発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 344ページ 上製
定価:3,600円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-3017-4 C0030
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年07月 書店発売日:2009年07月22日
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世界的な金融危機が日本経済を直撃し、貧困問題が深刻さを増すなかで、租税や社会保障といった公助システムをどのように立て直してゆくべきかを「公共性」の観点から包括的かつ具体的に提言し、家族から協同組合に至る共助システムの構築の意義を説く。
目次
はじめに
第I章 公共性とは何か
第I節 公助・自助そして共助
1 公助・自助、二元システムの現状と課題
2 公助・自助における公共性
3 「公」「公共」「私」三元論における公共性の役割
第II節 公共哲学的な分析
1 公共哲学の発見
2 グローカル公共哲学
3 福祉の公共哲学
第III節 公共哲学の歴史
1 伝統的な公共哲学
2 19世紀・20世紀における公共哲学の展開
3 明治維新以降の日本における公共哲学の流れ
4 欧米における公共哲学への評価
5 戦後日本の革新的公共哲学
第II章 租税の機能と役割
第I節 財政における租税
1 三元論での「公=官=政府(中央・地方)」
2 政府の役割と財政の特質
3 財政の役割
4 税の役割と租税原則
5 財政による所得再分配機能
6 直間比率
7 間接税としての消費税の役割
8 日本の直間比率
第II節 租税の構造
1 包括的所得概念を理念とする所得税
2 所得税の課税単位
3 総合課税と累進性
4 所得税の税率構造の国際比較
5 「公助」としての租税の役割と課題
第III章 社会保障の機能と役割
第I節 社会保障の変遷
1 社会保障とは何か
2 社会保障制度の歴史的起源
3 近代社会における社会保障制度の発足
4 ベヴァリッジ報告
5 福祉国家の成立と社会保障
6 日本における社会保障の成立と展開
7 戦後日本の社会保障制度の発足
8 戦後日本の社会保障の確立——福祉元年
9 日本型福祉国家形成と危機の同時進行
10 福祉国家の限界
11 福祉国家から福祉社会へ
12 福祉社会の特徴
第II節 社会保障の役割
1 社会保障の概念——1995(平成7)年勧告
2 社会保障の構造
3 社会保障の原理
4 社会保障制度の給付形態別分類
5 社会保障の定義——ILO基準、OECD基準
6 所得再分配による公平性の確保
7 社会保障の機能
第III節 社会保障の財源
1 社会保障の財源の性格
2 社会保障の財源政策
3 財政方式と財源構成
4 財政方式の選択
5 社会保障制度において公費(租税)負担を行う根拠
6 社会保障目的税
第IV章 所得保障としての社会保険
第I節 生活保護
1 生活保護制度の成立
2 戦後日本経済と生活保護
3 生活保護の現状
4 生活保護制度の原理・原則
5 生活保護の経済効果
6 生活保護制度の改革
第II節 雇用保険
1 雇用保険の成立と改正
2 雇用保険の保険者と被保険者
3 失業等給付
4 雇用保険2事業
5 費用負担と収支
6 雇用保険の役割と課題
第III節 労災保険
1 労働者災害補償保険の成立と推移
2 労災保険の概要
3 労災認定基準
4 労災保険の現状と課題
第V章 所得保障としての公的年金
第I節 公的年金の経緯
1 公的年金制度の創設
2 国民年金制度の創設による国民皆年金の実現
3 賦課方式に傾斜したスライド制の導入
4 1985(昭和60)年改正による基礎年金の導入
5 1994(平成6)年改正による厚生年金・定額部分の支給開始年齢引き上げ
6 2000(平成12)年改正による厚生年金・報酬比例部分の支給年齢引き上げ
7 2004(平成16)年改正による持続可能な公的年金制度の検討
第II節 公的年金の現状
1 公的年金各制度の現状
2 年金財政の現状と見通し
3 現行年金制度の仕組み——国民年金・基礎年金
4 現行年金制度の仕組み——厚生年金
5 共済組合長期部門(年金)
6 企業年金制度の状況
7 企業年金等の移行
第III節 年金制度の課題と方向性
1 次回改正(2009年)の課題
2 第3号被保険者問題
3 公的年金制度の抜本的改革
4 疲弊する基礎年金(国民年金)制度
5 年金改革の方向性
第VI章 社会サービスとしての医療保障など
第I節 医療保障
