福祉社会における生活・労働・教育
堀内 かおる:編著
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 288ページ 並製
定価:2,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2955-0 C0036
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奥付の初版発行年月:2009年03月 書店発売日:2009年04月02日
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紹介

「生活」に関するテーマを足場に研究を蓄積してきた15名の執筆者が、各分野の視点で現代社会をとらえ直し、家族や家庭生活を揺るがす事象についての論考を展開。課題を明示し、その打開策を提案する。現代日本の福祉と生活問題を理解するための必読書。

目次

 はじめに

第 I 部 現代日本の生活と福祉の展望

第1章 福祉社会における生活経営の新展開と生活創成(伊藤セツ)
 1.はじめに
 2.福祉社会・日本型福祉社会と福祉国家
 3.福祉社会での生活経営の課題
 4.私たちが主体となって「福祉社会」における「生活の社会化」、福祉ミックス時代の新たな生活を創成する

第2章 高齢者福祉領域にみる生活の社会化の進展と社会的新家事労働(伊藤純)
 1.少子・高齢化社会の進展と生活の社会化
 2.生活の社会化と新家事労働・新家計支出の発生
 3.高齢者福祉領域における「新家事労働」「新家計支出」の例
 4.非営利協同組織および当事者による生活の社会化への対応
 5.日本の高齢者の主体的生活経営の実現に向けて——基本的人権の思想に基づく生活福祉経営能力の必要性

第3章 聴覚障害者の生活自立と生活ニーズ——WHOのICF(国際生活機能分類)に即して(吉田仁美)
 1.はじめに
 2.主要概念・用語の説明
 3.聴覚障害者へのインタビューから得た知見
 4.むすび

第4章 日本的な男女のライフスタイルにおける生活時間配分格差(大竹美登利)
 1.はじめに
 2.労働時間の推移からみた男女のライフスタイル
 3.ペイドワークとアンペイドワークの男女における偏在とワーク・ライフ・バランス
 4.経済格差からみた生活時間の偏在
 5.おわりに

第5章 「理想の社会」調査(日本・スウェーデン)に現れた日本のジェンダー政策の遅れ——持続可能な社会厚生指標「人間満足度尺度(HSM)」の開発過程で(大橋照枝)
 1.はじめに
 2.「理想の社会」の根底に必要な持続可能な発展
 3.持続可能な社会厚生指標「人間満足度尺度(Human Satisfaction Measure:HSM)」
 4.HSMのジェンダー・カテゴリー(『女性の4年制大学進学率』を上げる」)の評価で日本は3カ国中最下位
 5.日本のジェンダー政策の遅れを直視する
 6.まとめ ワーク・ライフ・バランスをポジティブ・アクションで実現させる政策が不可欠

第II部 消費と労働の現場におけるジェンダー平等の課題

第6章 多重債務問題にみる現代の家計と消費——バルネラブルコンシューマーとは(宮坂順子)
 1.多重債務問題とは
 2.「日常的貧困」の現状
 3.現代の家計の脆弱性
 4.女性の就業と家計
 5.多重債務問題におけるバルネラブルコンシューマー

第7章 ジェンダー平等と企業の社会的責任(CSR)(斎藤悦子)
 1.はじめに
 2.CSRとは何か——その日本的特徴と世界の動向
 3.CSRはジェンダー平等とどう関連するのか——企業文化における位置
 4.日本企業のCSRの取り組み
 5.今後の方向性

第8章 ジェンダー・ダイバーシティ・マネジメントとワークライフ・バランス(WLB)(杉田あけみ)
 1.はじめに
 2.企業におけるジェンダー平等の実現
 3.ジェンダー・ダイバーシティ・マネジメントと企業におけるジェンダー平等
 4.ワークライフ・バランスの推進とジェンダー・ダイバーシティ・マネジメント
 5.おわりに

第9章 ジェンダー統計視角からみた農業・食関連領域における女性と男性(粕谷美砂子)
 1.はじめに
 2.ジェンダー統計視角とは
 3.FAOによるジェンダー統計に関する国際的動向
 4.日本の農業・食関連領域の政府統計とジェンダー
 5.おわりに——農業・食関連領域における女性と男性

第10章 女性農業者と都市勤労者をつなぐ試み——新しい生活の質論へ(天野寛子)
 1.はじめに——戦後の日本の農業におけるジェンダー問題
 2.個人の意志で選ぶものではなかった農業
 3.「農業」を選んでいる世代
 4.持続可能な農業と女性の生き方とジェンダー問題
 5.「農」の多面的機能とワーク・ライフ・バランス

第III部 生活市民をエンパワーする教育・実践の可能性

第11章 「持続可能な開発」の前提としての「生活の安全保障」——「過去」から「未来」を切り拓く生活市民の形成(松葉口玲子)
 1.国際的に制度化された「持続可能な開発のための教育」
 2.「持続可能な開発」と「人間開発」としての「教育」との相克
 3.日本における「開発」と「教育」——「生活の安全保障」の布石としての「生活の組織化」とジェンダー
 4.生活綴方教育と戦後初期の生活学習の今日的意義
 5.持続可能な未来に向けた生活市民の形成

