発行:凱風社
この版元の本一覧
四六判 288ページ 上製
定価:3,000円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7736-3208-8 C3031
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年02月
書店発売日:2008年02月25日
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA/Master)がご利用になれます
他のオンライン書店で購入※リンク先の書店では、お取り扱いしていない場合があります。あらかじめご了承ください
アマゾン|boople.com|紀伊國屋BookWeb|ブックサービス|ビーケーワン|セブンアンドワイ|e-hon|楽天ブックス|文教堂Jbooks|ライブドアブックス|本やタウン|Yahoo!ブックス
紹介
米国が大戦終結直後から50年代半ばにかけて行った、核戦略構築のための防護対策、原爆医学情報の収集・隠ぺいなどを、主に米国立公文書館所蔵の機密解除された公文書に基づいて批判的に検証・論証した米国史。著者が「発見・収集」した公文書は、米国政府が原爆投下した広島・長崎の人々を「人体への放射線の影響」「原子兵器の効果」を調査・研究する恰好の対象として見なしていたこと、そして核軍拡に邁進し、核抑止論を打ち立てた米国の「狂気」を雄弁に語る。
目次
はじめに
【序 章】本研究のねらいと本書の構成
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
▼「ダック・アンド・カバー」 ▼新たな認識の転換点になった五四年の核実験 ▼民間防衛計画のねらい ▼原爆認識の日米の違い——公式見解はなぜ維持されつづけてきたのか ▼疑問の多い核抑止論伝説 ▼本書の構成
【第一章】占領下日本における米国の原爆情報収集と報道統制
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
第一節 ファーレル声明とプレスコード
▼「新型爆弾」に対する大本営の対処法 ▼「新型爆弾」に対する日本政府の抗議文 ▼内外メディアの報道 ▼ファーレル准将の記者会見と残留放射能否定声明 ▼布かれたプレスコード ▼認知されていた放射性物質の特性
第二節 米国の原爆医学情報収集
▼マンハッタン工兵管区調査団の調査報告とコンプトン博士の報告 ▼ウォーレン大佐らの初動調査——上空で爆発すれば?安全?という見解 ▼米軍合同調査団と米戦略爆撃調査団 ▼米軍病理学研究所に保管された医学情報とGHQの報道検閲 ▼原爆傷害調査委員会(ABCC)の発足と目的 ▼米軍病理学研究所の移転と再編成
【第二章】一九四〇年代後半の原爆情報統制
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
第一節 クロスロード作戦の放射能安全対策
▼動物実験への抗議に対するグローブズ少将の見解 ▼「人々の犠牲」を前提にした安全基準
第二節 原爆医学情報の公開
▼映画『原子兵器の効果』と、「その雨は泥によって黒い」と指示したパーカー中佐 ▼米原子力委員会(AEC)の発足と「人体への放射線の影響」の公表 ▼原爆投下に積極的な意味付けがなされた一九四七年 ▼広島・長崎の放射能被害を改めて否定したウォーレン
第三節 占領下日本における原爆報道
▼原爆症に関するさまざまな記事の登場 ▼ABCCの調査結果公表と『アサヒグラフ』の原爆特集号発行
【第三章】連邦民間防衛局の発足とその原爆対策
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
第一節 一九五一年一月の連邦民間防衛局発足
▼JCAE民間防衛グループの説明とABCCの調査継続 ▼民間防衛対策マニュアル『原子兵器の効果』 ▼FCDA(連邦民間防衛局)の発足
第二節 民間防衛計画の展開
▼「アラート・アメリカ巡回展示」と広報パンフレット ▼米国民の意識 ▼「効率的な復旧」という民間防衛の目的——『航空戦争と心理的ストレス』をめぐって
第三節 占領期における日本の原爆展
▼核の保有と広島・長崎への原爆投下に関する日米の国民意識 ▼占領期には大差のなかった日米国民の原爆観 ▼綜合原爆展 ▼「綜合原爆展」と「アラート・アメリカ巡回展示」の違い
