ちぎれた心をつなぐ治療解離する子どもたち
リンダ・シラー, 郭 麗月:監訳, 岡田 章:監訳, ハリス 淳子:訳
発行:明石書店
この版元の本一覧
A5判 316ページ 並製
定価:0円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2814-0 C0047
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年07月
書店発売日:2008年07月04日
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紹介

解離の概念や解離性同一性障害についてわかりやすく解説、解離し断片化した心の内と外をつなぐための治療法を具体的に提示する。事例も豊富で、深刻なトラウマや虐待を受け解離という手段で身を守ってきた子どもが治療により回復していく姿は感銘すら与える。

目次

 序文

第1章 解離——その正体と仕組み
 子ども時代の正常な解離
 解離の連続体
 病的解離の発現の仕組み
 子ども時代の解離性障害
 子どもの他の障害の一要因としての解離

第2章 子どもの解離性同一性障害(DID)
 診断のためのチェックリスト
 一般的な徴候と症状
 子どもの儀礼虐待
 親や養育者に対するDIDの確認
 来談者である子どもに対するDIDの確認

第3章 治療を始める前に——解離性のある子どもたちを扱う際の治療上の問題
 治療設定
 治療構造
 まず安全を確保する
 児童虐待の告白
 児童虐待の通報
 他の専門家たちとのネットワーク
 虐待的な養育者
 虐待者と接触のある子どもの治療
 虐待に関わっていない家族によって家庭で再現される虐待の繰り返し
 解離性のある親

第4章 解離症状——治療のあらまし
 解離された感情
 問題行動
 親との協力
 解離を力の強化に変える

第5章 評価と治療法
 評価——内部変化を表す場面の作成
 芸術
 再枠付け
 対話型物語作り法
 ゲシュタルト対話の活用
 夢の活用
 ロールプレイ

第6章 解離性同一性障害の子どもへの初期治療
 内部人格の部分としての定義付け
 さまざまなタイプの人格
 部分と知り合うためのテクニック
 人格間の協力を作り出す
 虐待に関わっていない養育者の子どもの治療への参加

第7章 トラウマの克服に取り組むDIDの子どもたち
 準備
 除反応——感情を伴う想起
 儀礼虐待の処理
 認知的処理
 記憶と感情を解き放つためのその他の方法
 記憶と感情の格納
 内部システムによる記憶の共有

