発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 336ページ 並製
定価:2,500円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2949-9 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年03月 書店発売日:2009年03月18日
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情報化する現代社会を生きるためには読み書きをはじめとするリテラシーが求められる。本書は、聴覚障害をもつ子どもたちがリテラシーを獲得し伸ばすために、親や教師は何ができるか、日常生活の中でできる具体的な実践例をあげながら紹介する。
目次
まえがき
第1章 リテラシーとは
リテラシーとは何か
聴覚障害児とリテラシー
リテラシーとコミュニケーション
リテラシーの発達に向けて
使うことによって、子どもは言語を学ぶ
まとめ
第2章 子どもはどのように言語を獲得するか
言語とは何か
言語発達の段階
言語は学習される
言語と聴覚障害児
言語は言語から伸びる
まとめ
第3章 聞こえとことば
聴力損失の表し方
補聴器と残存聴力の活用
補聴器の使用と子ども
聞こえの補助装置
聞こえの補助手段
人工内耳
言語への聴覚関与の促進
まとめ
第4章 目からのことば
子どもにとって効果的なコミュニケーションができる親になる
目に見える情報に聴覚障害児の注意を向けさせる
物や行動に意味づけをする
聴覚障害児のコミュニケーションの知識を文字の世界へつなぐ
いろいろな手話について
手話コミュニケーションではどのような表し方をするのか
手話コミュニケーションとリテラシーの発達
手話がリテラシー技能の発達に及ぼす効果
指文字とリテラシーの発達
文字と結びつける方策の行動計画
まとめ
第5章 すべては経験から始まる
容易な出口はない——会話についての一言
本物の経験は家庭から始まる
遊びが親と子どもにとって有益な理由
楽しいお買い物
行動計画リストから始める
まとめ
第6章 テレビの世界でのリテラシー
字幕の世界への案内
聴覚障害児に字幕を読む技能を発達させる支援について
まとめ
第7章 読む力を育てる
読むこと
読むことと聴覚障害児
音韻論的処理
形態素に基づいた処理
読むことへの道筋としてどれがいいのか?
読むことは生まれたときから始まる
子どもが読むように仕向けるために親にできること
就寝時のお話から共同読みへ
読むことの準備態勢[レディネス]
年長の聴覚障害児の読み
心構えが大切
読むことの指導のための具体策
まとめ
第8章 書く力を育てる
書くことの特性
書くこととは何か
正しい心構えを育てる
自己流の綴りについて
聴覚障害児の書く機会の変化
書くことの指導のための具体策
まとめ
第9章 学校との協力
親の学校への参加をめぐる課題
親と教師の強固な関係の作り方
リテラシーの目標を達成するための学校との協力関係
親と教師の効果的な話し合いの持ち方
あなたもボランティアを
まとめ
訳者あとがき
参考文献
索引
前書きなど
まえがき
この本は、聴覚障害のお子さんがきちんと読み書きができ、活字文化がますます重要さを増している今の世の中でうまく生きていけるように、リテラシー(読み書きなど情報処理)に関するあらゆる技能を身につけさせるにはどうしたらよいのか、迷っておられるご両親のために書かれたものです。この本の主な目的は二つあります。
1.次のいくつかの事柄について、その背景となる情報をご両親に提供すること。つまり、言語と、それを読んだり書いたりすることとの関係、リテラシーについて検討する場合に用いられる用語、聴覚障害児たちが読み書きを学ぶ時に直面する課題、リテラシーを教えることに関わる学校の役割などについての情報を与えること。
2.聴覚障害児をリテラシー能力を備えた子どもに育てるために、ご両親が家庭でできる活動についての提言をすること。
この本の基本的な考え方は、読み書きなど情報処理の優れた技能を身につけることは、聴覚障害児が直面している最も重要な教育上の課題であるということです。これらの技能を獲得することによって、聴覚障害児は学校のカリキュラムをこなし、インターネットの検索をし、Eメールで交信し、TTY〔訳注・アメリカで広く使われている電話回線を使った聴覚障害者用の文字通信機器〕やオンラインでの会話による友だちとの付き合いを広めるほか、高等教育を受けることもできます。もっと一般的に言えば、読み書きができることによって大きな恩恵を受けるライフスタイルに備えることができるのです。
