「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟第一審裁判記録強制で、歌声はあがらない
「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会:編
発行:明石書店
この版元の本一覧
四六判 560ページ 並製
定価:2,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2603-0 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年08月
書店発売日:2007年08月13日
※送料は無料です
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA/Master)がご利用になれます
Tags: none

他のオンライン書店で購入※リンク先の書店では、お取り扱いしていない場合があります。あらかじめご了承ください

アマゾンboople.com紀伊國屋BookWebブックサービスビーケーワンセブンアンドワイ
e-hon楽天ブックス文教堂Jbooksライブドアブックス本やタウンYahoo!ブックス

紹介

「都教委の一連の指導は憲法の保障する思想・良心の自由に反する」…処分を脅しに立て!歌え!…そこに自由な精神の育みはあろうか…都立校教職員401人の異議申し立ては06年東京地裁での歴史的判決に至る。原告・保護者・弁護団らの証言と記録。

目次

序によせて──東京地裁難波判決の意義(堀尾輝久)
1 予防訴訟とは何か
 1 ちょっと勇気が要るけれど──予防訴訟は連帯の輪を広げるたたかい(白井 劍)
 2 10・23から9・21まで──予防訴訟第一審判決までの歩み(宮村 博)
2 判決を受けて──その意義と課題
 1 予防訴訟と難波判決の意義——思想・良心・信教の自由を大切にする国へ(尾山 宏)
 2 東京地裁判決、完全勝訴!! でも……(小笠原至玄)
 3 音楽が教えてくれたこと(池田幹子)
 4 守る闘いから創る闘いへ──障がい児教育の現場から(金子光史)
 5 「心」を育てる学校であるために(岡田 明)
 6 難波判決を受けた保護者としてのとりくみ(林 明雄)
 7 肢体不自由児養護学校から(土方徳子)
 8 おかしいことをおかしいと言える国でありつづけるために(朴 信江)
 9 我が子の、生徒の「思想・良心の自由」を守りたい(森田麻里子)
3 裁判記録
  第3部 解題(原田 收)
 証言
  1 生徒の自主性を奪う10・23通達(河合美喜夫)
  2 教師の言動はすべてが教育活動(齋藤浩史)
  3 校長に加えられた圧力(木村二郎)
  4 強制で、歌声はあがらない(竹内 修)
  5 学校は考えることを教える場(高峯昭子)
  6 朝鮮名を名乗る教師として(金 信明)
  7 国語の授業で「君が代」を詠んで(加山みどり)
  8 自然科学を教えるキリスト者として(木村葉子)
 意見書・準備書面
  意見書1 「国旗・国歌」と思想・良心の自由に関して(土屋英雄)
  意見書2 教育基本法制定の意義とその普遍的性格(古野博明)
  原告側最終準備書面(原告弁護団)
4 判決
5 資料
 10・23通達/日の丸・君が代予防訴訟第一審原告ら訴訟代理人名簿/「予防訴訟」東京地裁判決に関する各紙社説/「予防訴訟」関連年表
あとがき(片山むぎほ)

