動物からヒト、人間まで「弱肉強食」論
小原 秀雄:著
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 180ページ 上製
定価:2,200円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-3026-6 C0045
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年07月 書店発売日:2009年08月04日
※送料は無料です。
FAXによるご注文は、原則としてお受けしておりません。
学校・官公庁などのでの御用でネットショッピングが利用できない場合、メールか電話にてご相談ください。

※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカードがご利用いただけます。
この投稿にタグはありません。
タグは版元ドットコム事務局で編集することがあります。
あらかじめご了承下さい。


このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

ジャングルの掟、生物界の法則とされる弱肉強食、自らも哺乳類に属するヒト(人間)は、いったいどれほど弱肉強食の法則に支配されているのか。私たちヒト(人間)は、単なる禽獣に等しいのか、それとも動物とはちがう互助の精神を身につけた特別な存在なのか。

目次


 はじめに——人間の社会も弱肉強食か
第一章 生物の行動を決めるもの
第二章 弱い動物は一方的に食われているか
第三章 強いものだけが繁栄するか
第四章 弱肉強食の種々相
第五章 進化の果てヒトは現代人にたどりついた
第六章 人間のなかの弱肉強食性
第七章 岐路に立つ現代人
 あとがき

前書きなど


 はじめに——人間の社会も弱肉強食か


(…前略…)

いつ食われるかわからない時代

 いまや老人や社会的弱者だけでなく、だれにとっても先が読めない時代になった。重い病気にかかったときに受け入れてくれる病院や施設はどこか、費用がどれくらいかかるか、まるっきりわからなくなってきた。最近では、救急病院が受け入れを拒否するケースが多発している。経営者は技術開発や商品開発しか頭になく、同業他社より強く大きくなることしか考えていない。彼らの多くは利益を社員に還元しようとしないで、社員を交換のきく部品のように考えはじめている。労働条件のほうも経営者に有利になるばかりで、雇用形態や労働時間の問題に見られるように、労働者に不利になるよう改定されてきた。金融危機に直面した企業がとった非正規雇用者の解雇などは、それを如実にあらわしている。
 アメリカではCEO(最高経営責任者)の年収が、ふつうの労働者の四三一倍(二〇〇四年)にもなっているという。イギリスやフランスやドイツでも、白人の若者の労働者が貧困層に転落していると伝えられている。ここに等しく見られるのは、突出した強者=勝者と、一般化した弱者=敗者という図式である。途上国でもまた、大勢の弱者が抑圧されている。
 文明社会が行きつくのは、動物と同じ弱肉強食の世界だろうか。競争原理が支配する社会では、少数の人間しか勝者になることはできない。全員が大金持ちになることは望めないのだ。社会全体がある程度豊かだとしても、格差が広く行き渡れば、人々の間に鬱屈した不満が高まらざるをえない。世界はどこまでいっても少数の勝者と、行き場のない不満をかかえた大多数の敗者で構成されるのだろうか。
 一九世紀の進化論と、二〇世紀の「エソロジー」(行動学)や「エコロジー」(生態学)という学問が明らかにしたのは、人間と動物の行動に強いつながりがあるということだった。確かに人間は動物から進化した生物だ。しかし、人間と動物の間には、つながりがありながら明確な断絶があることも明らかである。人間は、ヒトという、動物の一種だ。分類学では、脊椎動物門哺乳綱霊長目ヒトニザル上科ヒト科となる。ヒトは進化の結果、動物としてのひとつの系統の性質を遺伝子のなかに保っている。ヒトは、生活形を同じくする個体からなる「ヒトの種社会」が基層となり、自らがつくりだした道具によって組織化された「人間社会」で暮らす。進化史で受け継がれてきたヒトと動物と共通項は、この二重の階層的あり方を介してあらわれる。本書のテーマである弱肉強食も、そのひとつである。人間の社会が弱肉強食かどうかを考えるためには、まず動物たちの社会の仕組みを見て、人間社会と比較することが必要だ。
 本書では、私が五〇年以上かかわってきた動物学とその考え方である「進化生物学」をもとに、現代の論理的人間観として人間を生物の種の「ヒト」(本書では、生き物の種として人間をとらえる場合、仮名書きの「ヒト」と表記する)としてとらえ、人間の社会と文化と、そのなかでの「弱肉強食」について考えることにしたい。

著者プロフィール

小原 秀雄(オバラ ヒデオ)

1927年、東京生まれ。国立科学博物館助手を経て、1969年、女子栄養大学教授(生物学)に。1998年、定年退職。同大学名誉教授。専門領域は、哺乳類論(動物学)、人間学、環境科学(自然保護論)ほか。国際哺乳類学会、国際自然保護連合(IUCN)、世界自然保護基金日本委員会(WWF-J)等の国際関係役員、総理府動物保護審議会委員等を務め、現在、NPO法人野生生物保全論研究会会長、総合人間学会副会長、共生社会システム学会会長、日本環境会議代表理事、ヒトと動物の関係学会顧問、日本自然保護協会顧問など。世界野生生物基金(WWF-I)の保護功労賞(1982年)、国連環境計画(UNEP)のグローバル500賞(1988年)、毎日出版文化賞(1966年)、産経児童出版文化賞(2003年)など受賞歴多数。最近の著書に、『現代ホモ・サピエンスの変貌』(朝日新聞社、2000年)、『都市動物の逆襲』(東京書籍、2001年)、『ゾウの歩んできた道』(岩波書店、2002年)、『人類は絶滅を選択するのか』(明石書店、2005年)、『小原秀雄著作集』〈1〉〈2〉〈3〉〈4〉(明石書店、2006〜2007年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。
※送料は無料です。
FAXによるご注文は、原則としてお受けしておりません。
学校・官公庁などのでの御用でネットショッピングが利用できない場合、メールか電話にてご相談ください。

※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカードがご利用いただけます。


コメントとトラックバック »

まだコメントとトラックバックはありません

TrackBack URI : http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-7503-3026-6.html/trackback

コメントをどうぞ

お寄せいただいたコメントは、当サイトに掲載されますが、内容によっては削除させていただく場合がございます。なお、コメントへの回答は原則としていたしておりません。当サイト・著者・各版元へのお問い合わせの際は、お問い合わせフォームをご利用下さい

Twitterでのつぶやかれ

▲ページの上端へ