発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 324ページ 並製
定価:2,600円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2914-7 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年01月 書店発売日:2009年01月28日
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近年、増加する国際結婚。本書は、結婚後に直面する困難の中でも、とりわけ社会生活において欠くことのできない言葉の問題に焦点を当て、当事者やその子どもたちのアイデンティティ、地域社会が向き合う言語的問題を各地の事例から分析、方策を探る。
目次
まえがき(河原俊昭)
第1章 外国人妻たちの言語習得と異文化接触——山形県の事例を中心に(近藤功)
第2章 国際結婚外国人女性の支援を考える——言語管理とエンパワメントの視点から(猿橋順子)
第3章 国際離婚に伴う言語問題——制度的問題点と言語観を中心に(仲潔)
第4章 プラスワンの多言語ファミリー——英語話者シンガポール人と日本人のカップル(江田優子ペギー)
Column For Better or For Worse…(安江シェリー)
第5章 「英語が苦手な日本人」からの解放——オーストラリア在住、国際結婚日本人女性たち(後藤田遊子)
第6章 国際結婚と言語意識——日本人と英語圏出身の配偶者を中心に(岡戸浩子)
Column 異文化結婚——ほのぼのカップルを結ぶ片言ことば(斎藤早苗)
第7章 地域と相思相愛の国際カップルたち——石川に暮らす文化的国際結婚カップルのインタビュー記録(辻建一)
Column 国際結婚とは忍耐と感謝(一ツ山藤子)
第8章 南米出身者と日本人の国際結婚夫婦とその家族の言語使用状況(柿原武史)
第9章 国際結婚の言語を考える(河原俊昭)
Column 言語使用から垣間見る国際結婚(山川智子)
あとがき(岡戸浩子)
前書きなど
あとがき(岡戸浩子)
近年、日本において国際結婚カップル数が増加している。それに伴って、国際結婚をした知り合いを持つ人も増えてきているであろう。周囲を海に囲まれ、地理的に海外諸国から隔離された島国である日本では、歴史的に見ても、いわゆる一般住民が日常的な場面において外国人と知り合う機会はめったになかったと言えるだろう。
それでは、なぜ近年このように日本人が海外の人と知り合い、結婚に至るケースが増えてきたのであろうか。もちろんのこと、その背景にはグローバル化の進展がある。通信技術の進歩による開放系情報システムと輸送技術の発展によって人的移動が大きく促された。そうして、人々のコミュニケーション構造にもグローバル化現象が見られるようになったのである。その結果、日本にも海外からの在住外国人が増加した。また、日本人の海外渡航者数も増えることとなった。(……)
「海外に住む」というと、これまでは海外赴任の場合が比較的多かったが、近年は日本人の海外在住の理由もさまざまであり、若年層ともなると留学の他、ワーキング・ホリデーの制度を利用した滞在のケースも多く見られるようになった。その他に日本人が海外の人と出会う機会として、自治体を中心とした姉妹都市関係による文化、スポーツ、経済などの各方面にわたる交流があげられる。このような時代の変化に伴う国境を越えた人的交流の活発化を背景にして、今後とも、国際結婚カップルの数がますます増加することが予測される。
日本に住む国際結婚カップルには、生活していく上で言語、コミュニケーション、アイデンティティ保持の問題が存在している場合が多く、とりわけ、人権にも関わる「母語保持」と「子どものアイデンティティ」の問題は重要であると思われる。母語保持と関わる「母語尊重」は夫と妻の双方にとってきわめて必要とされる視点であるが、実際の国際結婚のカップルの状況を見ると、そこには、文化的、経済的、政治的、さらには個人的な要因が複雑に絡まっており、その結果、家庭内では自ずと優勢言語が生じている傾向がみられる。そこで、夫婦がお互いを尊重しながら生活していくためには、どのような言語観を持つかということに加えて、「異文化理解」への態度・姿勢の必要性が課題となってこよう。
国際結婚をした外国人や、ひいては近年増加傾向にある在住外国人と円滑にコミュニケーションを行っていくためにも、上記の課題はこれからの日本人全体にもあてはまる。そして、言語観と異文化理解の素地は、人間の低年齢の時期から培われることが望ましいため、そのことを可能にするための生活・学習環境の構築がなされなければならない。その意味において、学校教育とりわけ言語教育や異文化理解教育の担う役割は大きい。そして、個々人が、まずは生活する地域社会の身近な場面で在住の意識が喚起されたり、自然なかたちでの言語観の形成や異文化理解の促進が期待される。マクロな社会単位がグローバル社会であるならば、ミクロな社会単位として地域社会や家族が存在するが、形態は異なっても、その根底に存在し、かつこの地球社会で暮らしていく人々に求められる重要な視点は「共生」である。
本書の執筆者は、実際に外国人と結婚している者、近親者が国際結婚している者、そして友人・知人に国際結婚のカップルがいる者であり、かつ大半が大学で語学関係の授業を担当する教員である。各執筆者がそれぞれの研究視点から国際結婚家族における言語状況とその背景を明らかにし、言語問題を通して、今後の多言語社会への課題を提示している。これらの国際結婚のカップルの貴重な事例は、わたしたちにこれからのグローバル化社会でいかに生きていったらよいかについての示唆を与えてくれているように思われる。本書が、読者にとって、国際結婚ひいては異文化を持つ人々といかに共生していくのかについて考える上で、お役に立つことができれば幸いである。
(…後略…)
著者プロフィール
河原 俊昭(カワハラ トシアキ)
京都光華女子大学教授。東京大学文学部卒業、金沢大学教育学部修士課程修了、金沢大学社会環境科学研究科博士課程修了、博士(社会環境科学)。専門は言語政策、社会言語学、国際英語。編著書に『世界の言語政策──多言語社会と日本』(くろしお出版)、『外国人住民への言語サービス──地域社会・自治体は多言語社会をどう迎えるか』(明石書店)、『小学生に英語を教えるとは?──アジアと日本の教育現場から』(めこん)などがある。
岡戸 浩子(オカド ヒロコ)
名城大学准教授。名古屋大学大学院国際開発研究科博士後期課程単位取得満期退学、博士(学術)。専門は言語社会学、国際コミュニケーション、言語政策。著書に、『「グローカル化」時代の言語教育政策──「多様化」の試みとこれからの日本』(くろしお出版)、『世界の言語政策 第2集──多言語社会に備えて』(共著、くろしお出版)、『自治体の言語サービス──多言語社会への扉をひらく』(共著、春風社)などがある。
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