カリブ海地域の貧困とグローバリズムスラムの生活環境改善運動の可能性
江口 信清:著
発行:明石書店
この版元の本一覧
A5判 224ページ 上製
定価:4,500円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2750-1 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年04月
書店発売日:2008年04月10日
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紹介

グローバル化によって多くの発展途上国では都市集中や貧困問題、国内の階層分化が深刻化している。住宅不足や人口過密によってスラムや不法占拠地での生活者は10億人にのぼっている。本書は、長年の比較調査によって、スラム地区の望ましい統合・発展に不可欠な「自生的リーダー」の出現と環境条件を見出している。

目次

 まえがき

序章 不法占拠地域と自生的リーダー
 はじめに
 第1節 不法占拠とスラム
 第2節 「貧困の文化」とスラム住民
 第3節 不法占拠地域と自生的リーダー
 第4節 不法占拠地域でのコミュニティ形成
 第5節 カリブ海地域の不法占拠と歴史・文化的背景
 おわりに——本書の目的、意義、調査方法

第2章 不法占拠地域の空間的特徴とコミュニティの形成
 はじめに
 第1節 スラムの形成過程と空間タイプ
 第2節 線的不法占拠地域と面的不法占拠地域
 第3節 面的不法占拠地域の発展とコミュニタスの生成と変容
 おわりに——都市のインヴォルーションと不法占拠地域・スラム

第3章 ドミニカ国の不法占拠地域と自生的リーダー
 はじめに
 第1節 ドミニカ国の社会経済的概況
 第2節 首都ロゾーのスラム化の進行とスラム・クリアランス事業
 第3節 不法占拠地域の共通点
 第4節 ドミニカの線的不法占拠地域
 第5節 面的不法占拠地域としてのターリッシュピット
 第6節 行政とNGOなどの外部機関の役割
 おわりに

第4章 トリニダードの不法占拠地域と自生的リーダー
 はじめに
 第1節 トリニダード・トバゴの概況
 第2節 トリニダードにおける不法占拠地域の形成
 第3節 不法占拠対策と政治
 第4節 不法占拠地域と外部の支援組織
 第5節 秩序ある不法占拠とボボール・システム
 第6節 都市近郊の不法占拠地域
 第7節 首都周縁部の不法占拠地域
 おわりに

第5章 ガイアナの不法占拠地域と自生的リーダー
 はじめに
 第1節 ガイアナの概況
 第2節 ガイアナの不法占拠
 第3節 線的不法占拠地域と自生的リーダーの不在
 第4節 面的不法占拠地域と自生的リーダー
 第5節 自生的リーダーと女性の役割
 第6節 外部支援組織と自生的リーダー
 おわりに

第6章 貧困からの脱出を阻害するもの
 はじめに
 第1節 グレートリッジの農村社会
 第2節 誰が貧困なのか
 第3節 グレートリッジの学校と宗教
 第4節 アナンシーの話
 おわりに

第7章 不法占拠地域と自生的リーダー
 第1節 農民社会と人びとの「去勢」
 第2節 自生的リーダーと貧困の文化
 第3節 コミュニティ、自生的リーダー、外部支援組織
 第4節 自生的リーダーの特徴
 第5節 女性と自生的リーダー
 まとめ

 参考文献
 おわりに
 索引

前書きなど

まえがき(抜粋)

(…前略…)

 本書は、序章から結章までの全7章から構成される。
 まず序章では、不法占拠とスラムという概念の定義がされるが、これらについてはこれまで多様な定義がなされている。前者はきわめて法的な概念であるのに対し、後者は生活環境の状態に関する概念であり、本書ではいくつかの要素を組み合わせた国連のハビタットの定義に拠ることにする。(……)
 第2章では、これまでほとんど誰にも検討されたことのない不法占拠地域の空間的特徴と自生的リーダーの発生との関係を、人類学者のヴィクター・ターナー(Victor Turner)の提起したコミュニタス(communitas)という概念を使って考察する。(……)
 第3章では、ドミニカ国の不法占拠地域の事例を取り上げる。(……)
 第4章では、トリニダードの事例が取り上げられる。(……)
 第5章では、ガイアナの事例が取り上げられる。(……)
 第6章では、ドミニカ国の農民社会が扱われる。(……)
 第7章は結論の部分である。ここでは、第3、4、5章で取り上げた事例から得た知見、すなわち面的不法占拠地域では自生的リーダーが生まれる傾向があるのに対して、点的・線的不法占拠地域ではそうではない、という点がまず議論される。その上で、それではなぜ自生的リーダーには女性が多いのかという点が検討される。その理由の1つとして、カリブ海地域のジェンダーの問題が考えられる。不法占拠地域の住民の多くはその日暮らしで、1日1食すら取れないほどの貧しい人も多く、オスカー・ルイスが提起した貧困の文化を背負っている人もいる。ルイスが貧困の文化という概念を提起した1950年代、60年代には、貧困の文化は広範に再生産されたであろう。しかし、そのような人たちの中から自生的リーダーが自然発生的に出現して、自分たちの生活環境を変えていこうとする背景には、近年のグローバルな動きに対応した外部社会の大きな変化がある。とくに、政府、国際機関、NGOなどの外部社会からの支援があってこそ、自生的リーダーが活躍し、不法占拠者の生活を大きく変えることができてきたのである。こういった点を含めて、結論が提示される。
(…後略…)

著者プロフィール

江口 信清(エグチ ノブキヨ)

ノースカロライナ大学大学院(チャペル・ヒル校)修了。Ph.D.(人類学)。京都大学大学院農学研究科博士課程満期退学。文化人類学専攻。
現在、立命館大学文学部人文学科地理学専攻・教授。
<主な編著書>
『キューバ 革命の時代を生きた四人の男——スラムと貧困 現代キューバの口述史』(訳、明石書店、2007年)、『総合現象としての観光』(編著、晃洋書房、2005年)、『「貧困の文化」再考』(編著、有斐閣、1998年)、『観光と権力——カリブ海地域の観光現象』(多賀出版、1998年)、『カリブ海地域農民社会の研究』(八千代出版、1990年)など。

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