発行:ボーダーインク
この版元の本一覧
四六判 370ページ 並製
定価:2,000円+税 総額を計算する
ISBN978-4-89982-128-1 C0095
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年08月
書店発売日:2007年08月20日
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紹介
暗転し閉塞する危機の時代と切り結ぶ沖縄からの果敢な思想・文学批評。新たなる文学と社会の未来を探る。第三回銀河系俳句大賞を受賞した著者、渾身の第二評論集。俳句、詩、小説の文芸批評と沖縄の社会状況への時評。「現実に生き、そこで感じた違和や共感や危機意識をバネに作品に対峙しているだけであり、その意味で私の批評は極めて〈アナーキー〉であると言っていい」(「あとがき」より)
目次
第Ⅰ章 「沖縄から−有季定型論の虚妄」「『カルテル・パーティー』論」他 第Ⅱ章 「戦争肯定論を評価する文化人」「沖縄の文学二〇〇六年」他 第Ⅲ章 「読書ノート・夏の読書」「吉本隆明・笠原芳光『思想とは何か』」他
前書きなど
この一、二年でも状況はものすごく暗転した。小泉政権に代わって発足した安倍内閣は「戦後レジームからの脱却」を掲げ、ものすごい勢いで「新レジーム」=「美しい国」づくりに向けたファシズム化を進めている。沖縄の軍事的植民地化を企図した沖縄米軍基地再編の日米合意と巨大新基地建設の強行、憲法改定を視野に入れた国民投票法の制定、教育三法の制定、防衛庁の省への昇格、そして教科書改訂。なんと軍命による「集団自決」の事実すら消し去ろうとしている。これらに対し、反対運動の側は余りにも無残な敗退を重ねている。なぜか。世界的にはソ連邦崩壊後の社会主義神話の崩壊に現実的に打ちのめされ、いまだ新しい世界像を構築できずにいるからか。六十年代から七十年代にかけて高揚したラジカリズムの終息の意味をいまなお思想的に総括しえないからなのか。沖縄においては復帰運動に孕まれた民族主義的ないし反米民族主義的な限界をきちんと総括しえる視点を今なお獲得できない思想的混迷の只中にあるからなのか。
「異族の論理」や繰り返される「琉球独立論」や「反復帰論」のなかにそのカオスから脱却しようとする模索が見られるとは言え、沖縄の未来はそれらの論に回収できるものでもない。その一つひとつの主張の内実を検証しつつ、動脈硬化の要因をてっ抉することなしに、真正の思想を語ることはできない。
文学批評もまた、「戦後文学からの脱却」が志向されて久しい。マルクス主義の終焉が安易に叫ばれるなか、これまた安易にポストモダニズム批評が思想や文学批評の領域でもてはやされてきた。政治の優位性と主題の積極性に寄りかかった社会主義リアリズム論を否定する反動としての主題の喪失、作品の時代背景や作者の主体責任を排除した構造主義などがそれであったが、結局それらは、文学から人間を排除するものでしかないばかりか、文学者の政治的スタンスを曖昧にすることで安全地帯を保持する方便として用いられたようである。俳句界では、花鳥諷詠の俳句思想のもと、俳句から人間が排除されて久しいが、文学とはそもそも「人間とは何か」を追求する文芸であったはずである。
沖縄にとって戦後体制からの脱却とは言うまでもなく米軍事支配を現実的に終了させることであり、基地からの脱却であるはずだ。しかし゛現実はあまりにそれと逆行していることを思うとき、これからの沖縄の文学の方向は、メディアの期待するような明るい沖縄やら面白さやおかしさを描いた〈軽文学〉とやらにあるのではないことはたしかである。暗転する危機の時代と切り結ぶ思想と理論、想像力と表現力に支えられた骨太の〈硬文学〉の登場が待たれているはずである。その意味で日本・沖縄の現代文学を掘り起こし、何が問われ、問われなかったかを検証することは文学批評においても極めて緊急である。当然また、「戦争と基地沖縄」の記憶と現実を新たな方法と視点で問い続けることもまた文学の第一義的な課題であることに変わりはない。それは沖縄の少数の書き手たちにおいて持続的に追求されている兆しがある。この間のいくつかの優れた小説作品や論評、詩、短歌、俳句等の韻文学の分野、同人誌、個人詩誌等の相次ぐ発刊はそのことの表れだと期待させるものがある。
私の批評について、共感の声が聞こえる反面、倫理や思想で作品を読むとか、イデオロギーで作品をなでぎっているといった〈批判〉が聞こえないわけではない。政治と文学を区別し、文学は文学として純粋に読み批評すべきであるということであろう。だが、私は非政治的であることがすなわち〈文学として純粋〉であるとは思っていない。また、私はなんら一つの価値観やイデオロギーに縛られそこから作品を裁断しているつもりもない。現実に生き、そこで感じた違和や共感や危機意識をバネに作品に対峙しているだけであり、その意味で私の批評は極めて〈アナーキー〉であると言っていい。主題のない、書く主体を問わない、時代と切り結ぶことのない修辞的作品を修辞的に論ずることをしてないだけである。
版元から一言
第三回銀河系俳句大賞を受賞した著者、渾身の第二評論集。沖縄からの視線は、固有の文化状況を越えて、普遍的な批評へと向かう。「季語」に秘めた思想の陰を徹底的に批判する著者は、今日の沖縄の状況に対しても厳しく対する。沖縄ブームとはまったく関係ない、硬派な文学批評である。
著者プロフィール
平敷武蕉(へしきぶしょう)
1945年 具志川市(現うるま市)に生まれる。1968年琉球大学法文学部国文科卒業 2005年俳句同人誌『天荒』編集委員。同人誌『非世界』責任編集者。著書に「文学批評は成り立つか」(ボーダーインク刊)第3回銀河系俳句大賞賞。
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