発行:長崎出版
この版元の本一覧
四六判 360ページ 並製
定価:2,200円+税 総額を計算する
ISBN978-4-86095-216-7 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年04月
書店発売日:2008年04月26日
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紹介
セックスについて本書で取り上げた内容は多様だが、編者として心がけたのは何か刺激的な論点がそこに含まれていて読んだ人をして何か認識を新たにさせるような問題提起が含まれていることだ。そしてノーマルとアブノーマルについての境界を揺るがすことだ。「性倒錯」とか「変態」という言葉を特定の性的嗜好に対して与えてしまう習慣が未だに我々の周りにはあるし精神分析の書物にもそうした記述が残っているようだが、もしそれを言うなら人間の行う全セックスはおしなべて「性倒錯」であり、「変態」なのである。
目次
はしがき 3
第1章 ねえ、本音で「性」のこと話そう 白石 耀
─身体的なハンディを超えて
1 自分らしく生きることを学んで
2 介護現場でみる「性」の局面
3 身体障がい者ですけど「エロ」いんです
4 たまには「セックス」で癒されたい〜介護現場での体験から
5 性産業は健常者だけのもの?風俗のバリアフリー化を目指して
6 ハートはオープン。障がいがあってもなくっても!
7 本音で「性」のこと語っても大丈夫の社会を創ろう!
第2章 楽しいセックスの体験が社会を変える キム・ミョンガン
─セックス奉仕隊が求められる理由
1 現代の性教育の貧困
2 日本社会における性文化の歴史
3 日本社会における性文化の近未来と「せい」の役割
4 今後の展望
第3章 オンナを楽しく生きる 北原みのり
─ラブピースクラブを作ったわけ
1 女性天皇制の話題が消えた 二・七ショック
2 皇室は今の社会が女をどう取り扱っているかの見本
3 ラブピースクラブをはじめたきっかけについて
4 男メディアとの戦いに有効な「フェミニズム」という言葉
5 異性愛主義のセックスイメージという批判に対して
6 近隣住民によるラブピースクラブ排除の動き
7 暗部を目撃してお金持ちの家の幸福ではない妻に共感したこと
8 ウーマンブーの闘いかた
9 今のパートナーのレズビアンの彼女のこと
10 性別で生かされていると思った体験
11 マイノリティになって楽になっていく自分
12 フェミがどれだけ役に立つかを再考する
第4章 セラピー文化としてのセックス奉仕隊の功罪 井上芳保
─奉仕隊員とユーザー女性の聞き取り調査に基づいて
1 はじめに─セックスという行為の特異性
2 セックス奉仕隊の事業内容
3 ユーザー女性の聞き取り調査結果から
4 奉仕隊員の聞き取り調査結果から
5 考察:セックス奉仕隊によって達成されているもの
6 女性からの批判の声─類似した実践との比較などから
7 まとめ─不都合なセックス、好都合なセックス
第5章 若者の性意識は変化している 梶原公子
─性教育の実践にみる性的リベラリズムのアポリア
1 「一八歳以下は性行為禁止」というマニュフェスト
2 一八歳と一五歳では大きな違いがある
3 高校生が持つ「性的暴走」への危機感
4 「性的リベラリズムは危うい」という感覚
5 高校生の性意識の深層
第6章 ネットをめぐる人間関係論 渋井哲也
─ネット恋愛、ネット心中のフィールドワークから
1 私がチャットにハマった理由
2 逃げ場としての第四空間
3 インターネットに向かう背景
4 生きづらさのSOSとしてのアクティングアウト
5 出会い系サイトを求める子どもたち
6 多種多様な自殺系サイト
7 ネット心中を求めるエネルギー
8 キーワードで繋がる関係
9 かまう=かまわれる関係
10 相手を理想化する
11 過剰適応の人ほど相性が良い?
12 ネット恋愛に向かう要素
13 ネット恋愛のパターン
14 会わないこともある
15 会いたい人ではなく、会える人
16 ネット恋愛は自由なのか?
