発行:明石書店
この版元の本一覧
四六判 372ページ 上製
定価:4,500円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2763-1 C0336
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年04月
書店発売日:2008年05月07日
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政治は社会主義、経済は資本主義の中国は近年目覚しい経済発展を遂げたが、都市と農村とでは格差が著しい。都市部では年金、医療、最低生活保障、高齢者福祉など整備が進んでいるが、農村ではほとんど手付かずである。中国の社会保障・福祉制度の現状をまとめた。
目次
はじめに——全体構想と分析方法(中村則弘)
1.目的・課題と編集方針
2.研究手法のバランスについて——分析において留意した内容
3.叢書の全体構成
おわりに
序章 中国は新しい福祉国家モデルを提示できるか(袖井孝子)
第1節 計画経済から市場経済へ
第2節 社会保障におけるアジア研究の遅れ
第3節 東アジア型福祉国家モデルは可能か
第4節 本書の狙いと構成
第1部 社会福祉への道
1章 中国における「社会福祉」への道程(陳立行)
はじめに
第1節 社会福利と社会福祉の相違
第2節 「社会福利」から「社会福祉」への移行プロセス
第3節 中国における社会福祉の実践の特徴
第4節 多様な福祉サービスを分析するモデル
おわりに
2章 毛沢東時代の社会福祉政策(鍾家新)
はじめに
第1節 毛沢東時代の特異性
第2節 毛沢東時代の社会福祉行政の展開
第3節 毛沢東時代の主な社会福祉政策
おわりに
3章 社会保障制度の構築における平等権の問題——中国は福祉国家を避けて通れるか(王文亮)
はじめに
第1節 近代国家の目標と福祉国家の体制
第2節 中国は福祉病にかかる心配があるのか
第3節 最低生活保障の財源構造に内包される平等権の問題
第4節 農村社会養老保険の崩壊からみる平等権の問題
おわりに
第2部 都市と農村の格差
4章 農民の健康問題をめぐって——政府,市場,社会の相互機能(景 天魁)/ 122
はじめに
第1節 問題提起——中国の衛生システムにおける最も重要な問題は不公平性である
第2節 基本的仮説
第3節 需要分析——医療需要を合理的な範囲に抑えなければならない
第4節 供給分析
おわりに
5章 中国の年金制度改革の現状と課題(楊剛)
はじめに
第1節 中国の年金制度が直面する課題
第2節 中国の年金制度の歩み
第3節 現行基本年金制度の仕組みと問題点
第4節 中国養老保障制度の展望
おわりに
6章 中国都市部の医療保障制度改革(劉暁梅)
はじめに
第1節 中国医療保障制度改革の背景
第2節 医療制度改革の展開過程
第3節 新医療保険制度の枠組みと特徴
第4節 新医療保険制度への評価
第5節 医療保障制度の再構築に向けて
おわりに
7章 中国の生活保護制度の軌跡と課題(唐鈞・王海燕)
はじめに
第1節 現行の生活保護制度の成立と展開
第2節 生活保護制度の現状について
第3節 生活保護制度についての展望
おわりに
第3部 社会保障の高度化を目指して
8章 上海における「日托養老」事業に関する一考察(蔡●)[●=麟の偏が馬]
はじめに
第1節 「日托養老」事業の背景
第2節 上海における「日托養老」事業の現状——浦東新区と盧湾区の事例
第3節 上海における「日托養老」事業の展望——「日托養老」要望に関する調査から
おわりに
9章 社会変動期における都市高齢者の退職余暇生活——北京市の高齢者を事例として(出和暁子)
はじめに
第1節 余暇について
第2節 調査の概要と方法
第3節 調査結果からの記述
おわりに
10章 中国高齢者の社会参加政策——社会福祉の視点から(李筱平)
はじめに
第1節 社会参加概念の検討
第2節 高齢者の社会参加政策の変遷
第3節 高齢者社会参加政策の展開
第4節 中国高齢者の社会参加政策についての分析
おわりに
11章 中国におけるソーシャルワーク専門教育の歴史的検討(包敏)
はじめに
第1節 中国におけるソーシャルワーク専門教育の歴史
第2節 福祉関係資格の認定
第3節 中国におけるソーシャルワーク専門教育の現状
おわりに
結びにかえて(袖井孝子)
はじめに
第1節 中国の社会保障制度の変遷
第2節 中国の社会保障制度の特徴
第3節 中国の社会保障制度のゆくえ
おわりに
あとがき(陳立行)
索引
編著者・執筆者・翻訳者略歴
前書きなど
序章 中国は新しい福祉国家モデルを提示できるか
第4節 本書の狙いと構成
本書の狙いは,社会主義国家から社会主義的市場経済へと大転換を遂げ,いま福祉社会を目指しつつある中国における社会保障制度の現状と課題を明らかにすることにある。そもそも社会保障制度とは,失業や貧困といった資本主義社会が生み出す歪みへの対応策として創り出されたものであった。アメリカにおいて1935年に成立した社会保障法は,1929年に始まる大恐慌がもたらした社会不安に対処するものであり,年金を支給することで高齢者を労働市場から退出させ,若者に働く機会を提供することが狙いであった。
計画経済を旨とする社会主義社会では,国家によって労働力が計画的に配置されるのだから,そもそも失業は存在しないはずである。労働能力や労働意欲に欠ける者であっても,定年までの雇用が保障されたし,定年退職後も勤め先である「単位」から所得保障や住宅保障を受けることが可能であった。
しかし,改革開放後は,市場原理が取り入れられ,それまで国家の方針に従っていればよかった企業には経営責任が課せられるようになった。経営不振から倒産する国有企業も現れるようになり,生産性を向上させるために,抱え込んだ過剰労働力を放出しなければならない企業も増加した。終身雇用制度が崩壊し,失業者が出現するようになったのである。
日本以上に,経済活動における自由競争を奨励する現代中国がはたして社会主義社会なのか。修正社会主義社会ないし資本主義的社会主義社会とでもよぶのがふさわしいのではないだろうか。ともあれ,これまで資本主義社会に特徴的とされた失業や貧困問題に直面するようになった中国社会において,社会保障制度の確立は避けて通れない課題となっている。
現在のところ,中国における社会保障や社会福祉は,発展途上の段階にあり,かなりの混乱がみられるし,必ずしも全国民をカバーするような状況にはない。本書は,社会保障制度の確立に向けての初期段階にある過渡期の中国の実態を明らかにし,その将来を展望するものである。
本書に収められた11本の論文は,1本をのぞいてすべて中国の研究者によって執筆されたものである。それぞれの立場は,かなり異なっており,過去の評価,現状の認知,将来の展望は,必ずしも同一ではない。社会保障制度に対する見方が多様であること自体,一枚岩的な社会主義国家像に慣れ親しんできた日本人にとっては,きわめて新鮮なことである。
(…後略…)
著者プロフィール
袖井 孝子(ソデイ タカコ)
お茶の水女子大学名誉教授,東京家政学院大学客員教授。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了
主要業績
『死の人間学』(編著,金子書房,2007年)。
『変わる家族変わらない絆』(ミネルヴァ書房,2003年)。
『日本の住まい変わる家族』(ミネルヴァ書房,2002年)。
陳 立行(チン リッコウ)
日本福祉大学情報社会科学部教授。筑波大学大学院社会科学研究科博士課程修了(社会学博士)
主要業績
『向社会福祉跨越』(編著,中国社会科学文献出版社,2007年)。
『現代中国の構造変動』(共著,東京大学出版会,2000年)。
『中国の都市空間と社会的ネットワーク』(国際書院,1994年)。
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