発行:明石書店
この版元の本一覧
A5判 240ページ 並製
定価:2,600円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2629-0 C0037
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年10月
書店発売日:2007年10月03日
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紹介
海外で暮らす日本人が増えるなか、子どもが現地語と日本語のバイリンガルとしてことばを学んでいけるよう、実践と理論の両面からまとめた一冊。現地語のマスターのみならず「継承日本語教育」の立場をふまえて子どもの成長を促す、多言語教育研究の成果。
目次
日本語版(JAPANESE VERSION)
序 文(ジム・カミンズ)
この本を出版するにあたり(桶谷仁美)
実践編(鈴木美知子)
はじめに
第1章 家庭でのバイリンガル教育
第2章 ゆりかごから子ども部屋時代(0〜5歳)の家庭でのバイリンガル育て
第3章 学校友だち時代(6〜12歳)の家庭でのバイリンガル育て
第4章 中学生時代
第5章 テレビ/ビデオ・コンピュータゲームへの対応
第6章 手作りさいころとその活用
おわりに
参考文献
理論編(桶谷仁美)
第1章 バイリンガル教育とは
第2章 社会的・心理的要因と言語能力の関係
第3章 学習者の年齢別に見た言語能力の発達
おわりに
参考文献
著者・編著者紹介
ENGLISH VERSION(英語版)
PREFACE(Jim Cummins)
NOTES AND ACKNOWLEDGMENTS(Hitomi Oketani-Lobbezoo)
PRACTICE(Michiko Suzuki)
Introduction
Chapter 1. Bilingual Education at Home
Chapter 2. Raising a Bilingual Child at Home: From the Cradle to a Child's Room (0-5 Years Old)
Chapter 3. Raising a Bilingual Child at Home: The Period of School and Friends (6-12 Years Old)
Chapter 4. Middle School Days
Chapter 5. Dealing with Television, Videos and Video Games
Chapter 6. Handmade Dice and Their Practical Use
Conclusion
References
THEORY(Hitomi Oketani-Lobbezoo)
Chapter 1. What is Bilingual Education?
Chapter 2. Language Proficiency and Social and Psychological Aspects
Chapter 3. Bilingual Development by Age
Conclusion
References
Author/Editor
前書きなど
序文
20世紀後半から現在にかけて、人々の国から国への移動が大変活発になって来ました。このような人の動きは、よりよい生活や教育の機会を求めてであったり、国の人口減少に伴う外国人労働者の雇用のためであったり、国の内乱や自然災害に伴う難民の国外流出などが原因と考えられます。また、近年の交通手段の発達はこの現象を加速化していると言えるでしょう。
世界中における人々の移動の増加に伴い、親に伴われて移動する子どもたちはますます増え、家庭の中でまたは学校の初等期に、2か国語またはそれ以上の言語に接することとなります。ビジネスや留学のため、家族全員が海外に渡航する場合、子どもたちは少なからず家庭での言語以外のことばで教育を受けることになります。また、母語以外のことばを話す相手と結婚した場合、その子どもたちは家庭で2か国語(またはそれ以上のことば)を使って育つことにもなるのです。二つ以上のことばの接触は、たとえば子守りを通してであったり、両親が違ったことばを話す場合であったりと家庭で起こる場合もありますし、保育園や、幼稚園、小学校の初等期などでも起こります。
親は、このように子どもたちが2か国語を流暢に操れるようになるチャンスをふつう好ましいことだと思いますが、たいていの親は、子どもが新しいことばを習得するために、何をしてやれば一番いいかということについては気がついていないのが現状です。また、海外に出て、家庭でのことばを維持・発達させていくことがどれほど大変であるかについて、ほとんどその情報を持ち合わせていないと言えるかもしれません。桶谷仁美氏の編集するこの本は、これらの問題を解決するがごとく、親が海外で子どもをバイリンガルに育てる際に起こりうる可能性や、両言語にわたり言語面や認知面でしっかりした基礎を培うには、親はどんなことができるかというとても大切な情報が満載されています。また、保護者と教師のために、これまでの2言語発達についての研究や理論を実践的でしかも役に立つアドバイスで結びつけ、それらの両面から紹介がされています。