第7章 セックスワークについて考える 川畑智子
─性産業で働く女性たちの労働実態の検討から
1 はじめに
2 セックスワークという見方、世界の動き
3 日本の性産業の現状
4 セックスワーカーの人権獲得のために
5 おわりに
第8章 グローバル化と人身売買 越田清和
─セックスワーク従事の外国籍女性への暴力の実態
1 はじめに
2 日本における人身売買
3 人身売買を禁止しようとする二つのアプローチ
4 法と秩序アプローチ
5 人権アプローチ
6 国際組織犯罪禁止条約と選択議定書
7 まとめ
第9章 フーコーにおける「セクシュアリティ」と 杉山吉弘
「生─権力」の概念
1 はじめに
2 セクシュアリティの概念
3 「セクシュアリティの装置」を形成する「生─権力」のテクノロジー
4 「知─権力(savoir-pouvoir)」と「性」の問題編成
5 「自己のテクノロジー」の問題編成
6 結論にかえて─身体と快楽のもう一つ別のエコノミー
第10章 日本社会における売買春の変遷 今西 一
─歴史学的視点からの考察
1 はじめに
2 グローバル化と「性の植民地」化
3 遊郭と差別
4 文明のまなざし─ヨーロッパ人の見た遊郭
5 おわりに
終 章 性の「解放」の深層にあるもの 井上芳保
─自分らしい「性」というより不気味なものと出会う
1 セックスを呪力剥奪する言説群
2 情報化した社会における「性の商品化」の動き
3 人間存在に不可欠な「狂い」の現れとしての性
4 「オトコも楽しく生きたい」で話してもまっすぐに伝わらなかった体験
5 自分の中にもある「変態」的な部分を直視してみる実践
6 女がまっすぐ捉えた男の欲望とドストエフスキー作品における「変態」への視点
7 性教育推進論とセックス奉仕隊についての補論
8 セックスを超える親密さの形を探る
あとがき
前書きなど
本書は、セクシュアリティ文化、あるいは「セックス」ないし「性愛」という言葉によって表示される一連の問題群について、立ち止まってじっくりと考えてみたい人のために編まれたものである。
パラパラと頁をめくっていただくとわかると思うが、テーマもアプローチも文体も多様である。理論的な考察の章、歴史的視点から性愛を掘り下げてみた章もある。またフィールドワークに基づく章、性愛に関わる新しい実践活動の現場からの報告を中心とした章もある。その概要の説明は以下でするが、とくに読む順番はない。読者のあなたにとっていちばん興味のあるテーマから読んでいただければと思う。
内容は多様だが、編者として心がけたのは何か刺激的な論点がそこにあり、読んだ人をして認識を新たにさせるような問題提起が含まれていることだ。そしてノーマルとアブノーマルについての境界を揺るがすことだ。認識が変われば、明日からのあなた自身の生き方が変わるかもしれないし、生きる元気が湧いてくるかもしれない。そういえば「自殺よりセックス」とは村上龍の言葉だった。さまざまな分野でセクシュアリティに関心を持たれている方々に面白く読んでもらえるなら幸いである。
版元から一言
「性」という現象にはまことに多様な側面がある。そのうち、今回取り上げたのは一部に過ぎない。実際、割愛したテーマは少なくない。しかしポイントは絞っている。どちかといえば、性同一性障害などマイナーな性的嗜好の当事者の、というよりもいわゆるノーマルな性的嗜好の当事者の問題を多く取り上げている。そう、それはまさしくあなた自身のことだ。自分は安全地帯に身をおいてマイナーな嗜好の当事者の生きづらさを傍観者として眺め降ろすようなことはできないはずだ。
著者プロフィール
井上芳保(イノウエヨシヤス)
1956年生まれ。札幌学院大学教授。社会学専攻。勤務校で「アイデンティティ論」「社会システム論」「近代社会の基礎」などを担当し、「人間の高尚ではない諸問題」をテーマに社会運動論、知識社会学、臨床社会学、差別の社会学などの領域をクロスオーバーするゼミを開講している。単著に『現代におけるルサンチマン処理産業の社会的機能』(文部省科学研究費研究成果報告書)、編著に『「心のケア」を再考する』(現代書館)、共著に『増補改定版「心の貧しさ」を考える』(田村一郎編、北樹出版)、『社会運動と文化』(野宮大志郎編、ミネルヴァ書房)、『カウンセリング・幻想と現実(上巻)』(日本社会臨床学会編、現代書館)など。
白石耀(シライシヒカリ)
環境系雑誌や地方新聞の記者を経て、フリーライターに。二児の子どもの母。30歳で離婚を経験。障がい者福祉の取材を通し、在宅介護の現場に入る。
キム・ミョンガン(キム・ミョンガン)
