放射能がクラゲとやってくる
水口 憲哉
発行:七つ森書館
この版元の本一覧
A5判 80ページ 並製
定価:800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-8228-0620-0(4-8228-0620-0) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年04月
書店発売日:2006年04月25日
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紹介

青森県の六ヶ所再処理工場がアクティブ試験入りしました。これから大量の放射能を海へ捨てるようになりますから、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の海が心配です。エチゼンクラゲと同じ経路をたどって放射能が流れるからです。本書は放射能の影響を論じています。

目次

1 まず、再処理工場とはどんなものか説明しましょう
2 再処理工場は、放射能を空気中や海に捨てるのです
3 放射能は少ないと言っていますが……ゴマカシです
4 再処理工場があるイギリスで暮らした家族の話をしましょう
5 イギリスやノルウェーの海の放射能汚染の話をします
6 再処理工場は、放流管から海へ放射能を捨てるのです
7 これが、青森・岩手・宮城の海における放射能の流れです
8 風評被害が心配です
9 二人の方の新聞への投稿を考えてみましょう
10 「海に放射能を捨てないでください」と言うことが大事です

前書きなど

あとがき

「核燃料サイクル施設」——その漁業への影響 という講演を青森市の青森県民シンポで行なったのは一九八四年一二月である。この時は具体的に地元青森県の太平洋沿岸でどのようなことが予測されるかを話した。その後東奥日報からの依頼原稿に放射能は岩手県まで流れると書いたのが理由でか掲載拒否となり、 北奥羽の海を拓く というNHKの番組では、三陸沿岸まで放射能が流れるという発言を削除してくれという青森のディレクターの要望を拒絶したりということで、青森県外に六ヶ所から放射能が流れてゆくということを伝えるのはなかなか難しかった。
 二〇〇二年、青森、千葉、東京の人々から相談がもちかけられその八月末に一万枚の漂流葉書を六ヶ所村の放流管の放出口海面で流した。それらの葉書が太平洋沿岸を南下し、千葉県にまで流れつくという予想外のことが起こった。これは、ヨーロッパの北海を取り巻く国々で現在起こっている放射能汚染の実態を理解するのに最適の実験結果となった。
 昨年五月、岩手県盛岡市で「三陸の海を放射能から守る岩手の会」の要請により、再処理工場から放出される放射能廃液による海洋汚染の話をした。その折参加していた沿岸部の漁業関係者の方々から、地元でもこの話を聞く機会がもてないかという呼びかけがあり、八月三一日から九月二日にかけて、久慈市、宮古市、陸前高田市での連続講演会がもたれた。陸前高田市の集まりには隣の宮城県唐桑町と気仙沼市から漁業者が参加していたこともあり、筆者から宮城県での講演会開催をもちかけた。そして今年二月二五日から二六日にかけて、岩手県山田町(豊かな三陸の海を守る会と水産グループ21の共催)、釜石市(岩手県生協釜石支部主催)、気仙沼市(実行委員会方式)と再び連続講演会を行なった。
 本書は最後で直近、最も南の気仙沼における講演記録を収録したものである。この気仙沼の集まりには唐桑のカキ養殖業者からの連絡で仙台市から消費者グループの方をはじめ五名ほどの女性も参加していた。それらの方々の働きかけにより四月の一六日と二七日には仙台市で話をすることになった。現在、筆者の地元千葉県の外房にあるいすみ市でも話を聞く会の計画が進められている。このように、葉書やクラゲの流され方から推測される再処理工場から放出された放射能がやってくる沿岸各地で、その実態を知ろうとする動きが急速に起こっている。それも一人ひとりが仕事と暮らしの関係を通して知らせ合うことにより。
 二月の末、葉書とクラゲと放射能をすぐに結びつけて考えた正鶴丸さんとたまたま出会った時に、「青森からいつ帰って来たの?」と聞かれびっくりした。佐々木富作さんのホームページ 辺境漁師のLOGBOOK で写真付の筆者の行動をリアルタイムで知っていたのである。いま、漁業者、釣り人、農業者などいろいろな仕事と暮らしの人びとがこのサイトとリンクするなどして、ここ数ヶ月再処理工場からの放射能廃液の海洋放出に関心を深めている。それらのブロガーの主な情報源は、 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会) と 三陸の海を放射能から守る岩手の会(岩手の環境/RI廃棄物/再処理) のホームページである。筆者もここ数年は美浜の会のサイトを訪れ情報を得て本書でも引用している。
 筆者はインターネットという言葉すらなかった二五年以上昔から再処理工場からの放射能廃液の海洋放出に関してブログ的作業をして来た。その結果が、いわて県漁連情報の「羅針盤」であり連続講演会や本書である。それらに共通してある想いは、 こんなことが許されてよいわけはない 海に放射能は捨てるべきではない というものである。各地の漁業者や生協を中心とした消費者そしていろいろな仕事の市民の取り組みに見られる共通の想いは、
放射能を海に捨てないでください
 の一言につきる。それはブログの世界でも同じである。
 人びとは事実を知った時、誰でも こんなことがあってよいのか、大変なことになる と考える。そこには常識による連帯が生れる。岩手県民は、県議会、県知事、沿岸一五市町村、岩手県漁連、岩手県生協、市民団体等が日本原燃に岩手県での説明会開催を求めた。そしてこの間の日本原燃の姑息なふるまいに不特定多数の人びとが再処理工場の危険性とウサン臭さに気が付いてしまった。
 三月三一日の試運転開始が決定している三月二八日に、日本原燃は一転して久慈市と宮古市であわただしく説明会を開いた。宮古市での様子を報ずる岩手日報の見出しは 安全に疑問、不安噴出、質問できず怒号も というものであるが、終了時の会場は騒然たるものだったという。人びとが事実を知った時に、この騒然たる情況は日本中に拡がってゆくだろう、放射能の流れていく範囲を超えて。
 再処理工場の試運転で、放射能汚染をはじめとする問題点が次つぎと明らかになってゆく。
 三月三一日は、再処理工場の終わりが始まる日である。

   二〇〇六年三月三一日
      いすみ市岬町の資源維持研究所にて         水口憲哉

版元から一言

青森県の六ヶ所再処理工場にたいする、漁業者や消費者そして市民の共通の想いは“放射能を海に捨てないで下さい”の一言につきる。

著者プロフィール

水口 憲哉(ミズグチ ケンヤ)

 1941年中国・大連生まれ。両親の出身地は山形県鶴岡、育ちは東京・新宿。
現在、東京海洋大学名誉教授。農学博士。夷隅東部漁協組合員。人と魚と水の関係学専攻。
 1970年より、原子力発電所、火力発電所、ゴルフ場など開発に揺れる全国各地の漁村を行脚し、漁民たちの研究会に数多く参加。
 著書に『釣と魚の科学』(産報出版)、『反生態学』(どうぶつ社)、『海と魚と原子力発電所』(農文協)、『魚をまるごと食べたい』(七つ森書館)、『魔魚狩り』(フライの雑誌社)などがある。
 千葉県いすみ市岬町在住。
 同所で資源維持研究所(Tel&Fax 0470-87-9388)を主宰。

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