発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 364ページ 並製
定価:2,300円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2992-5 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年06月 書店発売日:2009年06月09日
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利用者の福祉ニーズの深刻化・重層化の一方で、今、現場ではセーフティ・ネットの崩壊ともいえる事態が進行し、福祉労働者にワーキングプアが広がっている。このままでは利用者も労働者も守れない。日本のセーフティ・ネットのゆくえを問う。
目次
はじめに(浅井春夫)
第1章 福祉・保育現場の貧困と最低生活保障
○最低生活とは何かという問いかけ
福祉・保育現場の貧困とナショナル・ミニマムの今日的意義(金澤誠一)
第2章 人間の安全保障のゆくえ——現場からの報告
○保育現場の貧困
人・施設・家庭の貧困に追い打ちをかける制度改悪(実方伸子)
○東京都の無認可保育所の厳しい現状
企業参入による子どもへのしわ寄せと、問われる福祉としての保育(平井陽子)
○学童保育の現場から
子どもに「安全で安心できる生活の場」を保障する(真田祐)
○児童養護施設に何が起きているのか
被虐待児童の増加と求められる職員増(黒田邦夫)
○児童相談所が抱える困難
ケースワークをむずかしくする社会資源の不足(川松亮)
○福祉事務所・生活保護現場の貧困
やりがいを取りもどしワーキングプア化を避けるために(渡辺潤)
○障害者施設の現場はどう変わったか
権利を侵害する法制度に立ち向かう実践(家平悟)
○高齢者福祉の貧困
制度の混乱と離職者の増加を生んだ8年間(西岡修)
○熱意が生かされない介護労働の現状
非正社員・低賃金が担う現場の構造(野寺康幸)
○介護労働者の無権利な実態と闘い
在宅介護を担う人たちの現実(清沢聖子)
第3章 福祉労働の今を問う——働き続けられない雇用
○官製ワーキングプアをなくす取り組み
調査から問い直す自治体職員の専門性(前田仁美)
○臨時・非常勤公務員の知られざる賃金・労働実態
「5年で雇い止め」の冷酷、相談業務のプロが次々と職場を去っていく(岡田広行)
○営利事業者のもとでの福祉労働
保育と介護のありえない現実を前にして(小山道雄)
○社会福祉施設経営者の苦悩と現実
福祉労働者の確保と育成のむずかしさ(中村公三)
○民間保育者の賃金の歴史
「低い」とされている労働条件を明確にするために(義基祐正)
○福祉の現場をめぐる統計
福祉労働者のおかれている厳しい状況(若林俊郎)
第4章 社会福祉労働のこれからと政策提言
○社会福祉労働の貧困化と変革の課題
この現実の根本原因と政策転換の必要性(浅井春夫)
あとがき(金澤誠一)
前書きなど
はじめに——毎年、若葉の時期を笑顔で迎えられるように
現実を知ることなしに勇気と変革の行動は生まれない。“貧困は見ようとしなければ見えない”ように“その現実は変えようと思わなければ変わらない”のである。この現実を変えようとするものには、人間としての怒りを持ち続けること、そしてこの現実を変えようとする勇気が問われており、さらにもうひとつ人間への優しさが求められていると思う。
今、福祉・保育現場を見ると、本来人間を大切にする場で利用者のみならず実践者までもが息苦しく、しごとを続けていくことさえ困難な現実が広がっている。そうした現実をなんとかしたいと切望している実践者と研究者が共同してつくり上げたのが本書である。
本書の特徴を紹介しておくと、まず、ほとんどの福祉分野を網羅して、リアルタイムで福祉・保育現場の現実を明らかにしている点である。現場の第一線で実際に関わっている実践者・当事者が今感じていることも含めて書いており、そこに何ものにもかえがたいリアリティを読み取ることができよう。第2に、その現実が政策によって生み出されていること、まさに“政治の責任”としてあることを指摘していることである。したがって第3として、その現実を変えることは“運動のちから”によってできうるという展望が執筆者の共通の基盤となっていることがあげられる。
福祉・保育現場で働く人たちの多くの現実は、まさにワーキングプアの状態にある。私たちは、労働条件を優先する機械的な労働者論を主張しているのではない。働く人たちの労働条件を保障するとともに専門職としての使命を果たすことの両方を大切にする福祉政策のあり方を問うているのである。働く人たちを大切にしない福祉では、利用者をも大切にできないことは、本書の内容をとおしてわかっていただけるものと思う。
第1章「福祉・保育現場の貧困と最低生活保障」は実態調査と理論研究から福祉現場の貧困を詳述し、ナショナル・ミニマムの今日的意義を解明していることで、本書全体の屋台骨となっている。第2章「人間の安全保障のゆくえ——現場からの報告」は、福祉現場の10の領域からの論稿で変わりつつある福祉現場の実際がリアルに見える章となっている。第3章「福祉労働の今を問う——働き続けられない雇用」は、さまざまな雇用形態からのアプローチと実証的な研究の論稿6本が収められている。第4章「社会福祉労働のこれからと政策提言」は、福祉現場の貧困をどのようにとらえるのかをあらためて整理し、改善の課題を提起した内容となっている。この1冊で福祉現場の貧困の今と本質にあらゆる角度から迫っており、リアルに見えるようになっている。ぜひ福祉に関心ある人たちに読んでいただきたいと心から願っている。
この春、福祉現場でしごとをはじめた人たちや今を担っている人たちがまた来年、若葉の時期を笑顔で迎え、生き生きとしごとを続けられることを願って、本書を贈りたい。
2009年風薫る5月の日に 共編者 浅井春夫
著者プロフィール
浅井 春夫(アサイ ハルオ)
浅井春夫(立教大学コミュニティ福祉学部福祉学科教授)
1951年生まれ。専門分野は、児童福祉論、社会福祉政策論、セクソロジー。“人間と性”教育研究協議会代表幹事、全国保育団体連絡会副会長。主な著書に『子ども虐待の福祉学』(小学館、2002年)、『子どもを大切にする国・しない国』(2006年)、『保育の底力』(2007年、ともに新日本出版社)、『ヨカッタさがしの子育て論』(草土文化、2007年)、『子どもと性(リーディングス日本の教育と社会7)』(編著、日本図書センター、2007年)、『子どもの貧困』(共編、明石書店、2008年)等。
金澤 誠一(カナザワ セイイチ)
1948年生まれ。帝京平成短期大学を経て、1999年より佛教大学。専門分野は、社会政策、社会保障・公的扶助論、現代の貧困研究。編著に『「現代の貧困」とナショナル・ミニマム』(高菅出版、2009年)、『公的扶助論』(高菅出版、2004年)、主な共著に『改訂新版生活分析から福祉へ』(光生館、1998年)、『社会保障と生活最低限』(中央大学出版部、1997年)など。監修責任『「構造改革」の下での「生活崩壊」と最低生計費試算』(京都総評、2006年)、『母子家庭の最低生計費試算報告書』(京都総評、2008年)、『首都圏最低生計費試算調査報告書』(首都圏労働組合と労働総研、2008年)。
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