第12章 コミュニティにおける農村女性の存在・力から地域住民のエンパワーメントへ——持続可能な地域形成に向けて(瀬沼頼子)
 1.はじめに
 2.コミュニティと持続可能な地域形成
 3.事例からみたコミュニティにおける農村女性の存在・力
 4.地域住民のエンパワーメントが創る地域形成の「ストリーミング」

第13章 時間貧困からの脱却と新世代の「生きる力」——タイムユース・リテラシーを育む教育(中山節子)
 1.はじめに
 2.貧困撲滅への新たな戦略としての「時間貧困」とその概念
 3.リテラシーの動向とタイムユース・リテラシー
 4.時間的貧困の撲滅に向けて——タイムユース・リテラシーの育成
 5.日本におけるタイムユース・リテラシーを育む意義とその課題
 6.おわりに

第14章 生涯学習政策の推進と生活を切り拓くボランティア(齊藤ゆか)
 1.国連文書でみる「ボランティア国際年」の理念再確認
 2.日本におけるボランティア・NPOの経済的貢献
 3.国内外で注目されるサービス・ラーニング
 4.生涯学習政策の推進と生活主体を育てる「市民大学」
 5.生活を切り拓くボランティアの育成

第15章 若者のライフキャリア形成とジェンダー(堀内かおる)
 1.現代において「『大人』になる」ということ——「自立」再考
 2.「自立」をめぐる社会的言説
 3.職業選択とジェンダー——教員の場合
 4.ライフキャリアの分岐点に立つ若者支援としての教育実践——まとめにかえて
 おわりに

前書きなど

はじめに

 (…前略…)

 本書の内容は3つのカテゴリーに大別される。第 I 部には、現代日本の生活と福祉の現状を概観し、その問題点を浮かび上がらせる論考が並んでいる。
 まず第1章では、福祉社会および福祉国家に関する概念整理をふまえ、福祉社会に生きる生活者の課題について、生活経営学の視点から論究している。続く第2章では福祉の中でも高齢者福祉が、第3章では障害者福祉が取り上げられ、生活自立支援の方向性が提起されている。第4章では生活時間の配分にみられる男女格差が明らかにされ、第5章では「理想の社会」をめぐる国際比較調査結果をもとに、日本のジェンダー政策の立ち遅れが指摘されている。
 第II部では、消費と労働の現場から生起するジェンダー平等の課題という観点からの論考が取り上げられている。
 第6章では消費者の家計の現状と多重債務問題がジェンダーの視点で読み解かれ、第7章では企業の社会的責任(CSR)について、第8章では多様な働き方を背景としたワーク・ライフ・バランスの現状に対する労働者の満足度の観点から、今後の女性と男性の労働をめぐる課題が提起されている。第9章と第10章では農業および食関連領域に焦点を当て、私たちが生きる根幹を支える農業や食生活にみられるジェンダー問題とその解消に向けての取り組みが紹介されている。
 第III部では、自立的な市民としての力量をつけるための教育や実践のあり方が具体例を伴って示されている。
 第11章では、「生活の安全保障」をキーワードとして「持続可能な開発のための教育」(ESD)の課題が明示され、第12章ではコミュニティの形成と発展という観点から、まちづくりの事例をもとに女性が発揮し得る力とその存在の重要性が実証されている。第13章では第4章で具体的に示された現代日本の男女の生活時間配分上の問題点に着目し、第8章で論じられたワーク・ライフ・バランスを阻害する「時間貧困」を克服するための教育的視点としてのタイムユース・リテラシーが論じられている。
 第14章では、高齢社会の進展を背景として、第2章で取り上げられた新家事労働の担い手としても期待されるボランティア活動の重要性と今後の課題が提起されている。最終章に当たる第15章では、これまでの章で述べられてきた現代社会の今後の担い手となる若い世代に焦点を当て、ライフキャリア形成をめぐる課題とその支援策としての教育の方向性が示唆されている。
 以上のように、各章の執筆者は、家族や家庭生活を揺るがす具体的な事象を取り上げ、いずれも「現実の生活に根ざし、課題やニーズを理論化し、現実にもどす」というスタンスで論じている。
 読者にとって、本書で提起されるさまざまな課題とその解消に向けた提案が、現代社会の生活問題を考える手がかりとなることを願っている。

編者:堀内かおる

著者プロフィール

堀内 かおる(ホリウチ カオル)

横浜国立大学教育人間科学部准教授(家庭科教育学、ジェンダーと教育)
主著:『家庭科再発見——気づきから学びがはじまる』(編著、開隆堂、2006)、『教科と
教師のジェンダー文化——家庭科を学ぶ・教える女と男の現在』(ドメス出版、2001)



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