グローバル化時代のイノベーション戦略韓国経済の発展パラダイムの転換
尹 明憲
発行:明石書店
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A5判 328ページ 上製
定価:5,000円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2732-7 C0033
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年02月
書店発売日:2008年02月29日
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紹介

80年代に「漢江の奇跡」と呼ばれる経済発展を遂げ、途上国から先進国への仲間入りをした韓国。だが、97年のアジア通貨危機でIMFの介入を受け、財閥解体など大幅な政策転換を迫られた。その経緯を詳細に分析し、グローバル化時代における未来を展望する。

目次

 はしがき

第1部 IMF危機以前の発展パラダイム
 第1章 韓国の経済発展過程の概観
  1.はじめに
  2.経済発展の概観
  3.経済発展の原動力としての技術能力の形成
  4.先行研究の概観
  5.発展パラダイムの転換
  6.むすびに
 第2章 IMF危機で露出した韓国産業経済の構造的問題点
  1.はじめに
  2.経済危機と構造改革
  3.構造的問題点としての中小企業の脆弱性
  4.むすびに
 第3章 成長至上の国土・地域政策
  1.はじめに
  2.韓国の地域間不均衡
  3.成長主導の国土政策
  4.第3次国土総合開発計画における政策基調の変化
  5.韓国国土政策の特徴と問題点
  6.むすびに

第2部 韓国発展パラダイムの変化
 第4章 経済発展における技術の役割
  1.はじめに
  2.成長源泉としての技術
  3.後発途上国にとっての技術進歩のための条件
  4.イノベーション・システムの形成
  5.イノベーションの「場」としてのクラスター
  6.むすびに
 第5章 韓国のナショナル・イノベーション・システム
  1.はじめに
  2.R&D、特許からみた台湾、韓国の技術活動
  3.技術政策およびイノベーション・システム
  4.むすびに
 第6章 技術政策における変化
  1.はじめに
  2.韓国における研究開発活動の展開
  3.IMF経済危機を契機とする科学技術政策の転換
  4.むすびに
 第7章 IMF危機後の国土・地域政策におけるイノベーション指向
  1.はじめに
  2.国土・地域政策の転換
  3.第4次国土総合計画
  4.第1次国家均衡発展5ヵ年計画
  5.むすびに
 第8章 地方における革新クラスター形成の模索
  1.はじめに
  2.先端技術産業集積の意義
  3.大徳科学研究団地の概要および機能、課題
  4.テクノパークの展開
  5.革新クラスター形成のための課題

第3部 知識経済時代の対外経済関係
 第9章 韓国の対外経済政策および国際経済関係の変容
  1.はじめに
  2.「先進国入り」に向けた開放化・自由化
  3.経済危機によるいっそうの開放化・自由化
  4.東アジア地域統合の模索と韓国の対応
  5.むすびに
 第10章 地方主導での経済交流の展開
  1.はじめに
  2.東アジアにおける「地方の国際化」
  3.九州による環黄海地域経済交流の取り組み
  4.北九州市の環黄海地域経済交流の展開
  5.仁川市の環黄海地域経済交流の展開
  6.むすびに
 第11章 環黄海地域における技術連携の可能性
  1.はじめに
  2.イノベーション活動の国際化の含意
  3.環黄海地域における地方主導の技術協力の模索
  4.むすびに

 あとがき
 引用・参考文献

前書きなど

はしがき(一部抜粋)

(…前略…)