【第四章】一九五四年ビキニ核実験とその後の民間防衛計画
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
第一節 一九五四年の水爆実験とその波紋
▼第五福竜丸の被災 ▼米原子力委員会ストローズ委員長の声明 ▼アリソン駐日米大使の証言と日本への補償提案 ▼米国の情報独占を切り崩した「俊鶻丸」の調査 ▼見舞金による完全決着 ▼放射線物質の影響と利用に関する日米会議 ▼マグロ調査打ち切り ▼日米の政治決着で封印されてきた事実と責任 ▼放置されたままの潜在的被ばく者の存在
第二節 米国政府による被ばく者に関する研究と核実験
▼プロジェクト四・一と塗り変えられる降灰範囲 ▼中止されたチェリオット計画——「きれいな爆弾」実験計画
第三節 民間防衛計画に見る放射性降下物対策
▼「キュー作戦」での民間防衛訓練
【終 章】封印されたヒロシマ・ナガサキ
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
▼軽視された残留放射線・放射性降下物の危険性 ▼放射性降下物論争——ラルフ・ラップの警告とストローズの辞任 ▼核軍拡の論拠にされた核抑止論 ▼アイゼンハワー政権下での放射線被ばく防護行政 ▼広島・長崎後の被ばくの実態
【付 録】
関連年表 1942〜2007年
文献目録
註 釈
史 料
【おわりに】
【索 引】
前書きなど
はじめに
カナダの歴史家であり外交官であるハーバート・ノーマンは『クリオの顔——歴史随想集』(岩波書店、一九八六年)で、歴史家の中には「歴史上の強力な人物、つまり複雑な社会政治問題を軍事行動とか独裁的な命令とかいった手早い行動によって押し切ってしまうような人物の魅力にとらえられている人がある」と述べ、アレキサンダー大王の話を紹介している。
ゴルディウムの町に、名前は記録に残っていないけれども、なにがしという者があって、工夫を凝らしてはなはだ念入りな紐の結び目を考え出していたので何びともそれを解くことができなかった。託宣によると、この結び目を解く者にははなばなしい栄達が予言されていたのであった。ゴルディウムに着いたアレクサンドロスは、すぐにその結び目を調べてみたが、剣を抜いてそれを断ち切ってしまった。そして彼の将士もその一撃に喝采を送ったのである。
歴史は、とかくアレキサンダー大王のような「英雄的人物」を中心に描かれがちである。しかし、ノーマンはこの話を少年の頃に聞いてがっかりした。筆者もノーマンのこの感性に深く共感する。歴史とは、埋もれ隠れている糸を引き出し紡ぐ作業であり、解くのが困難な紐を解きほぐす作業であるからだ。また、暴力を使わないで「複雑な社会政治問題」を解決しようと努力し英知を注いだ人々に光を当てることが大切だと思うからである。しかし皮肉なことに、ノーマンは、最も忌み嫌っていた価値観である二元論的「マッカーシズム」、すなわち米上院国内治安小委員会にスパイの疑惑をかけられ一九五七年、自殺に追い込まれる。この、冷戦期に猛威を振るった狂気は今も「対テロ戦争」の名の下に復活している。
広島・長崎への原爆投下から六二年余り経つが、アレキサンダーが剣を振り回したように、核兵器を振りかざし、「核抑止論」のような脅しの論理によって架空の「平和」を保とうとする価値観がいまだに強固に残っている。また「国家安全保障」の名の下で、国家にとって都合の悪い事実を機密扱いにして歴史の真実を切り捨ててゆくことが当然のごとく行われている。そうした流れの中で、ヒロシマ・ナガサキは封印されてきた。
米国政府は、原爆の威力を強調する一方で原爆がもたらす悲惨さを打ち消すために、空中爆発した広島・長崎では原爆投下後一分以降に発生する残留放射線の影響はない、という公式声明を出しつづけてきた。核兵器を開発してきた機関である米原子力委員会(現・米エネルギー省)はその前提で放射線の影響に関する研究を進めてきたが、そうした機関が発表している被ばく放射線量の基準(DS86)が、唯一の「科学的な研究」として原爆症認定基準に機械的に適用されている。そのため、黒い雨・ススなどの放射性降下物や、投下後に入市して誘導放射化された放射線によって被爆した人々、食料・水などを接収することにより放射能を体内に取り込み内部からの放射線によって被爆した人々など、残留放射線によって被爆した人々が起こした申請は、厚労省によって原爆との因果関係はないとして却下されてきた。被爆者健康手帳を持つ約二五万人のうち、原爆の放射線が原因でガンなどになったとして原爆症と認定されたのは、一パーセントにも満たない二二四二人(〇七年三月末現在)である。
