発行:明石書店
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四六判 224ページ 上製
定価:2,200円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2748-8 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年04月
書店発売日:2008年04月09日
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先住民族アボリジニに焦点を当ててオーストラリアの過去・現在を読み解く。抑圧されてきたアボリジニの側から見ることでオーストラリアの全貌が初めて明らかに。南オーストラリア大学院アボリジニ学部を修了した著者によるもうひとつのオーストラリア史。
目次
プロローグ
オーストラリア概略図
第一章 アボリジニの大地
アボリジニのオーストラリア
オーストラリアは燃えていた
アボリジニの狩猟採集社会——自然とともに生き、生かされる
本当の豊かさとは
家族——結婚から子育て
アボリジニの信じたものはワンネス
ドリーミングの教え——アボリジニ文化の真髄
みんなつながっている
ングルンデリの天地創造物語
神話の意味するもの——「全体として生きる」こと
今を生きるドリーミング
第二章 ヨーロッパ人がやってきた
「幻の大陸」に姿を見せたヨーロッパ人
イギリス人を魅了したオーストラリア
ヨーロッパ人の世界観と「野蛮人」
クックと「高貴な野蛮人」
アボリジニはどのようにクックを迎えたのか(アボリジニの伝承より)
アボリジニの大地は流刑植民地に
フィリップの苦悩——現実と理想とのギャップ
アボリジニを見る目——「人種」という概念
ヨーロッパ社会の変化
アボリジニを最低の「人種」にランクづける
アボリジニの虐殺を認める社会進化論
似非科学とレイシズム
ヨーロッパ中心主義の偏見
キリスト教がアボリジニに与えた影響
宣教師のエスノセントリズムと傲慢さ
誤解されたアボリジニ文化
アボリジニ社会の崩壊
第三章 オーストラリアの国づくり
オーストラリア誕生
国づくりのキーワードは「人種」
建国前夜の植民地オーストラリア
ゴールドラッシュと中国人排斥
アジア人すべての排斥——言語テスト
「やってくる男」と軍事大国日本への恐怖
建国神話の欠如
アボリジニ人口の減少
矛盾する保護政策
子どもの施設送り
増える「混血児」
「混血児」問題の解決策——国家政策としての施設送り
第二次世界大戦——日本軍とアボリジニ
戦後の大量移民
同化政策から統合政策、そして多文化主義へ
アボリジニがオーストラリア国民になる
ゆれ動くアボリジニ政策
多文化主義・土地権・アイデンティティ
多文化主義への反発——大移民論争
生きていたアジア人排斥と多文化主義への批判
ゆれる国家アイデンティティ
新白豪主義
未来へ向けて
第四章 多文化主義とアボリジニをめぐる問題
アボリジニをめぐる問題
Part.1 文化をめぐる問題
アボリジニ文化はどのように理解されてきたか
アボリジニ文化が証明されるとき——土地権回復裁判
伝統文化を再構築する問題点
アボリジニ文化のとらえ方
博物館とアボリジニ文化
アボリジニ性の多面的構築
「普遍的な西洋」と「特殊なアボリジニ」というパラダイムの見直し
アボリジニ系学者の反論——神話的要素こそ文化の本質
誰がどのようにアボリジニの精神性や文化を語るのか——経験の意味するもの
身体と文化
西洋型学問パラダイムへの疑問
アボリジニの精神性をどう理解するか——身体知の意味するもの
Part.2 土地権をめぐる問題
マボ事件のはじまり
アボリジニに先住権があることの意味
否定された「無主の土地」
先住権に関する問題点
「白人」側の反論——オーストラリアの分裂
アボリジニ側の反論——社会正義はどこに
マボ判決と先住権原法制定
Part.3 健康をめぐる問題
アボリジニの健康
貧困と豊かさの病気
植民地化で悪化したアボリジニの健康
制度的人種差別が心身をむしばむ
「失われた世代」の後遺症——アイデンティティの喪失
リンクアップサービス
社会問題としてのアボリジニの身体的・精神的問題
問題の解決に向けて——和解への道
エピローグ
前書きなど
プロローグ
本書は、アボリジニに焦点をあててオーストラリアの歴史をわかりやすく描いたものです。アボリジニというキーワードで、オーストラリアの過去と現在を読み解くという試みです。
アボリジニはオーストラリアの先住民族ですが、もうすっかり日本でもおなじみになりました。オーストラリア関係のテレビ番組でもかならずアボリジニが登場しますし、オーストラリアのおみやげといえば、ブーメランやアボリジニアートを思いうかべる人も多いでしょう。
オーストラリアの歴史に関する本は多く出版されていますが、私があえてアボリジニにこだわるには理由があります。
「歴史は勝者の手で書かれる」という言葉どおりに、オーストラリアの歴史もまた、勝者である「白人」の立場を中心に書かれてきました。先住民族のアボリジニがオーストラリアの歴史の書き手となる声をあげることは、長いあいだできませんでした。「白人」側の言い分だけでなく、抑圧され社会のかたすみでうもれていったアボリジニ側の視点も入れることで、はじめて、オーストラリアの全体の姿がうかびあがるのではないでしょうか。
本書は、私が南オーストラリア州立大学院アボリジニ学部で学んだことをもとにしつつ、その後の研究成果も取り入れてまとめたものです。アボリジニ学部では、アボリジニの文化や歴史を学ぶばかりでなく、これまでアボリジニを認識してきた西洋の学問体系や思想などを今一度見直し、アボリジニの生活向上をはかるとともに、オーストラリアに根づく人種差別をなくし、多民族共生をめざす社会を実現するという目的があります。
(…中略…)
本書は、二〇〇一年に出版した『もっと知りたいアボリジニ——アボリジニ学への招待』に、大幅に加筆し修正を加えたものです。伝統的アボリジニ文化の章を付け加え、誰にでも読んでいただけるように平易な文章を心がけました。これをきっかけに、オーストラリアの知られざる歴史に興味をもっていただければ嬉しく思います。また、今までにオーストラリア関係の本を読んでいらっしゃる方には、アボリジニという視点を加えると、オーストラリアの姿がどのように変わるのかが興味をひくかもしれません。そして、アボリジニにより関心をもっていただければ幸いです。
なお、本文中で使われている「アボリジニ」という用語は、アボリジニとトレス海峡諸島民を含むオーストラリア先住民の総称です。また、「白人」という用語は、オーストラリアにやってきたヨーロッパ系の人々をさしています。
本書には、現在不適切と考えられ使われていない用語や表現であっても、オーストラリアの歴史をより臨場感をもって読んでいただくために、文脈上必要な場合、その多くを「 」に入れるなどして、あえて使っているところがあります。ご理解いただきたいと思います。
著者プロフィール
青山 晴美(アオヤマ ハルミ)
米国オレゴン州立大学言語学部卒業。南オーストラリア州立大学院アボリジニ学部修士課程修了。現在、愛知学泉短期大学准教授、中京大学国際英語学部非常勤講師。
主な著書:『女で読み解くオーストラリア』(明石書店、2004年)、『もっと知りたいアボリジニ——アボリジニ学への招待』(明石書店、2001年)、『女は冒険——中国・チベット・ヒマラヤを越えて』(エフエー出版、1987年)。
趣味:ヨガ・クラシックバレエ。
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