 経済危機から脱却してV字型回復を遂げる際に、金大中大統領の下で金融・経営・財政・労働の4つの分野で改革が実施されたことは周知のところであり、これについては多くの研究者が取り上げている。これらの分野は、1〜5年で改革を完了させて成果が現れる、短中期のタイムスパンでの改革である。それでは、より長期的なタイムスパンを展望してどのような改革が行われたのか、そしてその意義はどのようなものであったのだろうか。
 筆者は、以上の問題意識から技術振興に注目して研究を進めてきた。本書で主要な視点としたのは次の3点である。
 まず第1に、長期にわたる経済成長を可能にする原動力となるのは、技術イノベーションである。経済のグローバル化にともない、中国およびそれに続くベトナムなどの新興途上国が台頭してきたことで、韓国がかつて享受してきた価格競争力での優位性はもはや失われている。もちろん、韓国の経済発展の成果は技術水準を向上することで実現されたが、それは先進国で開発された技術を「借用」し改善したものがほとんどである。しかし、グローバル化による競争激化は、先進国にとっても技術力の重要性を認識させて、知的財産権を強調して自国技術を保護する傾向をもたらし、技術の借用が容易には許容されなくなった。したがって、韓国にとっては自らの技術を開発することが求められており、通貨危機後は「知識基盤経済」の構築が国策として位置付けられた。
 しかし、新技術の開発が一朝一夕にできるわけではない。技術開発にはそれを担う科学者・技術者が必要であり、養成のための教育訓練システムが社会的に整備されていなければならない。そして、新技術の研究開発には実験資材をはじめとして少なからぬ費用を要し、しかも成果が不確実である投資の支弁を誰かが行わなければならない。新技術の開発に成功したとしても、それが市場で買い手のつく製品に実用化されなければ、投じた費用を回収できず、無意味となる。韓国の財閥系大企業は、社内に技術者をしかるべき部署に配属し、未知の技術開発(そのための資金調達)から実用化までの一連の過程を同一組織の中で行うことができた。ところが、通貨危機は韓国財閥を直撃して、財閥に依存しない別の主体、すなわち中小・ベンチャー企業による技術開発が求められるようになった。しかし、資金調達も含めた研究開発の着手から開発技術の実用化までを中小・ベンチャー企業が単独で行うことは不可能なので、同・異業種の他企業、大学・研究機関や行政、金融界など各種機関・組織との間で連携協力のネットワークが必要であり、こうしたネットワークを維持運営するためには、関連機関の間を取り持つコーディネーターの存在がなければならない。要するに、これは韓国全体の社会経済システムに関わる改革が求められているのであり、それは従来の韓国の経済・社会の姿を大きく変貌させるほどの意義を持ち、その意味で「パラダイムの転換」と呼ぶことができる。このような新しいナショナル・イノベーション・システムを構築しようとする指向性は、韓国のさまざまな政策に反映されている。
 第2に、1990年代半ばから首長選挙などで制度的に整ってきた地方分権化の傾向に着目した。韓国では首都圏および慶尚南北道(歴代大統領の出身地)とそれ以外の地域間格差がインフラ整備や産業立地などの面で見られ、こうした地域間格差の鬱憤が大統領選挙の際に地域対立として露呈されるなど、韓国における重大な社会問題とされてきた。このような地域間格差を解消するために、地域住民の生活を豊かにする地域振興政策の必要性も高まってきた。しかし、前述したことからも推察されるように、財閥系大企業を誘致することは困難になっており、むしろ場合によっては地域企業でさえ価格競争力確保のために海外(後発の発展途上国)に進出する事例、すなわち空洞化傾向も見られる。そうであるなら、地方でも地元企業が技術イノベーションを推進していくのに資する環境を整えることによって、当該自治体・住民が地域経済の振興を図ることが重要となる。このような指向性は国土政策や各地方自治体が立案・指向する経済産業施策にも反映されている。しかしながら、韓国の社会経済システムにおける「中央集権制」は数百年にわたる伝統の中で形成されたものであり、現在でも首都圏への人口集中は途絶えることがない。したがって、これも韓国の姿を根本的に変える「パラダイムの転換」と見なすことができる。
 第3に、地方を主体とした国際交流が活発になっている点に着目している。前述の経済のグローバル化が進展する上で主要な推進力となっているのは、多国籍企業の世界展開であろう。しかしながら、このような「グローバル化」「ボーダレス化」の潮流は、多国籍企業や国家だけでなく、地方に対しても対応を迫る現象である。地方にとっては、国境を越えた外国地方との交流という形で現れる。周知のように、東アジアでは日本、韓国、中国を中心として環日本海地域、環黄海地域で沿海地域相互の経済交流を通じて経済圏を形成しようとする構想が多くの論者によって提起されてきた。韓国から見ると、とくに環黄海地域における経済交流は構想に留まらず、着手されて久しく、具体的な事案では成果を挙げている分野も見られる。そして、今後も交流分野が広がっていき、将来的には研究開発の共同化を推進し、したがって各地方が国境を越えて技術イノベーションを相互に促進する交流に発展することも展望される。

(…後略…)

著者プロフィール

尹 明憲(ユン ミョンホン)

1954年 大阪市生まれ
1979年 大阪市立大学経済学部卒業
1987年 同大学大学院経済研究科後期博士課程単位取得退学
1991年 北九州市立大学北九州産業社会研究所講師
現在  北九州市立大学外国語学部国際関係学科教授
【主要業績】
(共著)『朝鮮における日窒コンツェルン』不二出版、1985年
(共著)『韓國資本主義性格論爭』大旺社(韓国ソウル)、1988年
(共著)『植民地期の朝鮮工業』未来社、1991年
(共著)『アジア経済の現代的構造』世界思想社、1994年
(共著)『論集 朝鮮近現代史』明石書店、1996年
(共著)『21世紀型都市における産業と社会』海鳥社、2003年

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