乳幼児精神医学から子育て支援を考える乳幼児と親のメンタルヘルス
本間 博彰
発行:明石書店
この版元の本一覧
A5判 224ページ 並製
定価:2,400円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2692-4 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年12月
書店発売日:2007年12月14日
※送料は無料です
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA/Master)がご利用になれます
Tags: none

他のオンライン書店で購入※リンク先の書店では、お取り扱いしていない場合があります。あらかじめご了承ください

アマゾンboople.com紀伊國屋BookWebブックサービスビーケーワンセブンアンドワイ
e-hon楽天ブックス文教堂Jbooksライブドアブックス本やタウンYahoo!ブックス

紹介

わが国における乳幼児精神医学の先駆けである著者が、実践的な母子メンタルヘルス活動を推進するために役立つことを願って、子育て支援に関わる様々な専門職向けに、長年にわたる児童相談所等での臨床経験や研修会等で話した内容をもとにまとめた実践書。

目次

はじめに

第1部 乳幼児精神保健の臨床
 第1章 乳幼児期のメンタルヘルスの全体像
  1.乳幼児期のメンタルヘルスの展望
   事例1●不安神経症の母と子の相互関係
  2.乳幼児期のメンタルヘルスとストレス
   事例2●髪の毛が抜け落ちた幼児
  3.治療や支援に向けて
  4.治療や支援に関わる私たちの態度
  5.今後の乳幼児期のメンタルヘルスの展開
 第2章 乳幼児期の心理的発達の理解と診断
  1.子どもの心理的発達
  2.乳幼児・幼児の示す問題と症状
  3.乳幼児期の精神医学における診断
  4.問題の背景
   事例3●怒りのために髪の毛を抜く子ども
 第3章 乳幼児精神保健臨床と地域における家族支援システム
  1.地域の持つ意味と権限移譲
  2.地域社会の変化
  3.母子のメンタルヘルスに関わる社会資源
  4.地域のネットワーク
   事例4●母親の不安に取り込まれた幼児
   事例5●入院を繰り返す母親と乱暴な幼児
  5.連携やネットワークを効果的に活用するために

第2部 親の発達と親性の理解
 第4章 親になるってどういうこと?
  1.家族の危機、親の養育能力の低下
  2.家族や親とは
  3.家族と家族ライフサイクル
   事例6●統合失調症(精神分裂病)の母親の育児
  4.「親になる」プロセス
  5.親になることは難しいのか、それともやさしいのか
 第5章 乳幼児の社会性の発達と母性父性の関わり
  1.社会性(対人関係)の発達
  2.ほどほどの母親でよい
  3.子育てをめぐる母親の危機と成長
   事例7●場面によって問題行動を起こす5歳児
  4.母性と父性
 第6章 乳幼児期の虐待と母親のメンタルヘルス
  1.赤ちゃんの虐待
  2.どうして虐待が起こるのか
  3.産後うつ病の母親の支援
  4.産後うつ病と精神科治療
   事例8●転居後の妊娠出産を契機にうつ状態になった30歳の母親
   事例9●出産育児の過程で実母との激しい葛藤が再現した産後精神病の27歳の母親
  5.育児不安にからむ母親のメンタルヘルスをめぐる問題
   事例10●幼児虐待(ネグレクト)
   事例11●排尿後に強迫的に局部を拭く3歳の女児

第3部 乳幼児期の障害
 第7章 乳幼児期の障害の概略
  1.発達の最前線
  2.乳幼児の発達と障害
  3.障害に対する受け止め方
  4.障害児のメンタルヘルス
   事例12●鍵壊しで補導された精神遅滞の子ども
   事例13●死と向かい合った脳腫瘍術後の子ども
 第8章 障害乳幼児の対応と療育
  1.ノーマリゼーション
  2.療育と親
  3.療育担当者の大変さと落とし穴
  4.ダメージコントロール
   事例14●抑うつから立ち直った母と幼児の発達
  5.地域としての取り組み
  6.障害の意味
 第9章 乳幼児期の発達障害とその広がり
  1.発達障害
  2.主要な発達障害の特徴
  3.幼児期や児童期の発達障害は区別がつきにくい
  4.対応の基本
   事例15●13年間おつきあいをした発達障害の少年
  5.乳幼児期の発達障害
   事例16●反応の少ない2歳6ヶ月の男児
   事例17●多動で落ち着かない2歳11ヶ月の男児
  6.乳幼児期の発達障害と家族(母子)臨床
 第10章 障害や病気の子どもとその兄弟の問題
  1.兄弟の登場
  2.兄弟の間で育まれるもの
  3.障害児や病気の兄弟から受ける影響
  4.障害児と兄弟の間で起こる事柄
   事例18●障害児の姉の反抗的態度
   事例19●チック症を呈した自閉症児の姉
   事例20●白血病の姉とその弟
   事例21●兄の病気の後に不登校になった小学3年生の男児
  5.親と兄弟の関係
  6.障害児の兄弟間の関わりと影響
  7.今後の課題

