生物が一日一種消えてゆく
小原 秀雄
発行:明石書店
この版元の本一覧
四六判 448ページ 上製
定価:5,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2583-5
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年07月
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紹介

毎日,地球上のどこかで,動物や植物の個体群が永遠に再生することのない状態—絶滅に追い込まれていく。この「人間にとっての」重大問題について,環境科学的な視点で考える表題作に加え,動物界と人間の位置を生態的に見る「動物たちの社会を読む」も収録。

前書きなど

小原秀雄著作集 第3巻 あとがき
 動物の世界が人間の世界とつながりのあることは、一般に漠然とは知られている。霊長類でなくても動物の世界の構造から人間の世界とのつながりが導きだされるのは、進化の事実からである。そして霊長類の一群から人間は出現した。どのような時間的な歴史かは、今後のいっそうの研究で明らかになるであろうが、大型類人猿との共通の祖先から枝分かれしたのである。その過程で受けついできたのは、種の世界として人間に特有化した世界である。ある場合には、大きく変化発展しても萌しが推測でき、別には痕跡的に残ったものである。私の求めて来た進化の跡は、現在の哺乳類を中心とする動物の世界をあれやこれやと観察し考察を加えているうちに見えて来た、自らが意識的に持続している人間の世界への視点と重なりあったのである。一方では人間の世界の目がくらむような発展(発展というか否かもあるが)の中に、そのすじ途を見究める思考として生じてきた。
 別の機会にその辿った自己の研究の実践的な歴史を綴ろうと思うが、私の人生には時の社会の動きと他人との偶然的な出会いとが、思考の歩みと営みとは異なって生じてきた。その一つは動物の世界が人間の現実世界の中で、どのようになっているかである。これは、人間世界(社会)の発展といわれる変化の中で圧倒的な速さで生まれた現実である。自分自身が動物の世界を見る途上で、一九六五年に発表した著作「変わりゆく動物界」として描き出した動物の世界の動向は、一九六六年の国際自然保護連合(IUCN)が発表したルーズリーフ形式のレッドデータ・ブックが危機を記録しはじめた動向より一年早い。動物の変化の関心は、こうした国際的動向にともなって、私をまきこんでいく。持ち前の正義感だけが、それを支えた。当時は日本では誰も動物学者として正面から国際的な保全運動に参加していなかったのである。国内ではなん人かの人々がWWFなど保護運動に関わってはいた。しかし、国際的動向の中では捕鯨問題で今も続いているように多くは「愛国的」であって、私のように地球的国際的な(それ故一時は外国の手先と思われた)感覚で、日本の動物利用を位置づけようとはしなかった。しぜんの成行きとはいえ、自然における人間の位置の現代的な問いが、この二著に共通する問題意識となって横たわっている。動物の種社会への追究は、既に一九六一年の三一書房『動物社会記』に発しているが、この「動物たちの社会を読む」では人間の世界への明確な問いで動物界と人間の位置を生態的に見ている。そして社会内に生起している動物界の現実を「生物が一日一種消えてゆく」で表出した。この二作は私の思索の広がりのエポックでもある。七〇年代に参加した国際野生動物保全ひいては自然保護運動の意義を、また徐々に培われていった人間学としての動物学、つまり人間社会における意義の成果とである。

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