離散を架橋するためにディアスポラから世界を読む
臼杵 陽:監修, 赤尾 光春:編著, 早尾 貴紀:編著
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 468ページ 並製
定価:3,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-3011-2 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年07月 書店発売日:2009年07月02日
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紹介

人文社会科学においてディアスポラはいかに有効な概念となりうるか。西欧近代のみならず、「在日」朝鮮人、華僑、回族、沖縄・奄美等のディアスポラから、東アジアの経験を捉える。陳腐化と再-中心化に注意を払いながらディアスポラ研究の最先端を示す。

目次


 まえがき

序論 「方法としてのディアスポラ」の可能性(臼杵陽)
 はじめに——問題の設定
 1 ディアスポラの定義におけるユダヤ的刻印
 2 なぜディアスポラなのか?
 3 ディアスポラ研究の学問的制度化?
 4 イスラーム世界の「ディアスポラ」
 5 日本の「ディアスポラ」
 6 方法としてのディアスポラ
 7 移民、国民国家、市民権
 8 グローバリズムとディアスポラ
 おわりに

I ディアスポラと西洋近代

序 ディアスポラについて、つねに複数として、かつ横断的に思考する(鈴木慎一郎)

第一章 追放から離散へ——現代ユダヤ教における反シオニズムの系譜(赤尾光春)
 はじめに
 1 追放から離散へ
 2 現代ユダヤ教における反シオニズムの系譜
 おわりに——中心と周縁のモデルからフロンティア・モデルへ

第二章 故郷を創る——アルメニア近代史に見るナショナリズムとディアスポラ(吉村貴之)
 はじめに——ナショナリズムとディアスポラに関する研究史
 1 政治ディアスポラの発生
 2 「第一共和国」とオスマン・アルメニア人エリート
 3 ソヴィエト政権と民主自由党の「接近」
 おわりに

第三章 「三度目で最後の大陸」にいたるまで——カルムイク・ディアスポラの四〇〇年(荒井幸康)
 1 モンゴル人とディアスポラ
 2 カルムイク人の移住と帰還——二〇世紀までのカルムイク人
 3 「故郷」とのつながり
 4 ヨーロッパに散らばるカルムイク人
 5 三度目で最後の大陸へ
 おわりに

第四章 ユダヤ・ディアスポラとブラック・ディアスポラ——比較・類比・鏡(浜邦彦)
 はじめに
 1 「二一世紀の絶滅収容所」——比較と類比の問題
 2 ヨーロッパの内なる他者
 3 ヨーロッパの外なる他者
 4 ホロコーストと奴隷制
 5 女々しく生き延びること
 6 帰還と約束
 おわりに——鏡としてのディアスポラ

第五章 ディアスポラと本来性——近代的時空間の編制と国民/非国民(早尾貴紀)
 はじめに——近代国民国家とディアスポラ
 1 ヘーゲル左派の社会哲学と挫折した市民革命、そして人種主義
 2 ハイデガーとアーレントにおける背反する「故郷喪失」
 3 ヘーゲルから二〇〇年後に現代パレスチナ/イスラエルを考える
 おわりに——ヘーゲルから二〇〇年後に「ディアスポラ」と「市民権」を考える

II 東アジアにおけるディアスポラ

 序 「振り返ってみると」と「ふと気がつくと」——ディアスポラを書くことの認識論(丸川哲史)

第六章 離散と集合の雲南ムスリム——ネイション・ハイブリディティ・地縁血縁としてのディアスポラ(木村自)
 はじめに
 1 問題の所在——イエン・アングによるディアスポラ議論から
 2 雲南ムスリムの移住史
 3 「華僑」としての雲南ムスリム——ネイションとディアスポラ
 4 異郷に故郷を築くこと——異種混淆性としてのディアスポラ
 5 イスラームの宗教実践と移住経験の共有
 おわりに——ディアスポラにおける「差異の共存」とは何か

第七章 韓国華僑の外なる「故郷」と内なる「祖国」(王恩美)
 はじめに
 1 東アジアの冷戦構造の形成
 2 韓国社会からの排除
 3 「祖国」の必要性
 4 内なる「故郷」と外なる「祖国」へ
 おわりに

第八章 民族と国民のあいだ——韓国における在外同胞政策(金友子)
 はじめに
 1 離散過程と分布
 2 解放後韓国の在外「同胞」政策
 3 「在外同胞の出入国と法的地位に関する法律」
 おわりに