また、第二次世界大戦後、核戦争の現実を伝える責任があるはずの日本は、米国の「核の傘」の下で原爆を投下した当事国(米国)にその責任を問わずに今日に至っている。同時に、植民地支配と戦争に苦しんだアジア・太平洋の人々に対する戦争責任に向き合っていないがために、事実を伝える力すらない状態にある。それどころか戦争をあたかも「天災」のように扱っている。
日本政府の「内閣官房国民保護ポータルサイト」の「武力攻撃やテロなどから身を守るために」によると、核爆発の場合の留意点として「とっさに遮?物の陰に身を隠しましょう。近隣に建物があればその中へ避難しましょう。地下施設やコンクリート建物があればより安全です」とある。これが、数々の有事法を成立させ、その先に、「国民保護計画」を進める日本で説かれている現実認識である。「二度とこのような思いはさせたくない」という気持ちで発言してきた被爆者・戦争体験者の声は無視され、戦争の現実に向き合わないままに、戦前の状況が復元されつつある。
本書は、米国政府が主に一九四〇〜五〇年代に実施した、原爆・核実験に関わる核戦略の実相と情報統制について、長らく隠されてきた米公文書のうち機密解除されたものを中心に検証した論考である。読者の皆さんにとって、拙論がこうした現在の問題を理解する糸口になればと願っている。
二〇〇七年晩秋の広島で
版元から一言
ヒロシマ・ナガサキは、「核抑止論」=「架空の平和論」という「脅し」の論理を創造し、軍事的優位を計る米国の軍拡戦略に利用されたのだった。
著者プロフィール
高橋 博子(タカハシ・ヒロコ)
広島市立大学広島平和研究所助教(アメリカ史)、1969年生まれ。
富山大学非常勤講師、早稲田大学現代政治経済研究所特別研究員をへて2002年より現職。2003年9月、同志社大学文学研究科より博士号(文化史学)取得。
(所属学会)日本アメリカ学会、日本アメリカ史学会、日本平和学会、日本広報学会、文化史学会、日本国際政治学会、等。
(その他)広島平和記念資料館更新計画諮問委員会委員(2004年~2006年)、広島平和記念資料館資料調査研究会委員、都立第五福竜丸展示館専門委員、日本平和学会グローバルヒバクシャ分科会共同代表、ヒロシマ平和映画祭実行委員、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)運営委員。
研究業績
〔論文〕
博士論文「米国政府による原爆情報管理と民間防衛計画、1945年―1955年」(2003年3月、同志社大学提出)
「海外被爆資料の研究」『広島平和記念資料館研究報告第3号』(広島平和記念資料館、2007年)
「原爆投下の人体実験的側面――軍事資料として扱われた被爆資料」(『長崎平和研究』、第21号、2006年)
「広島の原爆・被爆・核兵器関連資料――広島大学原爆放射線医科学研究所、広島平和記念資料館、広島市立大学広島平和研究所」(20世紀メディア研究会編『インテリジェンス』第5号、2005年)他。
〔共著〕
高橋博子・竹峰誠一郎責任編集、グローバルヒバクシャ研究会編『[市民講座いまに問う]ヒバクシャと戦後補償』(凱風社、2006年)
前田哲男監修グローバルヒバクシャ研究会編(高橋博子・竹峰誠一郎・中原聖乃)『隠されたヒバクシャ――検証=裁きなきビキニ水爆被災』(凱風社、2005年)
紀平英作編『帝国と市民――苦悩するアメリカ民主政』(山川出版社、2003年)、
他。
〔翻訳書〕
ダニエル・J・ゴールドハーゲン著、望田幸男監訳、北村浩・土井浩・高橋博子・本田稔訳『普通のドイツ人とホロコースト――ヒトラーの自発的死刑執行人たち』(ミネルヴァ書房、2007年)
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA/Master)がご利用になれます
コメントとトラックバック »
まだコメントとトラックバックはありません
TrackBack URI : http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-7736-3208-8.html/trackback/

