発行:明石書店
この版元の本一覧
四六判 280ページ 上製
定価:2,300円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2545-3 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年04月
書店発売日:2007年05月08日
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紹介
憲法の危機は日本の危機だ。戦後も長く米軍支配下に苦しんだ沖縄は憲法を武器に平和と自治を追求する闘いをいまも続けている。普天間飛行場の移設を口実に沖縄県内に世界最大の攻撃基地設置を阻止する闘いを田中正造・阿波根昌鴻らに学び,実践する道を探る。
目次
はじめに
序章 憲法に学ぶ平和と自治
1 沖縄の心
1 沖縄の歴史は訴える——96平和憲法・平和行政と文化行政
2 沖縄の現状と将来展望——99沖縄と広島をむすぶつどい
2 文化村づくり
1 基地のなかに、文化村づくりの闘い——沖縄・読谷村の自治の闘い
2 米軍と闘う村
3 基地の村に人間の尊厳を打ち立てる——甦る読谷山花織
4 平和のための地方自治—沖米相克の歴史
3 民衆の力を集めて基地建設を許すな
1 沖縄よ、騙されつづけるな!
2 拝啓、稲嶺県知事——沖縄民衆の訴え
3 今闘わずしていつ闘うのか——米軍基地建設を断固拒否する
4 ふるさとから地球へ
1 地球に未来を、子どもたちに夢と希望を
2 全国民に訴える——国民の血税を巨大な米軍基地建設に使わせてよいのか
3 アメリカの戦争に反対し、天国で闘いつづける阿波根昌鴻
前書きなど
はじめに
この本を出版された方々、書店で手にされ読まれた読者の皆さんにまず最初に感謝を申し上げたい。
さて、この地球上には幾百万、幾千万という生き物が住んでいる。人間もその一つである。人間は考える葦であるとか、万物の霊長である、とか言われてきた。
ところが、いったん戦争になってしまえば、人間は、過去の戦争体験や歴史が教えるごとく、人間のもつ知性も、理性も良心もかなぐりすて、地球上のどの動物よりも獰猛な野獣と化する。日本は戦争国家になってはいけない。
本の表題を『憲法を実践する村』とした。それにはわけがある。
多くの日本国民にとって、憲法は単なる机上の法典であったり、日常生活とあまり関係ない、と思っている人がいる。ようするに、日頃憲法は空気(酸素)や蛇口から出る水と同じように、あまりありがたさや、価値や、その奥の力の凄まじさに気づかない人が多い。
憲法は、権力の前に立ちはだかる国民大衆の砦なのである。
日本の国民にとっては優しく、おおらかで抱擁力の大きな母なのである。同時に憲法は、国民の味方としての力強さ、偉大さ、鋭さ、凄さをかねそなえている。
憲法は日本国民にとって、正義の味方であり、平和の味方であり、百万の味方なのだ。
この本は憲法を盾にして、二十余年にわたって、読谷村村長として、米軍(米国)や日本政府を相手に、村民と共に闘い続けてきたドキュメントである。内容は、村長時代(一九七四年—一九九八年)から今日までの講演や機関誌、雑誌等に掲載されたものを中心にまとめたものである。したがって内容が重複する箇所もあり、あらかじめご了承をお願いしたい。
主な内容として平和憲法を盾にし、二十一世紀に向けた読谷村の村(街)づくりの壮大な闘いであり、それを記録したものである。それに最近の普天間飛行場の名護市辺野古への移転問題や、憲法第九条をめぐる日本の政治状況への、本音の闘いを提起したものである。
二十一世紀の日本が平和国家、平和国民として、アジア諸国から信頼され尊敬される道は、沖縄に新しい米軍基地を作らさないことに成功した時である。それ故に、基地の県内移設(辺野古へのV字形案)の問題は全国民の問題である。
日本の学校現場は深刻である。学級崩壊、学校崩壊、凶悪事件の続発等。子どもたちも教師も、父母たちも自信を喪失してしまった。そういう時に、誰の力、何の力を借りて、教育(現場)の再生をはかればいいのだろうか。その対応の一試案として「ふるさと教育」を提起した。
基地を乗り越える文化の構造論や、沖縄の歴史からくる平和論、甦る読谷山花織等、どこから読んでも、生きた自治体の息吹が感じられると思う。
読谷村の反基地村づくり闘争において、憲法は、単なる机上の法典ではなく、魂のこもった新鮮な生命力のある法典であった。要は、憲法を生かすも殺すも人間であり、自治体である。
読谷村民の憲法に依拠した闘いの成果は、一般常識や既成概念をはるかに越えるもので非常識を常識と化し、不可能を可能としたものであった。
