発行:明石書店
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A5判 336ページ 並製
定価:2,400円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2691-7 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年12月
書店発売日:2007年12月18日
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虐待防止に向けて学校は、教師は、何ができるのか。その具体的な方法をさまざまな事例を交えながら解説。虐待の基本的知識とともに、子どもや保護者とどう対応したらよいのか、校内、校外との連携、教師のメンタルケアまで多角的に論じる。
目次
はじめに
第1部 学校と子ども虐待、その現状とこれから
第1章 学校は虐待防止にどんな役割を期待されているのか
新しい虐待対応システムに学校と教育行政は欠かせない
虐待防止法の改正に見られる「学校に期待される役割」
虐待対応のための市町村虐待防止ネットワーク
虐待対応の新たなネットワーク「要保護児童対策地域協議会」
第2章 学校は虐待にどう対応してきたか
学校における虐待対応の課題
学校現場における虐待対応の全国的な実態
教育委員会における対応の実態
学校と教育委員会の虐待対応実態についての要約
第2部 虐待を防止するための具体的な方法
第3章 虐待を理解する
虐待という現象を理解すること
虐待の発生機制
虐待が子どもに及ぼす影響
第4章 虐待を発見する
学校生活の流れに即した虐待発見の視点
虐待を疑う視点
虐待発見のためのチェックリスト
第5章 虐待を聴く
虐待の確証を得るのは学校の義務ではない
「虐待を聴く」大原則
記録する際に心がけておくこと
第6章 子どもへの対応
虐待が子どもに与える心理的な影響
虐待を受けた子どもへの具体的な関わり
第7章 保護者への対応
保護者への対応の基本的な視点
保護者への対応のゴール
不適切な対応の例
教育ネグレクトと不登校
保護者面接の進め方
家庭訪問の留意点
周囲の保護者への対応
人格障害という概念
第8章 校内連携
二つの「連携」
第9章 関係機関との連携
関係機関との連携の必要性
虐待対応に関係する諸機関
ケース会議の留意点
第10章 特別支援教育と虐待
特別支援教育とは
発達障害と虐待
第11章 スクールトラウマ、メンタルケア、その他の留意点
スクールトラウマという考え方
対応する教職員のストレスとメンタルケアの重要性
ストレスマネージメントの原則
研修
授業のなかでの虐待防止教育
教育行政の課題
まとめ
資料&ブックガイド
児童虐待の防止等に関する法律及び児童福祉法の一部を改正する法律新旧対照表
要保護児童対策地域協議会設置・運営指針について
さらに理解を深めたい人のためのブックガイド
あとがき
前書きなど
はじめに
「近年、新聞やテレビ等のマスメディアを通じて「子どもの虐待」という言葉を耳にすることが多くなった。また、1992年の日本児童青年精神医学会総会においては「児童虐待をめぐって——変貌する社会・家庭・子ども」というタイトルでシンポジウムが組まれている。このように、「子どもの虐待」という問題への関心は、一般、専門家を問わず、高まってきているように思われる」——これは、1994年に出版された、西澤哲氏の著作『子どもの虐待』の出だしである。この本は、虐待に対する臨床心理学的なアプローチの体系書としては、わが国初ともいえる著作であった。わずか14年前の記載であるが、おおげさではなく「連日連夜」というペースで虐待事例に対応せざるをえないような最近のわが身を思うと、「それはいつのこと?」という気分にさせられる。それほどまでに子ども虐待は急激に社会問題化してきた。マスコミの意図的なキャンペーンという側面はあるにせよ、現在では、新聞紙上で「虐待」という活字を見ない日の方が少ないのではないかと思われるほどの状況である。
子ども虐待がどのくらい増加しているのかという点については、しばしば児童相談所の虐待相談処理件数の推移が引用される。1990年(平成2年)から2003年(平成15年)までの十余年で、相談処理の件数は20倍以上になっていて、平成17年度には3万4000件を超えている。もともと、虐待事例のすべてが児童相談所を経由するわけではないという指摘も多く、実数の掌握はなかなか困難と思われる。一例として、1989年(平成元年)に大阪児童虐待調査研究会が実施した調査では、児童相談所が関与するのは虐待事例の約40%という結果が報告されている。その後の法的な整備などで、児童相談所の関与率が上昇してきたことが、先の統計資料に見られる急増の一因であろうことは想像にかたくないが、かといってこれがすべてではないことも、本書で述べていくような学校現場における対応実態から明らかである。