1 医療保障制度の成立
2 戦後の医療保障制度の変遷
3 日本の医療保障制度の特徴
4 2006(平成18)年医療保険制度改革と今後の展望
5 医療保障制度の課題
6 医療構造改革の方向性
第II節 介護保険
1 介護保険成立以前の高齢者福祉政策
2 2000(平成12)年施行、介護保険法とその後の経過
3 2005(平成17)年介護保険制度改定
4 介護保険制度の推移と現状
5 介護保険制度の課題と方向性
第III節 児童手当
1 児童手当制度の発足と変遷
2 児童手当制度等の現状
3 少子化対策の課題
4 子育て支援の抜本的拡充
第VII章 共助システムの担い手
第I節 共同体の再構築
1 資本主義経済体制の成立と共同体の解体
2 全体社会の下位システムとしての家族と地域社会
3 新しい公共性の担い手としてのNPO
第II節 新たな中間集団としての協同組合
1 新しい社会的リスクへの対処
2 ロバート・オウエンの協同村
3 ロッチデール公正先駆者組合
4 協同組合の萌芽
5 日本の協同組合の歴史
6 ICA(国際協同組合同盟)の協同組合原則
7 ICAの構成と活動
8 第2次世界大戦後の生活協同組合
9 消費生活協同組合法(生協法)にもとづく生協
第III節 ILO(国際労働機関)・国連の協同組合政策
1 ILO「協同組合の振興に関する勧告」
2 ILO第193号「協同組合振興勧告2002」
3 協同組合の発展を支援する環境づくりをめざす国連ガイドライン
おわりに
あとがき
参考文献
前書きなど
はじめに
(…前略…)
「公」・「公共」・「私」の三元論を、私がこれまで活動してきた分野での言葉に置き換えると「公助」・「共助」・「自助」ということになる。したがって本書においては、まず第I章において、山際直司東京大学教授、桂木隆夫学習院大学教授などの「公共哲学」についての著書・論文を引用しつつ、三元論それぞれにおける「公共性」の果たす役割についての問題提起を行った。
続いて第II章から第VI章までは「公助」システムにおける「租税」と「社会保障」の機能と役割について記述した。とりわけ今日的課題として多くの国民が関心を寄せ、議論の対象となっている「社会保障制度」については、その歴史的変遷、役割、財源などを第III章で詳しく記述した。「社会保障制度」の詳細については、第IV章で「所得保障」としての生活保護、雇用保険、労災保険を取り上げ、第V章では同じく「所得保障」に属する「公的年金」問題の経過、現状、問題点、課題などについて述べ、次回改定への方向性を指摘した。また第VI章で「社会保障制度」のなかで「社会サービス」として分類される医療保険、介護保険、児童手当を取り上げ、他の制度同様、課題、方向性について論じた。
第VII章においては、今日まで世論の対象に十分になっていない「協同組合」の歴史的経過、国際的な組織の現状、日本における活動を紹介するとともに「共助」システムとしての「協同組合」の役割の重要性を提起し、新しい「公共性」の担い手としてNPO、NGO、ボランティア団体等の役割について記述した。
〈おわりに〉では序論で提起した「公共性」の理念にもとづく、「共助」システム構築の今日的重要性について再度問題提起し、課題解決に向けての研究と実践活動の呼びかけを行っている。
なお、「公共性」という用語は三元論における「公共」の基本理念であるが、本来「公」の領域においても重要な理念である。一方、利潤追求をめざす「私的経済活動」としての「私」の「市場原理」のなかで、「公共性」は本来的に生み出せないものだ。ハーバーマスは、市民社会を「非国家的・非経済的な結合関係」すなわち政府的「公」とは異なる「市民的公共性実現の場」と定義した。本書では、「政府(官)の公」と「人々(民)の公共性」は区別され、かつその相互作用が論じられる。
著者プロフィール
鷲尾 悦也(ワシオ エツヤ)
1938年 東京生まれ
1963年 東京大学経済学部卒業、同年八幡製鉄株式会社入社
1970年 新日鉄本社労働組合書記長に就任、労組専従となる
1978年 新日鉄労連書記長に就任
1990年 鉄鋼労連中央執行委員長に就任
1993年 日本労働組合総連合会(連合)事務局長に就任
1997年 連合会長に就任
2000年 全労済協会理事長に就任(現職)
2001年 全労済理事長に就任、以後労働者福祉共済事業に携わる
著書(いずれも共著)
『連合のすべて』エイデル研究所、1990年
『日本の境位を探る』四谷ラウンド、1995年
『今こそ前へ—大変革の時代を生き抜く知恵』法研、1998年
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