発行:明石書店
この版元の本一覧
A5判 228ページ 上製
定価:5,400円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2728-0 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年02月
書店発売日:2008年02月29日
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紹介
NGOは紛争地域になぜ関わり、いかにネットワークを形成し、どう活動しているのか。カンボジア紛争を具体例に、先行研究の批判的検証を行いつつ新たな理論的枠組みを提示し、さらに実用的理解に向けた現場経験者ならではの提言を行う新進気鋭の意欲的考察。
目次
まえがき
序章 紛争とNGO
0-1 問題の所在と研究の目的
0-2 事例の選定——なぜカンボジア紛争なのか
カンボジア紛争における人道支援と平和構築/カンボジア紛争の時期区分とNGOネットワークの展開
0-3 本書の構成
第1章 NGOネットワークにおける理論的な分析枠組み
1-1 先行研究の整理と新しい枠組みの必要性
NGOに関する先行研究の整理/先行研究の限界と新しい枠組みの必要性
1-2 紛争期の人道支援と紛争後の平和構築活動に関わるNGO
NGOの定義と歴史/人道支援と平和構築におけるフィールド型活動とアドボカシー型活動
1-3 NGOネットワークのメカニズム
外的環境・要因としての政治的機会と制約/NGOネットワークの内的関係と環境/NGOネットワークがもたらす直接的、間接的なインパクト
第2章 善意の虚と実——チャリティーと政治
2-1 NGOをとりまく政治的機会と制約
集団虐殺の衝撃と難民発生/紛争による現場の分断と限られたアクセス/カーター大統領の緊急アピール/ベトナム戦争の記憶とカンボジア・コミュニティー
2-2 NGOネットワークをとりまく内的関係
NCCC形成の動機/資源動員戦略
2-3 NGOネットワークのインパクト
義援金の調達による緊急援助への取り組み/国際協力による米国社会の国民統合/紛争の板ばさみにされるチャリティーの限界
2-4 まとめ
第3章 緊急援助の理念と現実——現場のパラドクス73
3-1 NGOをとりまく政治的機会と制約
オックスフォード市民の訴え/ベトナム政府のしたたかな計算/メディアと世論の力
3-2 NGOネットワークの内的関係
オックスファムNGOコンソーシアムの形成にいたる政治的機会と制約/NGOコンソーシアムの目的/オックスファムのリーダーシップとネットワークの行動規範/ネットワークの変容
3-3 NGOネットワークのインパクト
理念と原則を乗り越えた現場主義/NGOの自立性/アクターとしての自覚問題/説明責任(accountability)と透明性(transparency)
3-4 まとめ
第4章 援助の政治道具化——制裁措置に対するNGOの反対と代替97
4-1 NGOをとりまく政治的機会と制約
ポル・ポト派に対する西側の「黙認」/カンボジア国内に対する制裁措置/NGOの脆弱性
4-2 NGOネットワークの内的関係
ネットワーク形成の動機/情報共有から協同作業へ/ネットワークの資源動員と戦略/複合的なガバナンスへの参画
4-3 NGOネットワークのインパクト
カンボジア国内と西側諸国をつなぐ架け橋/空白を埋める「ストップ・ギャップ」的な役割/慈善活動と政治活動の狭間で/NGOは「カンボジア和平」の手助けになったのか?/NGOの意見衝突/英米圏が主導するNGOの業界文化
4-4 まとめ
第5章 経済の自由化と開発——ODAをめぐるNGOの監視活動123
5-1 NGOをとりまく政治的機会と制約
冷戦終焉に伴う諸国の政策転換/新しい市場開拓への意欲/「国際協力構想」の試験舞台として日本の対カンボジア外交
5-2 NGOネットワークの内的関係
反対運動の動機——開発至上主義への異論提起/NGOネットワークを経験したJVCのリーダーシップと現場主義/科学的・専門的知識と情報の活用/社会運動体、メディア、政治家の動員/政府の情報非公開主義と利益集団の対抗運動
5-3 NGOネットワークのインパクト
政府の農薬援助政策の見直し/NGOネットワークの日本国内への普及とレパートリー化/NGOの規範は政府や利益団体に浸透したのか?/政府・NGO間における政策協議の窓口へと発展
5-4 まとめ
第6章 民主化支援と選挙——現地NGOの選挙監視活動155
6-1 NGOをとりまく政治的機会と制約
「パリ和平協定」への道のり/「パリ和平協定」後/民主主義の導入の反作用/フン・セン首相の実権掌握
6-2 NGOネットワークの内的関係
現地NGOによる「自由かつ公正な選挙」の監視/選挙期間中の選挙監視活動/選挙がない時期のアドボカシー活動/国際的なネットワークとの連係プレイ
6-3 NGOネットワークのインパクト
