日朝対話に向けて「北朝鮮」再考のための60章
吉田 康彦
発行:明石書店
この版元の本一覧
四六判 272ページ 並製
定価:2,000円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2810-2 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年07月
書店発売日:2008年07月07日
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紹介

「拉致事件」発覚以来、北朝鮮を感情的に弾劾する論調は今なお根強い。そうした中で著者は訪朝を重ね、いまこの国で起きていることを冷静に見定めようしてきた。本書からは日朝対話と相互理解の可能性を模索し続ける、著者の気迫が伝わってくる。

目次

 まえがき——北朝鮮の真実を求めて

第1部 体制を知る
 1 「北朝鮮」という呼称の問題
 2 金日成と金正日
 3 主体思想の生みの親
 4 党が国家を指導する
 5 腹が減っては戦はできぬ
 6 金正日を支える人脈
 7 金正日はあと一五年引退しない
 Topics 金正日の食生活

第2部 文化を知る
 8 徹底したエリート教育
 9 人気はやはり英語学部
 10 閉鎖体制下のマスメディア
 11 “朝流”到来!?
 12 サーカスとマスゲーム
 13 ヒットソングは恋の唄
 14 スポーツといえばコレ
 15 食に国境はない
 Topics アイスクリームは「エスキモー」

第3部 土地を知る
 16 聖地は白頭山と金剛山
 17 金網越しのハイキングコース
 18 知られざる世界遺産
 19 巨大建築揃いのホテル
 20 旅行者は栄光駅から復興駅まで
 Topics 温泉天国・北朝鮮

第4部 経済を知る
 21 「ウマのように働け」
 22 ゴルバチョフの裏切り
 23 金日成の神格化と部分的開放
 24 「これは改革開放ではない」?
 25 開城工団、南北和解のシンボル
 Topics マニアに人気の北朝鮮切手

第5部 核を知る
 26 秘密核開発のはじまり
 27 軽水炉取得は金日成の遺訓
 28 ブッシュ政権の情報操作
 29 実験前に核保有宣言したわけ
 30 核実験というバクチ
 31 その結果、日本は……
 32 核開発を再開させないために
 33 北東アジア非核地帯を構想する
 34 お隣韓国の事情と感情
 資料 核関連年表
 Topics ニューヨークフィルの平壌公演

第6部 ミサイルを知る
 35 日本は射程範囲、しかし……
 36 ミサイルもロケットも同じもの
 37 ノドン・テポドンの市場価値
 38 現実的な対応策とは
 Topics 観光名物の戦利品『プエブロ号』

第7部 人権を知る
 39 脱北者と強制収容所
 40 人道支援は尻すぼみ
 41 孤立を打開するカギは
 42 「政治的野心で統一を急ぐな」
 Topics 「南男北女」
 43 北朝鮮の七不思議(コラム)

第8部 日朝関係1——過去を知る
 44 日本の朝鮮半島進出
 45 植民地支配という現実
 46 朝鮮戦争と分断固定化
 47 南北対立のはじまり
 48 朝鮮総連結成と「帰国事業」
 49 冷戦下の「対立」から関係改善へ
 50 忘れられた「よど号」と日本人妻
 51 国交正常化交渉のはじまり
 52 「在日」と呼ばれる人びと
 Topics 豊山犬(プンサン犬)

第9部 日朝関係2——現在を知る
 53 小泉訪朝にいたる道
 54 目算が狂った小泉と金正日
 55 拉致家族の帰国と政治利用
 56 「ニセ遺骨とは断定していない」
 57 「テロ支援国家」指定の根拠
 58 冷静な現実認識と判断を
 59 「在日」を叩いても問題は解決しない
 60 “共生”以外に未来はない
 資料 『日朝平壌宣言(二〇〇二年九月一七日)』

 あとがき
 参考文献

前書きなど

まえがき——北朝鮮の真実を求めて(一部抜粋)

