シリーズ・叢書「世界の教科書シリーズ26」の本一覧
発行:明石書店 この版元の本一覧
B5判 368ページ 並製
定価:4,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-3013-6 C0322
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年09月 書店発売日:2009年09月03日
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2000年よりの教育改革で新設された教育課程「歴史と社会」の人民教育出版社版の日本語訳。従来の歴史教育とは違い、ねらいは市民性育成のための歴史教育にあり、生徒の興味や関心を引き出し主体的に歴史学習に取り組む方法や工夫が取り入れられている。
目次
監訳者まえがき(並木頼寿)
歴史と社会 私たちが生活する世界 七年級 上冊
第五単元 社会生活の変遷
第一課 地域の物語
第二課 身の回りの物語
第三課 社会の変遷の軌跡
第四課 過去はどのように記録されてきたのか
総合研究五 身の回りの歴史を探そう
歴史と社会 私たちが伝えてきた文明 八年級 上冊
第一単元 先史時代
第一課 人と猿の決別
第二課 原始的農業と先人のふるさと
第三課 伝説時代の文明の曙光
総合研究一 私たちの身近にある古代文明を守ろう
第二単元 文明の起源
第一課 天に恵まれた大河文明
第二課 早期国家の形成
第三課 野蛮に別れを告げる
総合研究二 世の激変を感じ取る
第三単元 農耕文明の時代(上)——相次いで盛衰するユーラシアの国ぐに
第一課 ギリシア・ローマとヨーロッパの古典文明
第二課 ヨーロッパの中世とキリスト教文明
第三課 アラブ帝国とイスラーム文明
総合研究三 宗教景観から見た文化の多様性
第四単元 農耕文明の時代(下)——絶えることなく続く中華文明
第一課 封建国家の建国から天下統一へ
第二課 漢唐の繁栄
第三課 多元的な文化の融合と世俗化が進んだ時代
総合研究四 年越し——私たちの身の回りの伝統を感じる
付録1 中国歴史大事〔重要事項〕年表(古代部分 上)
付録2 中国歴史紀年表(夏〜清)
付録3 世界歴史大事〔重要事項〕年表(紀元前3500〜14世紀)
付録4 本書中の主要語彙、中英対照表
付録5 課外読物
付録6 推奨ウェブサイト
歴史と社会 私たちが伝えてきた文明 八年級 下冊
第五単元 工業文明の到来
第一課 商工業の興隆
第二課 思想の殻を破って
第三課 一体化へ向かう世界
第四課 ブルジョワ革命 新体制の成立
第五課 挑戦に直面する中国
総合研究五 鄭和の西洋下りとコロンブスの航海の比較
第六単元 全世界を覆った工業文明の波
第一課 世界を変えた工業革命
第二課 ついに形成された一つの世界
第三課 工業文明の大波に合流する中国
第四課 工業時代の社会の変遷
総合研究六 生活の中に工業文明を感じ取る
第七単元 現代世界に向かって
第一課 地球的規模の激動
第二課 新たに切り開かれた発展の道
第三課 民族復興の新しい道
第四課 静かに変容する社会生活
第五課 万民の心を一つにした抗日戦争
第六課 新中国の誕生
総合研究七 中華民族百年のあゆみを振り返る
付録1 中国歴史大事〔重要事項〕年表(1368〜1949年)
付録2 世界歴史大事〔重要事項〕年表(14世紀〜1945年)
付録3 本書中の主要語彙、中英対照表
歴史と社会 私たちが直面するチャンスと挑戦 九年級
第一単元 チャンスと挑戦に満ちた時代
第一課 戦後世界の新局面
第二課 共和国の苦難の道のり
第三課 近代化建設の新時代
第四課 時代の主題と現代中国
付録1 中国と世界の歴史大事〔重要事項〕年表(1940年代から21世紀初め)
付録2 本書中の主要語彙、中英対照表
「歴史と社会」の授業風景(三王昌代)
前書きなど
監訳者まえがき