今や、私たちにはバイリンガルの子どもの発達についての膨大な先行研究があります。研究によると、バイリンガルの子どもの母語が、その子どもの人格形成や教育的な発達にとても大切な影響を及ぼすことは明らかです。よって、母語の発達が子どもの教育的発達の基礎を作り、子どもを取り巻く保護者や教師は、この基礎を共に強めていく努力をしていかなければならないことは必須なのです。これまでの研究でわかっていることを下記にいくつかまとめてみました。
バイリンガリズム(2言語併用)は、子どもの言語的・教育的発達によい影響を及ぼす
小学校時代に2か国語またはそれ以上の言語能力を伸ばすことにより、効果的に言語とその使い方についての深い理解を得ることができる。特に、2言語の読み書き能力を伸ばすことにより、子どもはことばをもっと流暢に操ることができ、2言語が実際に持つ事象を比較・対照させることができる。最近のいくつかの研究では、早期の2言語併用者は、脳の中の神経の発達をさらに促すことが確認できた。(Mechelli and colleagues, 2004)
子どもの母語の発達レベルは、第二言語発達のよい指針となる
母語がしっかりしている子どもが現地校に入学した場合、学校で学習することば(現地のことば)での読み書き能力もしっかり発達する。親や他の保護者(祖父母など)が、家庭で子どもといっしょに本を読んだり、話し合うことにより、子どもの母語の語彙や概念を伸ばしてやることができる場合、それらの子どもが就学期を迎えたとき、学校にて現地のことばを学習する準備が十分整っている、と同時に、よい成績が得られる。子どもの知識と能力が言語の枠を超えて、家庭で培った母語から学校で学習する現地語に移行する。この言語間の移行は、両方向で見られ、家庭や学校で母語が促進されれば(たとえばバイリンガル教育プログラムなど)現地のことばで学習している子どもたちの概念やことば、読み書き能力は、母語に移行する。つまりは、子どものおかれている教育的環境が子どもの2言語接触を促進すればするほど、両言語はそれぞれ互いに育み合うのである。
学校において少数言語を通して授業を受けても、現地校において現地のことばでの学力言語の発達には支障はない
一部の教育者や親は、バイリンガル教育や母語教育プログラムについて疑いの目で見ている場合があるが、それはそれらのプログラムが現地のことばの教育に費やす時間を奪ってしまうと心配するからである。たとえば、バイリンガル・プログラムで、授業の50%を子どもの家庭言語で行い、あとの50%を現地のことばで行った場合、本当に現地語のことばの学習は犠牲となるのであろうか。世界のあちこちの国で行われた教育的研究で、既に確実に判明していることの一つとして、しっかりしたバイリンガル・プログラムにおいては、子どもの現地語の発達に悪影響を及ぼすことなく少数言語で読み書き能力や教科の知識を促進することができることがわかっている。
子どもの母語はもろく、ややもすれば学校教育の初等期に簡単に喪失してしまう
学校教育の初等期に、子どもたちはどれだけ早く現地の会話力をピックアップするかは誰もが驚くことだろう(しかし、学力言語においては、現地の子どもたちのレベルに達するにはもっと長い時間を要するのだが)。しかしながら、どれだけ早く母語を使う能力を喪失するかは、親や教育者はほとんど気がつかないでいる。しかも、それが家庭の中であってもそうなりがちである。ことばの喪失の量や速さは、学校や周りの自分たちの言語グループと、どれ程近い存在にあるか、または遠いかによって異なるであろう。しかし、その言語のコミュニティが近くにない場合、子どもは、学校教育を始めて2〜3年の間に、母語でコミュニケーションを行う能力を失うことになる。子どもたちは、母語での受け身的な能力(理解すること)は保持しても、友だちや兄弟と話すときや親への返事などはすべて現地語で行うようになる。
このような母語の喪失を食い止めるために、親は、しっかりとした家庭でのことばのルールを定めることが大切であり、子どもにできる限り母語を使う機会(たとえば、読んだり、書いたり、ビデオを見たりなど)や場(母語での教育を行う保育園やプレイグループ、母国を訪れるなど)を与えてやる必要があります。親や教育者にとって、この本は、バイリンガリズムというものが、どのように子どもにとって幅広い可能性を創り出すことができるかを考えるのにとてもよい出発点となることでしょう。
ジム・カミンズ
2006年2月 トロントにて(編著者訳)
著者プロフィール
桶谷 仁美(オケタニ ヒトミ)
姫路ベトナム難民センター(日本)、リジャイナ大学(カナダ)、トロント大学(カナダ)、トロント国語教室(カナダ)などを経て、現在、イースタン・ミシガン大学外国語・バイリンガル教育学科教授。大阪外国語大学文学修士(日本語教育専攻)、トロント大学オンタリオ州教育研究大学院M.Ed.・Ph.D.(多言語教育・継承語教育専攻)卒業。1997年全米バイリンガル教育学会主催博士論文コンペティションにて受賞。主に日本語継承語教育、バイリンガルおよび多言語教育における社会心理的側面の研究を行う。米国ミシガン州日本語教師会理事およびカナダ日本語教育振興会副会長。Japanese Heritage Language Journal(JHL on-line Journal)、(Association for Teachers of Japanese, ATJ, USA)、『ジャーナルCAJLE日本語教育研究論集』(カナダ日本語教育振興会)の編集委員長などを務める。
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