前書きなど

序によせて──東京地裁難波判決の意義
 二〇〇三年一〇月二三日、東京都教育委員会は、直轄の都立学校(高校と障害児・養護学校)に「入学式卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」という通達(いわゆる10・23通達)を出した。それは式場正面壇上に「日の丸」を掲げ壇上で卒業証書授与を行うこと、教職員は指定の座席で、国旗に正対して起立し、国歌を斉唱すること、さらに音楽教員はピアノ伴奏をすること、従わないものは処分することを内容とする職務命令を、校長が各教職員に出すことを求めるというものであった。
 すでに国旗国歌法の成立(九九年)以降、東京では「心の東京革命」をすすめる石原都政のもとで、都立学校の管理運営規則の「改正」によって上意下達の教育管理方式が押しつけられてきた。10・23通達は国旗・国歌をてこに、その管理方式の徹底のため、処分を振りかざしての踏み絵であり、それが、教師と生徒の内心の自由と、学習と教育の自主性、自律性を侵すことは明白であった。このまま通達にそって事態が進行し、君が代を拒めば処分は必至であろう。しかしこの通達と職務命令に従うことはできないと感じた教師たちは、東京都と教育委員会を被告とし、「国歌斉唱等の義務不存在の確認」を求める訴訟を東京地方裁判所に提訴した。この、処分を予想し、それを防ぐための予防的訴訟(予防的不作為請求)は訴訟形式としても新しいものであり、それが受理されるかどうかにも関心がもたれた。
 当初、原告は二二八名、やがて四〇〇名を超える原告団となり、弁護団も尾山宏を中心に若手弁護士も参加する強力なもので、研究者たちも研究会等に積極的に参加して、原告団を支援した。
 二〇〇六年九月二一日、その判決が下された。
 「本件通達及びこれに関する被告都教委の一連の指導等は、教育基本法10条に反し、憲法19条の思想・良心の自由に対し、公共の福祉の観点から許容された制約の範囲を超えているというべきであって、これにより、原告ら教職員が、都立学校の入学式・卒業式の式典において、国歌斉唱の際に、国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する義務、ピアノ伴奏をする義務を負うものと解することはできない」
 原告の全面勝訴であった。
 通達が、憲法19条に違反し、教育基本法10条に違反するとするこの判決文の中には、「教師に対する強制は生徒に対する強制に通じている」として、通達が生徒の「思想・良心の自由」をも犯すことになるとする一文のあることも、見逃されてはなるまい。原告団の多くは、自分の思想・良心の自由の侵害は、人間としての権利の侵害にとどまらず、教師の自由を制約することが、生徒の精神の自由を枠づけることに対する危惧をもつが故に、原告団に加わることを決意した教師も多いのであり、それだけにこの短い一文のもつ重みも大きいといわねばならない。
 判決の論旨は、憲法と教育基本法に基づいて明快であり、常識の勝利ともいうべきものであった。それを「画期的」と評さざるを得ない状況が進行する中で、この判決の意義は大きい。また、予防訴訟を「合理あるもの」として受理した理由には、丁寧な説明が加えられており、この点は、まさしく、裁判史上画期的なものだといってよい。
 この訴訟を勝利に導いたものは、弁護団の周到な準備書面と、研究者の専門的な意見書や証言であろうが、それにも増して決定的なことは、原告一人ひとりの訴状と法廷での証言であろう。その証言は多様、多彩であるが、それらを貫ぬくものは、人間教師としての思想信条の自由は犯されてはならず、教えと学びにとって、自由な精神活動と信頼関係が不可欠であること、「通達」と職務命令はその自由を犯すものであり、人間として、教師として、受け入れることはできないという強い思いであり、不利益覚悟の苦渋の決断であったことが伝わってくる。そして、その内奥からの声が裁判官の心を動かしたのだと思う。

 東京都は、しかし、これを不服として控訴し、校長に対しては、通達の内容を変更せず、今後とも実行することを求める指示を出した。
 判決は、明解であり、憲法・教基法に基づく常識的な論理の展開であっただけに、高裁でこれをくつがえすことは困難な筈である。
 判決の後、昨年一二月二二日、教育基本法は全面改正され、即日施行となった。判決が依拠した教育基本法10条は、新16条で、素朴法律主義=政治主義を徹底させ教育の自主性を解体させる方向で、根底から変えられた。その方向からすれば、「通達」行政も、新16条に沿うものとして合法化しようとするだろう。しかし、改正法16条には「教育は不当な支配に服することなく」という文言は残っており、学テ最高裁判決に照らしても、また国会での政府答弁からも、政治主義的通達行政が「不当な支配」に当たる(少なくとも場合がある)といわなければならない。また、同条の言う「この法律及び他の法律」は前提として憲法と国際条約(人権規約、子どもの権利条約等)が上位法として存在することも自明であり、「他の法律」のなかには慣習法や条理法も含まれることは、法の常識であろう。改正法前文には「憲法の精神にのっとり」という文言もあることも想起しよう。であれば、本件に則しても、必要に応じて改正教基法の合憲的解釈を徹底的に追及することも私たちの課題だと言わねばならない(なお、堀尾「憲法と新旧教育基本法──新法の合憲的解釈は可能か」『教育』二〇〇七年五月号参照)。
 しかも本件は法改正以前の事件であり、憲法と四七年教育基本法にもとづいて判断さるべきことは言うまでもない。被告(都)が新法をもちだして抗弁することは本来、許されない。とすれば被告は四七年法10条の解釈を示して抗弁する以外にはない。しかし、地裁ではそれに成功できなかったのであり、法の改正は逆に旧法にもとづく抗弁をいっそう困難なものにするであろう。法廷では、教育基本法10条の改正のねらいがどこにあるかということも、そしてそれが憲法違反の「改正」であることも、被告側の陳述を通しても浮き彫りにされてこよう。控訴審では、憲法の保障する精神の自由──そこには当然、子どもの精神発達の自由、学びの権利が含まれている──、そしてそれと不可分な教育の自由、さらにその自由に内実を与える教育の条理が、国際的条理の展開と重ねて、いっそう明確に展開されていくことを期待している。
 そのためにも、本書におさめられた証言、意見書のもつ意義は大きい。私自身の法廷への意見書及び証言も、そこに重点をおくものであったことも付記しておきたい(堀尾『教育に強制はなじまない』大月書店、二〇〇六年)。

堀尾輝久(東京大学名誉教授)

※送料は無料です
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA/Master)がご利用になれます


コメントとトラックバック »

まだコメントとトラックバックはありません

TrackBack URI : http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-7503-2603-0.html/trackback/

コメントをどうぞ

▲ページの上端へ