第九章 否定の民族主義のゆくえ——在日朝鮮人とディアスポラ(洪貴義)
 1 コリアン・ディアスポラと在日
 2 歴史的問題、政治的諸権利
 3 移動の自由、実存的な問い
 4 李珍宇論
 5 在日文学とカフカ
 6 フッサール、否定の民族主義

第一〇章 「脱線」からアチャラカへ——下町の「辺境」三ノ輪“界隈”の文化(本山謙二)
 1 「郊外」/「辺境」そして“界隈”の文化
 2 「東京周縁」の文化と毒蝮三太夫
 3 写真家たち
 4 「祈る街」/人が入れ替わる街
 5 場(place)そして「脱線」(slippage)へ
 6 ヤマで練り上げられた「寄せ場」という言葉
 7 通称の街——山谷と吉原
 8 「脱線」すること
 9 「脱線トリオ」
 10 テント村と野宿者襲撃
 おわりに——「脱線」から「てんぷく」へ

付録 「ディアスポラ」のディアスポラ(ロジャーズ・ブルーベイカー)
 「ディアスポラ」の増殖
 「ディアスポラ」の基準
 根本的な断絶はあるか
 実体か、それとも態度か
 結論

 注

前書きなど

   まえがき

 本書は、二〇〇七年三月二四日に東京麻布台セミナーハウス(大阪経済法科大学)で開催されたワークショップ「ディアスポラから世界を読む」における報告や討議に基づき、参加者全員がそれぞれに書き下ろした論考を編集したものである。
 同ワークショップは、地域研究コンソーシアムの二〇〇六年度「地域研究次世代ワークショップ」企画に採用され、京都大学地域研究統合情報センターとの共催により実現した。企画責任者の赤尾光春(当時北海道大学スラブ研究センター、現大阪大学人間科学研究科)と補佐役の早尾貴紀(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター他)を中心に、相互の研究交流関係から報告者やコメンテーターの人選を行ない、企画当初より目標にしていた単行本化に際しても、われわれ二人が引き続き本書の編集を担当した。
 また、ワークショップ当日に報告全体に対するコメンテーターを引き受けていただいた臼杵陽氏には、本書の監修をお願いし、企画全体に関わる総括的な論考を寄せていただいた。

(…中略…)

 (……)本書は、たんなる個別論考の寄せ集めではなく、ワークショップ当日はもとより、その前後の長い期間を通した討議の積み重ねが反映されており、各論考のカバーする広範な地域と時代にもかかわらず、相互に関連し合うものとなっている。
 なお、付録として、ロジャーズ・ブルーベイカーの論考「『ディアスポラ』のディアスポラ」(The‘diaspora’diaspora)を、本書のために全訳し収録した。これは、本書でも執筆者の何人かが論及していることが示すように、同論考が拡散しがちな「ディアスポラ」の議論を相互に結びつける上で有効な論点を提供しており、この場で訳出・紹介するのがふさわしいと判断したためである。

(…後略…)

著者プロフィール

臼杵 陽(ウスキ アキラ)

1956年生まれ,東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学(京都大学博士〈地域研究〉)
日本女子大学文学部教授
パレスチナ/イスラエル研究,中東政治
・『イスラエル』岩波書店,2009年
・『原理主義』岩波書店,2004年
・『見えざるユダヤ人——イスラエルの〈東洋〉』平凡社,1998年

赤尾 光春(アカオ ミツハル)

1972年生まれ,総合研究大学院大学文化科学研究科博士後期課程修了(学術博士)
大阪大学人間科学研究科特任助教
ユダヤ文化研究,文化人類学
・(共著)『ユダヤ人と国民国家——「政教分離」を再考する』岩波書店,2008年
・“A New Phase in Jewish-Ukrainian Relations?: Problems and Perspectives in the Ethno-Politics over the Hasidic Pilgrimage to Uman”East European Jewish A・airs Vol. 37-1, 2007.
・(共訳)ジョサナン・ボヤーリン/ダニエル・ボヤーリン『ディアスポラの力——ユダヤ文化の今日性をめぐる試論』平凡社,2008年

早尾 貴紀(ハヤオ タカノリ)

1973年生まれ,東北大学経済学研究科博士課程修了(経済学博士)
東京経済大学非常勤講師
ヨーロッパ近代社会思想史
・『ユダヤとイスラエルのあいだ——民族/国民のアポリア』青土社,2008年
・(共編著)『ディアスポラと社会変容——アジア・アフリカ系移住者と多文化共生の課題』国際書院,2008年
・(共訳)ジョサナン・ボヤーリン/ダニエル・ボヤーリン『ディアスポラの力——ユダヤ文化の今日性をめぐる試論』平凡社,2008年

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