   1

 在任期間残り少ないブッシュ政権が軌道修正して北朝鮮との対話路線に転じ、交渉による「朝鮮半島非核化」実現に努力している。そうしたなかで日本政府は対北朝鮮経済制裁を三たび延長し、日朝関係は膠着状態にあるが、国交正常化を模索する国会議員有志のグループも与野党にそれぞれ結成され、「議連」も発足した。このような時期に本書を世に問う意義は少なからざるものがあると確信している。
 本書は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の最新事情を政治・経済・外交・国防・文化のあらゆる分野にわたって、つとめて客観的に、わかりやすく解説したものである。日朝関係についても多くのページを割いた。写真と図表も新しいものを挿入、各章の末尾に「トピックス」欄を設け、歴史・文化・市民生活を多面的に紹介した。
 本書執筆の動機は、巷に多くの“北朝鮮もの”が溢れているわりに、正確に、客観的に、バランスよく紹介した書物がほとんど存在しないことにある。大半は北朝鮮という国、体制、金正日という指導者、さらに民衆までも揶揄嘲笑、誹謗中傷したものだ。拉致問題が国民の関心事になってから、とくにその傾向が強い。
 私は一九九四年以来、九回現地を訪問し、北朝鮮のほぼ全土を訪れている。その間、開拓した独自の人脈と土地勘をもっており、これが本書の記述の最大の特徴になっていると確信している。何ごとも「百聞一見に如かず」だ。
 同時に金正日体制を礼賛もせず、非難攻撃もせず、ありのままに語るというのが私の基本姿勢だ。本文中、各所で批判はしているが、この程度の批判は、(自慢ではないが)訪朝のたびに直接、党・政府の幹部に直言し、毎回激論を戦わせている。
 正確な知識と情報にもとづいて日朝両国民・両民族が相互理解を深め、交流親善を進めるのが目的であることはいうまでもない。

  (2〜7は割愛)

   8

 最後にもういちどくり返すが、本書は北朝鮮の社会と制度を擁護しようとするものでも、否定して転覆を謀ろうとするものでもない。多少の批判を交えながらも、ありのままの姿を伝え、真実を知らせようとするものである。
 冒頭で述べた通り、本書の強味は、たとえ体制側(政府当局)の招待と設営で“正面玄関”から入国したにせよ、過去九回北朝鮮を訪問し、通算数カ月現地に滞在してきた経験にもとづいて執筆していることである。
 滞在中も、エリートの街・首都平壌だけでなく、毎回地方に足を延ばしている。一九九四年の初訪朝以来、人道支援を続けてきたことが実績として評価され、毎回地方視察の希望が叶えられている。
 本書の自慢は本文中に挿入した写真にもある。特にクレジットを付けたもの以外は、すべて過去九回の訪朝を通じて私自身が撮影したものばかりだ。

   9

 なお、「朝鮮民主主義人民共和国」は「北朝鮮」で通した。呼称については次章で詳しく解説してある。また文中に登場する人物は、政治指導者も引用文の著者も、初出ならびに、その人物を説明するために必要と判断した場合に肩書を付した以外は、簡略化のために敬称を略し、原則として呼び捨てにしてあるが、他意はない。また登場人物は原則として漢字表記とし、朝鮮・韓国語の読みのカタカナ表記を付した。北朝鮮の人名にはカタカナ表記だけのものもある。北では漢字を全廃しており、漢字表記が存在しない人物もいるからだ。

二〇〇八年六月   吉田康彦

著者プロフィール

吉田 康彦(ヨシダ ヤスヒコ)

1936年東京生まれ。東京大学文学部卒。NHK記者となり、ジュネーヴ支局長、国際局報道部次長などを歴任。1982年国連職員に転じ、ニューヨーク、ジュネーヴ、ウィーンに10年間勤務。1986-89年、IAEA(国際原子力機関)広報部長。1993-2001年、埼玉大学教授。2001-06年、大阪経済法科大学教授(平和学・現代アジア論担当)。現在、同大学アジア太平洋研究センター客員教授。核・エネルギー問題情報センター常任理事(『NERIC NEWS』編集長)、『ポリシーフォーラム』編集長、「北朝鮮人道支援の会」代表を務める。
近著
『「北朝鮮核実験」に続くもの——核拡散は止まらない』(第三書館、2006年)
『国連改革——「幻想」と「否定論」を超えて』(集英社新書、2003年)
訳書
『国連安保理と日本——常任理事国入り問題の軌跡』(岩波書店、2000年)
編書
『どうするプルトニウム』(リベルタ出版、2007年)
『21世紀の平和学——人文・社会・自然科学・文学からのアプローチ』(明石書店、2004年)
『現代アジア最新事情』(大阪経法大学出版部、2002年)
『動き出した朝鮮半島』(日本評論社、2001年)

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