中国では、20世紀末から21世紀の今日にかけて、急速な経済発展や社会状況の変化を背景にして、過去の歴史に対する見方に大きな変化が発生しており、学校教育で使用される教科書にも多様化の波が訪れている。中国の教科書といえば全国一律の「国定」教科書という先入観があったが、現在は中央で定めた一定の標準にもとづいて、全国各地で複数の教科書が制作され、検定制度によって実際に教科書として発行される仕組みとなっており、学習指導要領にもとづく日本の教科書検定制度とそれほど大きな違いはない。たしかに、学校教育や学術研究に対する中国共産党および政府の影響力は日本の場合とはまったく事情を異にしており、また、かつて建国以来全国に学校教育の教材を提供してきた北京の人民教育出版社の役割は、現在でもなお非常に大きいことは確かであるが、中国各地の教科書の多様化は、上海版歴史教科書に対する中央からの異議など、一部に政治的な要因も絡んだ事件や出来事を含みながらも、急速に進んでいるように思われる。
本書はそうした趨勢のなかで21世紀の初めに、一部の中学校で新しい学科として始まった『歴史と社会』という教科書の歴史の部分をまとめて翻訳し、日本の読者に紹介しようとするものである。従来中国の中学校(初級中学)では、歴史科目として自国史と世界史が設けられ、かなり大部な『中国歴史』、『世界歴史』などの教科書が使われてきた。高等学校(高級中学)では、さらに細分化して『中国古代史』、『中国近現代史』、『世界古代史』、『世界近現代史』などの教科書が提供されてきている。
(…中略…)
本書は、『歴史と社会』の1年目の教科書から歴史の見方について概説している部分を抜き出して翻訳し、3年目の教科書からは20世紀後半の世界と中華人民共和国の歩みを述べている部分を抜き出して翻訳を行ったが、その大部分を占める内容は、9年制義務教育の8年目、すなわち日本の場合でいえば中学2年で使用する『歴史と社会──私たちが伝えてきた文明』上・下2冊の教科書の内容である。類人猿・原人の物語から20世紀半ばの中華人民共和国建国までの歴史が、人類の歴史、文明の歴史の観点から自国史と外国史を組み合わせて記述されているところに特色がある。
近年中国では歴史を文明史として捉え、世界歴史を切り開いてきた大文明の展開に着目するとともに、消長する世界の大文明の中で、中華文明の長期にわたる持続性を強調するという傾向がある。評判になったテレビドキュメンタリー「大国の台頭」シリーズには、そうした観点が如実に現れていた。本書の内容もそうした方向に沿ったところがあり、まず世界各地の農耕文明の発生と発展を記述し、ついでヨーロッパにおける工業文明の成立と工業文明による全世界の一体化の過程が述べられる。
(…中略…)
他方、本書は歴史遺産の保護をめぐる議論や、地球環境の問題などについて、学習者に問いを投げかけるような工夫も随所に凝らされている。文明史が、いわゆる大文明偏重に陥っているような印象がないとはいえないながら、自国史を人類の歴史の中で説明する試みとして、さまざまな編集上の工夫と相まって興味深いできばえを示しているように思われる。日本の読者としては、日中戦争をどのように記述しているかにも関心を抱く。人民共和国建国の直前の時期の記述が全「中華民族」をあげての抗日戦争という形になっている。そこでの記述にはやや時事的な関心が出てしまっている印象があるのは残念だが、しかしそうした記述の傾向も含めて、中国での教科書記述の実情を知ることができるとはいえよう。中国にとって抗日戦争とは何なのか、率直に認識すべき素材の一つであるといってよい。
本書の翻訳は、最初に『歴史と社会』の教科書に接して翻訳紹介を企てた時期から数えると、数年を経過してしまった。翻訳には数人の中国の歴史教材や歴史教育に強い関心を有する若手の研究者や大学院生が参加し、充実した翻訳原稿がそろった。さらに、巻末には、学校教育の現場でどのような教育が試みられているかということについてのレポートを収録することができた。本編の教科書翻訳部分および巻末の論稿によって、中国における歴史教材の比較的最近の動向について、その一端をうかがうことが可能になると思う。本訳書が、できるだけ多くの人の目に触れることを願っている。
2009年5月 並木頼寿
著者プロフィール
並木 頼寿(ナミキ ヨリヒサ)
所属・現職:東京大学大学院総合文化研究科教授。2009年8月4日逝去
専攻:中国近代史
主要著書論文:『日本人のアジア認識』(世界史リブレット66)(山川出版社、2008年)、『世界の歴史19 中華帝国の危機』(中央公論社、1997年)、『近代中国研究案内』(岩波書店、1993年)
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