第4部 治療と支援
 第11章 乳幼児精神保健臨床における治療のあり方——治療的アプローチと相談活動
  1.治療や支援の始まり
  2.治療や支援のあり方
   事例22●乳幼児期の入院によって母子関係が歪んでしまった事例
  3.治療および支援のアプローチ
  4.子どもに障害があることで問題が生じた母子の治療
  5.母子相互関係の問題を持った母子の治療
   事例23●指導や治療に激しく抵抗した乳幼児
 第12章 自分の健康を保つために——自分自身のメンタルヘルス
  1.はじめに
  2.ストレスとメンタルヘルス
  3.メンタルヘルスの保ち方
  4.自らができるメンタルヘルス対策

参考文献

前書きなど

はじめに

 20世紀は戦争の時代と言われ、最後の四半期においてすら、東欧の自由主義化やベルリンの壁の崩壊、そしてソ連の崩壊など、想像を絶する出来事の連続であった。20世紀後半はまさしく混沌という名に値する状況であり、世界中が同時並行的に激動と混沌の時代を経験してきた。
 激動の時代のもう一つの側面は科学が演出してきた。人間が月にも足を延ばし、すでに宇宙空間での生活が試みられている。人間の途方もない科学的想像力が現実のものとして私たちの生活に影響を与えはじめている。身近な生活面に目をやると、科学のつくり上げてきた世界が私たちの生活観を大きく変えた時代でもある。科学の進歩は世界中の人々が瞬時にコミュニケーションを交わすことができる技術を提供した。情報が飛び交い、人間の可能性の大きさをあらためて気づかせてくれるものの、世界中の悲劇や惨状がフィルターなしに伝えられ、将来の見通しの暗さや生活そのものに対する不安までもが我々を圧倒するようになってきた。人間の想像力は予想もつかないほど高いが、その一方、適応力は想像力の進歩に追いつかない。そのギャップの中で私たちは今まで以上に身体のみならず心の健康を害する危険性に晒されることになった。
 バーチャルリアリティーという現代を象徴する技術が登場して、空想的現実を実体験できるようになった。私たちがこれから経験する生活が映像化され、希望的な将来よりは閉塞的な将来が映し出されることが多い。若者のともすれば厭世的で刹那的な生き方は、時代の変化に最も敏感な若者ゆえの傷つきや希望の持てなさを物語るのかもしれない。
 こうした時代にあって、心に関わる産業に驚くほどの熱い視線が向けられてきた。健康産業のみならず、ヒーリング、瞑想、ヨーガ、さらには宗教的なワークショップなど枚挙にいとまがない。実際、心の健康を崩す人々が驚くほど増えてきたことは誰しもが認める事実であり、アルコール依存症の増加、大麻やコカインなどの薬物依存者の増加と若年化、そして先進国の中でも高い自殺率は、時代の陰の部分を照らす出来事としてマスコミを賑わしている。
 子どもたちにとっても心の健康は崩れ、いじめや暴力にまつわる事件は毎日のように新聞のどこかに掲載されている。そして、不登校の驚くほどの増加ぶりは、学校も含めて子ども社会の精神的健康の低下を象徴している。
 さて、もう少し低い年齢の子ども、つまり幼児や乳幼児に目を移したとき、私たちの社会が迎えようとしている別のもっと厳しい現実に気づかされる。なぜならば、幼い子どもたちの抱える現実は、10年後あるいは20年後の社会が直面する問題をおぼろげではあるが指し示すからである。今の乳幼児が思春期になったとき、成人して社会人となって社会を支える役割をする番が巡ってきたときの問題や課題が見え隠れするのである。
 翻って、こうした現実をしっかり見据えて、この時代の赤ちゃんや乳幼児をめぐる問題や課題を直視することによって、私たちの10年先、20年先は明るくなる可能性がある。歴史を見れば人間がどのような危機に直面するのか察しがつくし、同様にすべての年代の問題や課題を列挙してみれば、この先の年代でどんな問題や課題に遭遇するかだいたいの察しがつく。今現在の乳幼児の問題や課題をしっかり見て適切に取り組むならば、彼らが大人になったときの時代はもっと健康になるにちがいないし、彼らに担われる社会はきっと健康度の高い時代になるにちがいない。