現地NGOの量的・質的増加による民主化への貢献/国際NGOから学ぶ現地NGOとレパートリー化の増加/民主主義の落とし穴——「擬似NGO」の登場と権威主義の長期化
6-4 まとめ
終章 越境するNGOネットワークのメカニズム
7-1 外的環境・要因としての政治的機会と制約
7-2 NGOネットワークの内的関係と環境
NGOネットワークの動機/NGOネットワークの「メニュー」/資源動員のための戦略/構成員間の役割/NGOネットワークの複合性と可変性、そして発展経路の予測/
7-3 NGOネットワークがもたらす直接的・間接的なインパクト
7-4 NGO研究の現在と今後——理論と実践の相補関係にむけて
理論のための理論を越えて/冷徹かつ情熱的な実務家が増えるためには
あとがき
参考資料
索引
前書きなど
序章:0-3 本書の構成
本書の構成を簡略に示しておくことにしたい。
すでに序章では、問題の所在と研究の目的を明らかにした後、カンボジア紛争を事例研究として選んだ理由について述べてきた。
続く第1章では、NGOネットワークを理解する上で必要となる理論的な分析枠組みを提示する。最初に先行研究の批判と新しい枠組みの必要性を取り上げ、次に、本書の主な分析枠組みとなるNGOネットワークの概念定義と分類、メカニズムについて説明する。先行研究の批判に興味のない読者は、そのまま理論的な枠組みに入っていただいてもかまわない。
第2章以降においては、本書の問題意識を解明するために、NGOネットワークの具体的な事例分析を行なう。第2章の事例は、第3章以降の事例と比べて、やや異質なものである。すなわち、第2章の事例だけが、国家や企業、労働組合などが参加するマルチセクトラル・ネットワークであり、活動の現場もカンボジアをターゲットとしたものではなく、タイ・カンボジア国境地帯の難民キャンプを主たる対象としている。この事例を最初に持ってくることによって、第3章以降に扱う事例との相違点を浮き彫りにしたい。
一方、第3章では、カンボジア国内を対象として緊急援助を行なったNGOネットワークの事例をとりあげ、そのメカニズムとインパクトの解明につとめる。ここでは、NGOの救援活動と、国家や国際機関の救援活動が競合関係におかれた点に着目する。
第4章では、国際社会の制裁措置によって、カンボジアが孤立していた時期(1982-91)に活動を展開したNGOネットワークの事例を扱う。この時期には、復興支援活動においてNGOが政府や国際機関に代わって中心的な役割を果たしていた。復興支援を行なう上でNGOはネットワークを形成し、関係諸国に対して圧力を行使したり、専門的な活動を展開したりしていた。NGOとNGOが属する本国政府は、時には激しい対立関係にあった。したがって、NGOネットワークと政府との対立関係に焦点を当てつつ分析を進める。
第5章では、ODAを活用した国際協力に取り組む日本政府に対して、日本のNGOがネットワークを活用しながら、どのようにODAへの監視活動に取り組んだのかを検証する。なかでも、開発をめぐる議論において、政府が進めた経済発展型の規範とNGOが推進した環境保全型の規範の対立が見られた点に着目する。したがって、規範をめぐるアクターの葛藤に焦点を当てる。
第6章では、紛争後の平和構築活動の重要な指標である、民主化支援に関する現地(ローカル)NGOの活動を検証する。なかでも、選挙監視NGOネットワークを具体的な事例として扱う。
そして、終章では第2章から第6章で分析したNGOネットワーク活動の比較分析と整理を、第1章で提示する理論的な分析枠組みに則して行なう。この作業を通じて、各章の個別の事例ではなかなか見えてこないNGOネットワークのメカニズムとインパクトを結論部として導き出す。つまり、事例の実証分析を通じて、人道支援と平和構築プロセスにおけるNGOネットワークの理論化と一般化を試みることにしたい。加えて事例分析を通じて見えてきた課題、及び本書で十分扱いきれなかった、今後の課題と展望を提示する。
著者プロフィール
金 敬黙(キム ギョンムク)
中京大学教養部准教授。1972年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程修了。博士(学術)。秋野豊ユーラシア基金「第3回秋野豊賞」受賞。論文・著書に、「多文化・多民族共生と平和の模索」(三次亜矢子他編『平和・人権・NGO——すべての人が安心して生きるために』新評論、2004年)、「北朝鮮人道支援をめぐる日本のNGOの経験」(日本国際ボランティアセンター編『北朝鮮の人びとと人道支援——市民がつくる共生社会・平和文化』明石書店、2004年)、『国際協力NGOのフロンティア——次世代の研究と実践のために』(福武慎太郎・多田透・山田裕史との共編著、明石書店、2007年)。
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