多文化共生を超えて「多文化パワー」社会
毛受 敏浩:編著, 鈴木 江理子:編著
発行:明石書店
この版元の本一覧
A5判 228ページ 並製
定価:2,300円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2622-1 C0336
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年09月
書店発売日:2007年09月25日
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紹介

制約された環境の中で限られた能力しか発揮できない在住外国人が、彼らの能力を存分に発揮し日本社会へ活力をもたらす可能性を検証。各地域で行われている取り組みの成功例を紹介し、日本人と外国人が共に社会を活性化するための課題と道筋を本書で導き出す。

目次

はじめに
1章 多文化化する日本の現在
2章 多文化社会の課題
   ──「心の壁」を超えるために
 資料1 地域社会の国際化に関する調査
 資料2 「社会に活力を与える多文化社会構築プロジェクト」日本人住民アンケート
3章 多文化をパワーに変える草の根の取り組み
 1.過疎の農村を甦らせた外国人花嫁
 2.知り合い、認め合うことで地域をエンパワーメント
   ──大泉国際教育技術普及センターの取り組み
 3.外国にルーツを持つ子どもたち
 4.人と文化と自然が共生できるまちづくり
   ──国際理解教育の実践を通して
 5.多文化が活かされる地域社会
   ──神戸の事例から
4章 変容する社会と外国人の存在
5章 多文化パワー社会への道のり
おわりに

前書きなど

おわりに
 国際交流・協力活動入門講座の四巻目となる本書はこれまでの三巻と趣を異にする。
 これまでこの国際交流・協力活動入門講座シリーズは国際交流・協力について実務経験を有している榎田勝利氏、有田典代氏と毛受敏浩の3名が企画し、それぞれが一巻ずつを受け持つことで国際交流・協力活動を多面的にとらえ、その内容を深めることを目的としていた。初巻では草の根の国際交流・協力活動の全体像、二巻目は組織運営とネットワーク、三巻目は活動の担い手に焦点が当てられ、三巻をめどにシリーズが完結することを想定していた。
 「国際交流・協力活動」ということばをこの入門講座のタイトルに使ったのは、草の根レベル、地域レベルでは、国際交流と国際協力とが明確に分かれていない活動が多いことによる。そのことはプリミティブなレベルの活動が多いととらえるべきではない。むしろ、地域で行われる活動として一般市民に対するアクセスの容易さ、柔軟性を示している。
 また国際交流・協力活動とあるように国際交流を先にしたのは、地域レベルの国際活動はそもそも国際交流からスタートした歴史があること、国際協力についての書籍は数限りなくあるが、国際交流については極めて限定された出版物しか発行されておらず、国際協力を全面に出してそのギャップを埋めたいとの気持ちがあったからである。
 さて本書ではこれまでの三巻の枠を超えたこのシリーズの新たなスタートとなるものである。本書はいわゆる多文化社会をテーマとし、在住外国人の問題のエキスパートである鈴木江理子氏とこれまで三巻を手がけた毛受敏浩との共編著となっている。これまで、多文化共生に関する書籍は、明石書店をはじめすでに多数の書物が出版され、多くの論点がすでに議論され実践活動も行われている。
 しかし、あえて「国際交流・協力活動入門講座」シリーズの中での出版を考えたのは、従来の多文化共生関連の書籍と異なるアプローチ、国際交流から見た視点を取り入れたからである。そもそも国際交流では外国人や異文化との交流は個人や地域社会を豊かにするものとの考えが前提にあるが、その考えに立てば、日本に住む外国人もわれわれの社会のための貴重なリソースとしてとらえることができる。
 本書の基本的なコンセプトとして、在住外国人に対して問題を抱えた人々ととらえる見方を前提としていない。むしろ、日本人とは違う文化的特質や独自のネットワークを持った新しいリソースとしてとらえ、彼らの潜在力をいかにわれわれの社会に役立てられるかに重点を置いている。彼らの内在する力を発揮する機会を作り出すことが、彼らと日本人双方をエンパワーする上で重要であり、また両者の関係自体をより建設的で協調的なものへと高めていくだろう。その意味で、本書は国際交流の視点から見た多文化共生論とも言えるものである。
 現実には、日本に住む外国人は日本社会のひずみに直面し、彼らの持つ潜在力を十分に発揮できる機会が与えられていないことも事実である。本書においてもその事実を直視している。しかし、それは不可避な事態ではなく、新しいアプローチをとることで新たな展望が開けることは、本書でとりあげられたさまざまな事例が証明している。そしてそれを可能にする主役は、本書の共著者のような地域社会で活躍する実践者たちである。彼らの生の声に真摯に耳を傾けることこそが、豊かな多文化社会を築く最も重要なことであると確信している。

毛受敏浩

著者プロフィール

毛受 敏浩(メンジュ トシヒロ)

(財)日本国際交流センター、チーフ・プログラムオフィサー
兵庫県庁に勤務後、1988年より日本国際交流センターで自治体の国際化戦略、NGOや市民社会のグローバルな連携についてコーディネーション及び調査研究を担当。静岡文化芸術大学非常勤講師。著書に『地球市民ネットワーク——「国」を超えた人のつながり』(アルク、1997)、『異文化体験入門』(明石書店、2003)、共編著書に『自治体変革の現実と政策』(中央法規出版、2002)『Japan’s road to Pluralism: Transforming Local Communities in the Global Era』(Japan Center for International Exchange、2003)、共著に『日本のNPO2000』(日本評論社、1999)、『アジア太平洋のNGO』(アルク、1998)等。草の根技術協力事業外部有識者(JICA)、地球市民賞選考委員(国際交流基金)。第一回及び第三回国際交流・協力実践者全国会議実行委員長。慶應義塾大学法学部卒。米国ワシントン州立エバグリーン大学行政管理大学院修士。1954年生まれ。

鈴木 江理子(スズキ エリコ)

立教大学兼任講師
お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修了、第一生命ライフデザイン研究所、フジタ未来経営研究所、現代文化研究所等を経て現職。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程に在籍。NPO法人多文化共生センター理事、Asian People’s Friendship Society(A. P. F. S. )顧問などを兼任。日本の外国人政策や国際人口移動、地域社会の多文化化などについて研究するかたわら、外国人支援の現場でも活動している。主要著書は「『機会の平等』を超えて〜『違い』を『プラス』とする教育へ」アジア・太平洋人権情報センター『多文化共生の教育とまちづくり』(解放出版社、2005)、『日本の移民政策を考える——人口減少社会の課題』(共著、明石書店、2005)、「外国人労働者受入れ政策——日本の経験」河野稠果・吉田良生編著『国際人口移動の新時代』(原書房、2006)、『在留特別許可と日本の移民政策——「移民選別」時代の到来』(共編著、明石書店、2007)。

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