2)家族とアドボケイト

第6章 日本の子ども虐待ソーシャルワークの現状と課題
 はじめに
 1 日本における子どもソーシャルワークとは
 2 日本の子ども虐待対応のあゆみ
 3 日本における子ども虐待の定義
 4 子ども虐待とソーシャルワークの課題

第7章 日本の子どもソーシャルワークにおける参加の位置づけとアドボケイトの可能性
 はじめに
 1 子ども虐待対応における法律——参加の位置づけとその問題点
 2 子ども虐待対応のガイドライン——参加の位置づけとその問題点
 (1)『児童相談所運営指針』をめぐって
 (2)『子ども虐待対応の手引き』をめぐって
 (3)『市町村家庭援助指針』をめぐって
 3 子ども虐待対応実践と子ども参加
 4 子どもソーシャルワークにおけるアドボケイトの可能性
 (1)子ども参加のための基盤
 (2)独立した専門アドボケイトを実現するために

第8章 子どもアドボカシーサービス提供のための全国基準〔イギリス保健省〕

第9章 児童福祉における抵抗のための力としての専門的アドボカシー〔ジェーン・ダリンプル〕
 要約
 1 アドボカシー——声と抵抗
 2 現代化された社会サービス
 3 アドボカシーを提供する
 4 子ども時代と参加
 5 専門アドボケイト
 6 アドボカシーの構築
 7 議論
 8 結論

 あとがき

前書きなど


まえがき

 本書はイギリスにおける子どもアドボカシーの理論と実践に学んで、子どもソーシャルワークにおけるアドボカシー実践の意義と可能性を明らかにすることを目的としている。また今年(2009年)は子どもの権利条約が国連で採択されて20周年にあたる。子どもの権利条約は「権利行使主体としての子ども」という子ども観に立って、意見表明権を核とした参加権を保障することを求めている。子どもたちの声を聴き、子どもとおとなが共に生きる社会とはどのような社会なのか、そのような社会に向けておとなは何をすればいいのか、そのことも本書を通して考えたい。
 子どもアドボカシーとは子どもの権利を擁護することである。それも保護や救済という観点からそうするのではなく、子どもをかけがえのないひとりの人間として尊重し、子どもの意見や主体性を尊重するという立場から権利を擁護するのである。その実践は、子どもが自分で発言できるように支援することから、代弁すること、子どもの権利のために闘うことなど広い内容を持っている。

(…中略…)

 本書の構成は次のようになっている。
 第1章では、アドボカシーとは何か、そしてその本質は何かを探求する。第2章では、ソーシャルワークにおけるアドボカシーの意義、原則、機能、困難を考察する。第3章では、子どものアドボカシーの独自性を子どもの権利と関連づけて論じる。
 第4章ではイギリスにおける子どもの意見表明及び参加の歴史を概観し、虐待ソーシャルワークの中でのアドボケイトの位置を明らかにする。第5章はイギリスの子ども保護会議とファミリーグループカンファレンスにおいてどのようにアドボケイトが活用されているかを紹介しその意義を考察する。
 第6章では、日本に目を転じて、日本の子ども虐待ソーシャルワークの現状と課題を明らかにする。それを受けて、第7章では日本の子どもソーシャルワークでの子ども参加をめぐる問題点を検証し、子どもアドボケイト導入に向けて提言を行う。
 第8章は、イギリス保健省の「子どもアドボカシーサービス提供のための全国基準」(Department of Health〔2002〕National Standards for the Provision of Children's Advocacy Services, London, Department of Health.)を翻訳・掲載した。ここには子ども参加を保障するアドボカシー実践の具体的なあり方が詳細に記されている。徹底して子どもをひとりの人間として尊重しようとするその姿勢に感動を覚える。第9章は、イギリスにおける子どもアドボケイト研究の中心であるジェーン・ダリンプル(西イングランド大学・詳細は第9章本文参照)の代表的な研究論文「児童福祉における抵抗のための力としての専門的アドボカシー」(Darlymple, J.〔2003〕‘Professional Advocacy as a Force for Resistance in Child Welfare’, British Journal of Social Work, 33(8), pp.1043-1062.)を翻訳・収録した。この論文では、子どもアドボカシーをめぐる根源的な問題と、それを踏まえてのアドボカシー実践の原理が、「アダルティズム」(子ども差別)への抵抗という観点との関わりの中で論じられている。
 以上のように、本書を通読すれば、アドボカシーの全体像、現代のソーシャルワークにおけるアドボカシーの位置、子どもソーシャルワークにおけるアドボカシーの独自性、児童虐待対応におけるアドボカシーの制度と実践のあり方、日本の児童福祉における子どもアドボケイト導入の可能性、そして子どもアドボカシーをめぐる根源的問題が理解できるように構成されている。
 本書が、ささやかであっても、子どもの権利擁護への関心を高め、さまざまな現場で苦闘している人たちの支えとなることができれば望外の喜びである。

(…後略…)

著者プロフィール

堀 正嗣(ホリ マサツグ)

関西大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得満期退学
熊本学園大学社会福祉学部教授・社団法人子ども情報研究センター副所長
〈主な著書〉
『子どもの権利擁護と子育ち支援』『障害児教育のパラダイム転換』『障害児教育とノーマライゼーション』(以上、単著・明石書店)

上記内容は本書刊行時のものです。

栄留 里美(エイドメ サトミ)

熊本学園大学社会福祉学部卒業
大阪市立大学大学院創造都市研究科修士課程修了
社会福祉士・元市町村児童虐待相談員
〈主な論文〉
・「市町村における児童虐待防止対応の課題——子どもの人権の視点に立った家族援助とは」(2009)大阪市立大学人権問題研究センター『人権問題研究』9号(通巻31号)
・「性別違和をもつ子どもへの周囲の『サポート』とは」(2005)子ども情報研究センター『はらっぱ』277号

上記内容は本書刊行時のものです。
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