第1章ではリテラシーに関する一般的な考え方のいくつかを述べ、聴覚障害児の教育へ親が関わることが重要である根拠を示します。第2章では子どもの言語獲得の概要を説明し、第3章と第4章では補聴器、人工内耳、読話、手話など、子どもの言語発達に大きな影響を与える手段の選択についてご両親が十分納得して決定できることを目的として、リテラシーと聴覚および視覚との関係について説明します。第5章と第6章では、家庭や地域社会で、親がどのようにして聴覚障害児のリテラシー能力を発達させることができるかについて説明します。第7章、第8章は読み書き技能の発達について解説し、読み書きを伸ばすための支援についての提言をします。第9章は子どもの学習環境を改善するために、親が学校や教師とどのように協同活動をすればよいかについて検討し、最後に結論として聴覚障害児がリテラシー能力を身につけていくことを支援するために親が果たすことのできる役割について、この本で述べたことをまとめています。
この本全体を通して“聴覚障害児(deaf children)”という用語を使いますが、これは、ろうと難聴(deaf and hard of hearing individuals)の両方を表しています。“ろうおよび難聴児”と表現する煩雑さを避けるためにこの用語を使います。また、医学的な意味で聴力損失を持つ人を表す場合には“聴覚障害”と表記し〔訳注・原文ではdeaf〕、社会文化的意味で、聴力損失があり手話を用い、聴覚障害社会への帰属感を持っている人を表すときには「ろう」と括弧に入れて標記します〔訳注・原文では一般的慣習にならって大文字のDを使ったDeaf〕。
この本では全体を通して主として英語を扱いますが、アメリカ手話(American Sign Language: ASL)についても触れます。この本は、聴覚障害児がリテラシーの技能——最も単純な形では読み書き能力——を獲得することを両親がどのように援助できるかについて説明したものです。けれども、手話は、手話コミュニケーションを行う聴覚障害児のリテラシー能力の発達には重要な役割を果たすものですから、手話とリテラシーの関係についても全体を通して解説しています。
著者プロフィール
デイヴィド・A・スチュワート(スチュワート,デイヴィッド・A)
ミシガン州立大学のろう教育課程の教授で、彼の指導者であるクラーク博士(Dr. Clarke)と一緒に聴覚障害児のキャリア教育を始め、20年以上もの間聴覚障害児の家族の問題を扱ってきている。聴覚障害の専門家、教師、研究者、そしてスポーツ愛好家として、ASL(アメリカ手話)、教育方法、家族のための手話コミュニケーション、ろう者のスポーツ、通訳などに関し多数の著作がある。カナダのアルバート大学で聴覚障害の優れた研究者に与えられるDavid Peiko・ Chair of Deafness Studies のポストを与えられ(1993)、国内外に多くの研究を発表している。個々の子どもの長所を伸ばしていけば、夢は花開くと考えている。
ブライアン・R・クラーク(クラーク,ブライアン・R)
カナダ、バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学の名誉教授で、1995年以来聴覚障害児とその両親に関する問題を研究しており、出身地のオーストラリアと後年30年間を過ごしたカナダで、聴覚障害児教育の教員養成に関わってきた。彼は、聴覚障害児の教室での読みの指導は、子どもの家庭や地域社会での日常的な生活実態と融けあったものであるべきであると考えている。そして、子どもと教師や親との間にものの捉え方に大きな隔たりがあることを切実に心配し、少なくとも自分たちにできることはこの隔たりを少なくすることに努めることであると主張している。
松下 淑(マツシタ フカシ)
東北大学教育学部(特殊教育学)卒業。元愛知教育大学教育学部(障害児教育学)教授。現在、愛知新城大谷大学社会福祉学部特任教授。
坂本 幸(サカモト ユキ)
東北大学文学部(心理学)卒業。カリフォルニア州立大学修士課程(聴覚障害専攻)修了。元宮城教育大学教育学部(聴覚言語障害学)教授。
現在、北杜学園仙台医療福祉専門学校(言語聴覚学科)非常勤講師。
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