第8章 DIDの子ども——統合と経過観察
 統合とは?
 タイミング
 子どもの恐れ
 統合の構造化
 子どもの統合体験
 統合後の問題
 統合後の治療

 監訳者あとがき
 参考文献
 索引

前書きなど

序文

 解離は古くからある概念だが、今またそこに新たな今日性が見出されてきている。子どもが解離的な防衛を用いることはよくあることで、解離性障害は子ども時代に始まることが多い。私はカウンセラーとしての仕事を通じて、多くの子どもたちが不安と苦痛に密かに耐え、解離的な防衛を必要としているという証拠を目の当たりにしてきた。子どもにとっては長いあいだ、家族だけが自分の世界だったのである。その世界で子どもが経験するトラウマは必ずしも意図的に与えられるわけではないが、それでも苦痛であることに変わりはない。激しいトラウマが長期にわたる場合、解離は逃避以上のものとなる。生き残りのため、「これは現実ではない——私の身の上に起こっていることではない」と信じなければならない場合もあるだろう。しかし、私の患者たちは、たとえ幼い子どもであっても、自分で自分に隠していることを知ろうと闘うものだということを教えてくれた。つらすぎて感じることができないと思えるようなときでさえ、私たちは感じるために闘っているのである。人間は自分自身——あるべき本当の自分——になるために闘うのである。
 治療に来る子どもたちと知り合ったことから本書を書くこととなった。彼らの弱さ、強さ、賢明さに忘れがたい感銘を受けた。本書に登場する子どもたちやその家族は患者であると同時に教師でもあり、私は心を動かされた。私が彼らから学んだことを皆さんにもお伝えしたいと思う。
 また、治療者の方々には、子どもたちと関わり、子どもたちからの挑戦に応じる——子どもたちと出会い、子どもたちを知り、子どもたちを信じ、子どもたちから学ぶ——ことをお勧めしたい。解離性障害をもつ子どもたちは必要に迫られて自分の内部に逃避しているが、世の中への適応は可能である。早期介入と安全な環境があれば、彼らは日の光を浴びた苗木のようによく反応する。子どもにとって治療は、自分自身を感じ、知り、発見する——そして家族のもとへ戻る——ための道、つまり内と外の世界をつなぐ橋となるのである。
 私がこの企画に没頭しているあいだ、私を支え、気持ちを奮い立たせてくれた友人たち、同僚たちに感謝している。いつも私のそばにいて、私を信頼してくれたドリス・ブライアント(Doris Bryant)、私の最初の、そして最高の教師のひとりだったジュディ・ケスラー(Judy Kessler)、この機会を与え、励ましてくれた編集者のスーザン・マンロー(Susan Munro)、原稿について思いやりのある、心のこもった意見を述べてくれたジーン・デコスタ(Jean DeCosta)とジュリー・ライダー(Julie Rider)、必要なときにユーモアと理解を示してくれたカレン・バーンスタイン(Karen Bernstein)、そして、親切に快く、何度も知恵を授けてくれたビッキー・グラハム=コステイン(Vicki Graham-Costain)とキャロル・ヴァルトシュミット(Carol Waldschmidt)に心から感謝する。
 本書中の臨床例は複数の症例をまとめて提示している。子どもたちとその家庭のプライバシーを守るため、名前など、個人を特定する情報はすべて変更されている。症例研究の資料や芸術作品は許可を得て掲載しているものである。

著者プロフィール

リンダ・シラー(シラー,リンダ)

カリフォルニア州アロヨ・グランデで活躍している結婚・子ども家庭(有資格)カウンセラー。著書に“The Family Inside: Working with the Multiple”(ドリス・ブライアント、ジュディ・ケスラーとの共著)がある。

郭 麗月(カク レイゲツ)

1973年大阪大学医学部卒業。医学博士。桃山学院大学社会学部社会福祉学科教授、かくにしかわ診療所勤務、心斎橋心理療法センター主宰。神戸大学医学部精神神経科、大阪府公衆衛生研究所精神衛生部、近畿大学医学部精神神経科を経て現在に至る。日本児童青年精神医学会認定医、青年期精神療法学会常任理事、大阪府精神保健福祉審議会委員、大阪府社会福祉審議会児童措置審査部会委員、兵庫県青少年問題協議会委員。著書に『青年の精神病理3 前思春期の人格発達とその障害』(共著、弘文堂、1983年)、「心身分化」(岩波講座『精神の科学4 精神と身体』岩波書店、1983年)、「ヒステリー」(共著、『シリーズ精神科症例集第6巻 児童青年精神医学』山中書店、1994年)、「ジェンダー・アイデンティティーの障害」(『臨床精神医学講座11 児童青年期 精神障害』山中書店、1998年)、訳書に『子どものおいたちと心のなりたち』(アドラー著、ミネルヴァ書房、1982年)、『虐待された子どもへの治療』(監訳、明石書店、2005年)など。

岡田 章(オカダ アキラ)

1982年近畿大学医学部卒業。医学博士。近畿大学医学部奈良病院准教授。1995年〜1996年ハーバード大学チルドレンホスピタルリサーチフェロー、1998年〜2004年近畿大学医学部附属病院講師を経て、2004年より現職。日本児童青年精神医学会認定医。著書に『現代青年精神医学』(編著、永井書店、2002年)、『小児科診療Q&A』(編著、六法出版、2003年)、訳書に『思考の神経心理学』(共訳、金芳堂、1996年)、『虐待された子どもへの治療』(共訳、明石書店、2005年)など。

ハリス 淳子(ハリス ジュンコ)

滋賀県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部英米学科卒業。公立高校英語教師、自動車会社の通訳・翻訳などを経て、2005年フリーの翻訳者に。他の翻訳書に『ダウン症の若者支援ハンドブック』(明石書店、2008年)。

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