大事なことは、政府関係者はもちろんであるが、地方自治体の首長や職員、議会関係者が、政治的問題や行政的問題で、重要な判断を要する時、たえず主権者住民の立場に立ち、憲法的感覚を発揮し、事に当たった時、自治体の存在価値は高く評価されるものである。
ここに反基地村づくり闘争を通して学んだいくつかの教訓をまとめてみる。
1 自治体(地域)の主人公は自治体の住民である。
2 国と地方は対等である(主従関係にあらず)。
3 交渉のときは相手を上まわる理論武装をすること。
4 闘う目的と夢を行政と住民が共有すること。
5 行政も議会も、村民も一体になった地域ぐるみで闘いを展開すること。
6 闘う者としての主体性と想像性、実践力を確立すること。
7 文化外交、自治体外交を展開すること。
8 笑いも、文化も、知恵も、すべてを武器として、権力を呑み込む闘いであること。
9 戦いは戦わずして勝つこと。
10 首長や民衆は喰われることなかれ。
ここに鳳の図がある。これは読谷村都市基本計画に位置づけられたものである。このことについて少し触れておこう。
当時(一九九〇年代前半)役場内に二つの動きがあった。都市計画担当職員たちは、各集落を調査した結果、昔の集落形成には一定のストーリー(秩序、筋書き、構想)があることに気づき、その背後にあるのが「風水の思想」であることを突き止めたのである。読谷村の自然環境、地形、地勢を図化してみると「大鳥」が、まさに飛び立たんとする雄飛の姿に職員たちは興奮を覚えた。
一方、村長は、基地の中に建てる役場庁舎と文化センターの位置をめぐる政府交渉で難航、暗礁に乗り上げ、憲法の主権在民論だけでは、どうにも身動きがとれず、絶体絶命のピンチに追い込まれ、テーブルをはさんで睨み合いを続けていた。
その時、深層意識の底から一瞬、閃いたのが、風水の思想であった。これがとどめの武器となった。
私は「読谷村は風水の思想に基づいて、この位置を決定したのです」、と言った。政府の官僚といえども、アジアの伝統的な思想、学問である「風水」の前に頭をたれる以外になかった。
都市計画担当職員も、村長も偶然にも、掘り当てた泉は、同じ「風水」であった。
職員たちは、調査結果をもとに、読谷村の将来像を描いた。それに確信を持つため、韓国の専門家を訪ねた。見立は適中した。こうして都市基本計画の中に「鳳計画」として位置づけられたものである。
二〇〇一年六月
新版刊行にあたって
この本の初版を刊行してからすでに五年半の歳月が流れた。いま、日本の誇りともいうべき平和憲法は「改悪」の危機に直面している。憲法の危機は、日本の危機ではないだろうか。さらに沖縄では、普天間飛行場返還の美名のもとに、最新の機能を備えた新たな基地(世界最大の攻撃基地)の県内建設(辺野古へのV字形案)が進められようとしている。そのことに最大の危機感を覚え、阻止したいと考えている。
そこで、現在進行している事態にそなえ、旧版のいくつかの章を差し替え、新版を刊行することにした。それはとりもなおさず、明治政府が進めた民衆切り捨ての政治に立ち向かった田中正造の思想と行動を新たに学び、実践したいという私の願いを多くの人びとに伝えたいと考えたからである。
二〇〇七年三月
山内 徳信
著者プロフィール
山内 徳信(ヤマウチ トクシン)
1935年 沖縄県読谷村字宇座に生まれる
1945年 沖縄戦を体験する
1951年 読谷高校へ入学「新憲法」の制定を知る
1953年 村社講平氏と出会う「力必達」
1954年 沖縄県立読谷高等学校卒業
1958年 琉球大学文理学部(史学科)卒業
1958年 沖縄県立読谷高等学校赴任
1965年 研究員として静岡県(島田高校)へ派遣
1966年 沖縄県立中部農林高等学校へ転勤
1973年 沖縄県立読谷高等学校へ転勤
1974年 沖縄県読谷村長初当選、自治体行政へ転換、6期23年半
1998年 1月27日、村長退任
1998年 1月28日、沖縄県出納長就任
1998年 12月9日、県出納長退任
1999年 4月10日、山内平和憲法・地方自治問題研究所長
2000年 5月、基地の県内移設に反対する県民会議共同代表
2002年 わびあいの里(命どぅ宝の家・創設者阿波根昌鴻氏)二代目理事長
【主な著作】
1997年 『沖縄・読谷村の挑戦』(共著・岩波ブックレットNO.438)
1998年 『叫び訴え続ける基地沖縄』(那覇出版社)
2001年 『憲法を実践する村』(明石書店)
2006年 『米軍再編と沖縄の基地』(創史社)
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