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ジャポニズム小説の世界
アメリカ編
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2005年2月
- 書店発売日
- 2005年2月14日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2014年12月19日
受賞情報
第26回ジャポニスム学会賞受賞
紹介
19世紀後半、欧米を中心として空前の日本ブームが沸き起こった。意外に知られていないアメリカ人作家による日本をテーマとしたおびただしい数の小説群を発掘した初の書。
前書きなど
「気鋭の比較文学者が、埋もれた資料を掘り起こし、綿密な検討を加え、かつてアメリカを風靡したジャポニズム小説の全貌を初めて説き明かす。興趣つきせぬ読物でもある。」(亀井俊介)
「19世紀後半、欧米を中心として空前の日本ブームが沸き起こったことは周知の事実である。特に、絵画の分野においては、印象派、後期印象派の作品に対する日本画の顕著な影響は、既に多くの美術史家によって実証済みである。ところが、文学においても同様に、この時代に外国人作家による日本を舞台にした小説が多数生み出されたことは、余り知られていない。これらの作品は、そのほとんどが当時の日本文化を基盤にして書かれたものであるが、これを分析し、日本のイメージがどのように広がっていったかを考察することは、カルチュラル・スタディーズの魅力あるテーマでもある。」(「序」より)
追記
■『ジャポニズム小説の世界・アメリカ編』(羽田美也子著 3,000円+税 2.10刊)「ジャポニズムについでは美術表象との関連で議論されることが多い。だが、欧米の日本趣味は何も美術品に限られたわけではない。ピエール・ロティ『お菊さん』に代表されるように、文学作品も多く書かれていた。しかし、数人を除いて、全体像はほとんど知られていない。著者はそのことに着目し、美術における想像力の往還だけでなく、文学による日本表象もジャポニズム運動の一環としてとらえた。アメリカ文学に限定したのは考察範囲を特定するほか、ヨーロツパとの比較にも役立った。ジャポニズム研究は異文化交渉の側面に片寄りがちだが、本書の面白いところは、ジャポニズム小説が流行する起因について、アメリカ文化の角度から検討を行ったことだ。19世紀前半のアメリカはヨーロッパよりも識字率が高く、読者の九割を大衆が占めていた。また、「国民」を育てる「母」として、女性にも早くから教育の機会が与えられた。1830年代になると、印刷の機械化によって書物の大量生産が実現し、40年代には早くも廉価本革命が起きた。小説が大衆的娯楽として一大市場を形成するなか、女性はたんに読者ではなく、作家になる道も開かれた。小説を書くことは経済的な利益をもたらした。おりしも、日本に対する大衆的な関心が高まり、この東洋の国を舞台に小説を書けば、商業的に成功する可能性が高い。ジャポニズム小説が流行する背景にはそうした非文学的な要因も介在していた。60年代以降、アメリカでも文学史の読み直しが行われたが、本書はこの問題についてアメリカ人も気付かない視点を示した。ジャポニズム小説を新たに類別し、批評することは、比較文学的な意義のみならず、アメリカの近代精神史を考える上でもヒントになるであろう。『蝶々夫人』の作家ジョン・ルーサー・ロングをはじめ、オノト・ワタンナ、メアリー・フェノロサ、フランセス・リトルなどについては伝記的事実のほか、おもな作品の粗筋が詳細に紹介されていて面自い。翻訳がほとんどなく、原書も入手しにくい現在、資料としても手元に置きたい一冊だ」(毎日新聞 2.27、張 競)。
上記内容は本書刊行時のものです。