 21世紀に船出した我々にとって乳幼児精神保健の活動は大きな意味を持つであろう。乳幼児精神保健という名称はまだなじみが薄いが、これは人づくり、健康づくりの根幹を担う取り組みである。我々の周囲に目をやると、乳幼児精神保健と言える活動が随所でなされている。母子保健、1歳6ヶ月児健康診査、3歳児健康診査、それに続く精神発達精密健康診査、早期療育、統合保育、療育センターでの母子入所、などといった取り組みは、まさしく乳幼児精神保健や乳幼児精神医学の活動そのものである。どのような理念とコンセプトで臨むか、どのような知識と技術を持ち込むかで心の健康に配慮した指導や治療が展開するのである。
 私にとって、乳幼児精神医学との出会いは、1988(昭和63)年の7月にジュネーブで開催されたISAP(国際思春期精神医学会)の折りであった。この世界で先導的な活動をしているダニエル・スタン教授とクレイマー教授から彼らの活動を見学させていただき、同時に彼らとそのスタッフから講義を受けるという機会に恵まれた。そして、当時の自分の臨床のフィールドである児童相談所に目をやると、従来からの3歳児精神発達精密健康診査に1歳6ヶ月児精神発達精密健康診査が加わった時代で、まさに保健機関や児童相談所が乳幼児精神医学のフィールドであることに気づかされた。知的発達や精神面に障害のある乳幼児や育児不安に苦しんでいる母親とその子どもが市町村の保健師たちから数多く紹介されてきていたのであった。
 さて、今日の私たちの目の前には、少子高齢化社会という、なかなか深刻な問題が横たわっている。両者が相互に影響を及ぼしながら、この問題を複雑にしている観がある。少子高齢化社会は閉塞的社会状況を生み出し、その中で一人一人には自分の人生観を確かなものに高めてゆく工夫が求められる。そんな時代にあって、若いカップルがどのような家庭づくりと育児をしてゆくのであろうか。顔を付き合わせなくてもすむような携帯電話やコンピュータなどの機械文化に囲まれ、情報の洪水にもみくちゃにされ、人間のつながりが希薄になりつつある時代においては、育児もなかなかの仕事になる。そして、こうした環境のもとで生を受けた子どもにとって、穏やかな発達の道筋を歩むことは難しくなろう。このような時代的状況を背景に母子のメンタルヘルスは危機をはらむ。育児ノイローゼ、虐待などに代表される親の危機があり、一方、子どもにおいては、心の問題が増え続け、大きな社会問題となっている。
 このような時代的な問題の対応に少しは寄与してみたいと考え、また自分の大切にしてきたフィールドでもあることから、乳幼児のメンタルヘルスに関わる人々の活動に役立てばと願い、自分なりに経験したことや学んだことをもとにして本書をつくった。この本の内容の多くは、乳幼児や幼児の臨床経験を検討したもの、あるいは研修会でお話ししたものを中心に筆を加えたものである。実践的な母子メンタルヘルス活動を推進する上でお役に立てれば幸いである。

著者プロフィール

本間 博彰(ホンマ ヒロアキ)

 1950年静岡県に生まれる。弘前大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。日本児童青年精神医学会認定医。青森県で10年間を地域の精神科病院および大学病院精神科にて臨床経験を積んだ後、1988年より宮城県中央児童相談所に移り、児童福祉と児童精神科医療に従事。2001年からは新設された宮城県子ども総合センターにおいて、乳幼児および児童精神科医療に従事。現在同センターの所長。この間、北欧の乳幼児精神保健システムを導入すべく、フィンランドおよびスウェーデンの臨床家との交流を深め、そのノウハウの一部を現センターの臨床に導入。専門は、乳幼児および児童精神医学で、特に親の精神病理とその治療に取り組み、厚生科学研究主任研究者を5年間つとめた。
 主な著書は『虐待と思春期』(編集、岩崎学術出版社、2001年)など。

※送料は無料です
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA/Master)がご利用になれます


コメントとトラックバック »

まだコメントとトラックバックはありません

TrackBack URI : http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-7503-2692-4.html/trackback/

コメントをどうぞ

▲ページの上端へ