もちろん、こうした児童相談所の関与率の上昇という要素以外にも、虐待防止法の施行などの施策が推進されるなかで、それまで虐待という認識をしていなかった事例についても虐待事例としてカウントされるようになってきたという事情によるところが大きいと考えられる。しかし、だからといって、子ども虐待の事例が実数としては増えていないという見方はできない。
子ども虐待が、家庭を中心とする社会全体の子ども養育機能の低下や歪みの現れであるという点については意見の一致するところだろうと思われる。家庭養育の基盤が脆弱になりつつあることはさまざまな局面で指摘されていることであり、実際、厚生労働省の人口動態統計によれば、1989年(平成元年)には件数にして15万8千件、率にして1.29%だった離婚は、1999年(平成11年)には2.0%を超え、2002年(平成14年)には30万件弱、2.3%に達している。もちろん、離婚がそのまま子ども虐待のリスクであると言っているのではない。むしろ、離婚によって子ども虐待につながりかねない家庭内のストレス連鎖を断ちきる場合もある。しかし、こうした急激な離婚率の上昇が、現代社会における家庭養育の形態や機能についての激変を示すデータであることは確かである。この他にも、就業形態の多様化による単親世帯の増加や生活リズムの乱れ、情報化社会の急激な進展による対人関係の希薄化なども指摘されることが多い。こうしたことがらが、どのような関連の仕方で子ども虐待の増加と結びつくのかという点について改めて論じたいが、少なくとも子ども虐待が実数として増加する要因は現代社会に数多くあると言っても間違いないだろう。
本書では、このように子ども虐待が急増するなかで、学校現場と教育行政がどのような役割を担うべきなのか、また、担いうるのかという点を中心に考察していく。本書の最大の特徴は、虐待という親子関係に立ち向かっていく考え方やノウハウについて、徹底的に学校現場と教育行政の観点から述べたことである。虐待そのものについての学術的な解説書は数多いし、福祉の観点から書かれた実践的なテキストも良書が次々と出版されている。しかし、学校の組織特性や、教職員の業務の流れに即して虐待対応について検討している文献はほとんどないと思われる。
そうした特性をもった本であるので、読者には虐待という現象そのものへの理解を、他の書籍によっても深めていただきたいと願っている。
本書は、総論と各論というイメージで書かれている。第1部およびまとめは総論部分である。第2部の第3章から第11章までが各論の部分である。必ずしも順に読んでいただく必要はなく、その章だけを読んでもある程度内容的には完結するように心がけた。
なお、本文中に出てくる事例は、そのすべてについて、一定の脚色を施してある。仮に、酷似した事例が現実にあったとしても、それは偶然である。そうした酷似は、ある意味で虐待事例に共通する構造の存在を示しているものと考えていただきたい。
著者プロフィール
玉井 邦夫(タマイ クニオ)
国立大学法人山梨大学教育人間科学部障害児教育講座准教授
1959年千葉県生まれ。東北大学大学院教育学研究科修士課程修了(心身障害学)後、1983〜1990年まで、情緒障害児短期治療施設小松島子どもの家にセラピストとして勤務。1991年より現職。専門分野は臨床心理学。平成14年度〜15年度文部科学省特別研究促進費研究班「児童虐待に対する学校の対応についての調査研究」代表、平成17年度〜18年度文部科学省委託研究「学校等における児童虐待防止に向けた取り組みについての調査研究会」代表。財団法人日本ダウン症協会理事長。主な著書に、『瞬間(とき)をかさねて——「障害児」のいる暮らし』(ひとなる書房、1993年)、『ようこそダウン症の赤ちゃん』(三省堂、1999年)、『こころとことばの相談室』(ミネルヴァ書房、2000年)、『子どもの虐待を考える』(講談社現代新書、2001年)、『ふしぎだね、ダウン症のおともだち』(ミネルヴァ書房、2007年)などがある。
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