1950年、神戸生まれ。75年から89年まで京都精華大学にて文化人類学と韓国語の講義を担当しながら、性について研究を重ねる。90年以降は在野で<性人類学>の研究を行い、独自の分野を開拓。『週刊ビッグコミックスピリッツ』『ポパイ』などで愛と性に関する問題について執筆活動を開始。若者を中心に圧倒的な支持を集める。生物学、動物行動学、文化人類学、社会学と、あらゆる分野に分け入り、性という人類最大の秘密を解き明かす手法には定評がある。
和光大非常勤講師を経て99年、性人類学者として性に関する教育・指導を行う相談所[せい]を設立。所長として男女年齢問わず、様々な悩みの相談にあたっている。
著書に『幸せのラブ&セックス』(ヴィレッジブックス)、『0歳からの性教育読本』(阪急コミュニケーションズ)、『男に大人なんていない!?』(集英社Be文庫)、『ヘンタイの哲学』(日本文芸社)他多数。
北原みのり(キタハラミノリ)
1970年生まれ。96年に日本では初めての女性だけで経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を立ち上げる。著書に『はちみつバイブレーション』(河出書房新社)、女の風俗を体験ルポした『ブスの開き直り』(新水社)など多数。
梶原公子(カジワラキミコ)
家庭科教員として県立高校に20年あまり勤務。その後、大学院にて栄養学学位、管理栄養士資格を取得。昨今の「食と栄養」にかかわる諸現象、ことに若者の食の実態について社会科学的見地から調査、研究を行っている。
渋井哲也(シブイテツヤ)
1969年栃木県生まれ。東洋大法学部卒、長野日報社記者を経て、東洋大大学院文学研究科教育学専攻博士前期課程修了。フリーランスライター、ジャーナリスト。厚生労働科学研究費子ども家庭総合研究事業「第2回男女の生活と意識に関する調査」実行委員会メンバー、厚生労働科学研究費エイズ対策研究推進事業「日本の性娯楽施設・産業に係わる人々への支援・予防対策の開発に関する学際的研究」研究協力者。
川畑智子(カワバタトモコ)
1966年生まれ。北海道大学大学院医学研究科客員研究員。社博士(社会学) 北海道内の複数の大学で非常勤講師として勤務し、社会学、ジェンダー論、社会福祉論に関連した科目を担当している。特に、女性に対する差別の問題について関心をもち、問題の早期発見と早期予防のための認識枠組みの構築に取り組んでいる。共著に『性の商品化』(勁草書房)、『セクシュアリティをめぐって』(新水社)、『買売春解体新書』(つげ書房新社)などがある。
越田清和(コシダキヨカズ)
1955年生まれ。さっぽろ自由学校「遊」、ほっかいどうピーストレードに所属。大学の非常勤講師をしながら、グローバル化や平和、ODAの問題などについての調査や運動を続ける。
著書に、『ピナトゥボ山と先住民族アエタ』(明石書店、訳書、1993)、『アジアの先住民族』(解放出版社、共著、1993)、『かわりゆく農村のくらし』(岩崎書店、共著、1995)、『ODAをどう変えればいいのか』(コモンズ、共著、2002)、『徹底検証ニッポンのODA』(コモンズ、共著、2006)、『NGO・国家・社会変革』(新評論、編著、2006)、『制裁論を超えて』(新評論、共著、2007)、『どうなっているの?日本と世界の水事情』(共著、アットワークス、2007)他がある。
杉山吉弘(スギヤマヨシヒロ)
1947年北海道に生まれる。札幌学院大学人文学部教授。現代フランス哲学専攻。勤務校の人間科学科で「人間科学と倫理」などの講義を担当し、専門ゼミナールでは、例年「生命・技術・倫理」の関連をテーマにしている。フランスの哲学者であるバシュラールやカンギレムなどの歴史的認識論や、フーコーの考古学を研究する。訳書にカンギレムの『生命の認識』『生命科学の歴史』(ともに単訳、法政大学出版局)がある。他に、リオタール『リビドー経済』(共訳)、M・アンリ『マルクス』(共訳)、E・バリバール『マルクスの哲学』(単訳)、J・ドント『ベルリンのヘーゲル』(単訳、いずれも法政大学出版局)がある。
今西一(イマニシハジメ)
1948年生まれ。小樽商科大学教授。日本近代史専攻。同大では「日本経済史」「経済史」などを担当。単著に『近代日本成立期の民衆運動』(柏書房)、『近代日本の差別と村落』『近代日本の差別と性文化』『メディア都市・京都の誕生』(雄山閣)、『国民国家とマイノリティ』(日本経済評論社)、『文明開化の差別』(吉川弘文館)『遊女の社会史』(有志舎)など。共著に『世界システムと東アジア』(日本経済評論社)、『近代日本と水平社』(解放出版社)他多数。
※版元より営業日2~5日でお届けします
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