認知物語論とは何か?
西田谷 洋
発行:ひつじ書房
この版元の本一覧
四六判 284ページ 上製
定価:2,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-89476-278-7(4-89476-278-1) C0090
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年07月
書店発売日:2006年08月03日
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紹介

文学というものは、なにゆえに文学なのだろうか。文学という営みは人間的な行為である。人の持つ、イメージ、ストーリー、認識の構造がそこにはある。文学はただ単に「近代文学研究」が前提として捉えているような意味で存在しているのだろうか?本書は、認知科学、認知言語学の視点から、人間の認知活動として文学・物語を捉え直すラディカルな(根元的な)問題設定の試みである。

目次

目次

はじめに iii


I 認知物語論とは何か 1

II 計算論的物語論の射程 25

1 物語運用と物語能力 26
2 物語スキーマ 39
3 物語生成 63
4 象徴表現と認知的装置 73
5 根元的虚構論と関連性理論 82

III 事象認知とテクスト生成 97

1 寓喩と投影 98
2 写像と融合 113
3 スキャニング 136
4 視点の制御機構 157
5 時制と図・地 182

IV 社会的批評の方へ 195

1 伝達としてのネットワーク 196
2 心の位置 220

注 243
参照文献 261
初出一覧 275
おわりに 277
索引 283

前書きなど

はじめに

 本書は、物語に関わる様々な概念や諸問題を、認知科学、認知言語学、社会構築主義という三つの問題圏から分析した拙論を集めたものだ。配列は基本的に物語内容から物語表現、そして社会的コミュニケーションという問題領域の発展順になっており、若干の重複や前後する部分もあるが、物語論の理論体系の主要な問題圏をカバーするように構成されている。
物語論は、人文科学・社会科学で基礎的な方法論として位置づけられ、また認知科学においても物語論は脚光を浴びている。物語論は言語学をベースとして形成された学問であり、文学と隣接領域との交通・融合が可能な領域でもある。物語表現、伝達と推論、融合による高次物語の生成、視点と参照点、前景・背景、プロトタイプ効果、相互作用とネットワークといった重要な問題が、単独であるいは相互に連関しながら、物語生成/受容のメカニズム、ひいては私たちの物語に対するイメージを構成している。しかしながら、これまでこうした問題は、テクストや言説の布置の歴史性・政治性の解釈に物語論を援用することに主軸が置かれていたためか、ほとんど検討されていなかった。私が本書で目指したのは、物語論の理論的な検討である。
 本書で採用したのは認知言語学的アプローチによる物語論の操作概念の組み替えだ。これは、私の能力的な問題もあるのだろうが、まずは道具立てを用意することから始めなければ、私の問題構成を実現することはできなかった。認知言語学的な発想から、物語テクストを認知的現象として規定し、その生成・受容過程に人が意識的・無意識的に行う心的操作や構造の解明により適した理論の提出を行うとともに、一方で認知言語学の拡張めいた領域にも踏み込むことになった。
 むろん、最初から一貫した構想があったわけではないし、積み残した課題は多い。隠喩と換喩の対立等というもはや通俗化された古典的修辞観の乗り越え、物語のコンストラクションに対するさらなる精緻な解析といった原理論的検討はむろんのこと、作品論、言説分析といった具体的な作業は、全て他日を期すことになった。
 ともあれ、物語を、認知主体である話者が語り手を操作し受け手に向けて把握(=構築)した出来事を伝達する形式のテクストとして規定すれば、本書の問題意識は、テクストを認知的現象として位置づけ、認知主体が事象・出来事をどのように認識し、いかに表現しているかという、物語表現の生成/受容の認知メカニズムを考察することにある。本書が、計算論物語論ではなく、認知物語論と銘打っているのはそのためである。

著者プロフィール

西田谷 洋(ニシタヤ ヒロシ)

1966年金沢生まれ。金沢大学大学院社会環境科学研究科後期博士課程修了。博士(文学)。石川県立金沢泉丘高等学校教諭、金沢大学非常勤講師などを経て、2004年」より愛知教育大学教育学部助教授。主要著書に『語り寓意イデオロギー』(翰林書房 2000年)、『宮崎夢柳論』(マナハウス 2004年)がある。

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